○地方公営企業法の一部を改正する法律等の施行について
昭和四一年七月五日
自治企第一〇五号
各都道府県知事、六大市長あて
自治事務次官通知
本日地方公営企業法の一部を改正する法律(昭和四十一年法律第百二十号。以下「改正法」という。別紙第一)ならびにこれに伴なう地方公営企業法施行令の一部を改正する政令(昭和四十一年政令第二百三十九号。以下「改正令」という。別紙第二)および地方公営企業法施行規則の一部を改正する省令(昭和四十一年自治省令第十四号。以下「改正規則」という。別紙第三)が公布された。これらの改正の要旨および運営上留意すべき事項は、下記のとおりであるので充分ご了知のうえ、その施行に遺憾のないよう措置されたい。
なお、改正の趣旨が管下市町村に対しても十分徹底するよう、よろしくご指導をお願いする。
おつて、昭和二十七年九月二十九日づけ自乙発第二四五号自治庁次長通達「地方公営企業法及び同法施行に関する命令の実施についての依命通達」の一部を別紙第四により改正するから、その運営について充分留意されたい。
記
第一 全般的事項
1 今回の改正は、地方公営企業の経営の現況にかんがみ、その健全化を推進するため、昨年十月十二日に行なわれた地方公営企業制度調査会の答申(地方公営企業の改善に関する答申)の趣旨に基づいて行なわれたものであること。
2 改正の骨子は、地方公営企業の本来の目的である公共の福祉の増進をはかりつつ、企業としての合理的、能率的経営を確保できるよう企業会計と一般会計等との間における経費の負担区分の原則を確立するとともに、管理者制度、財務、職員の身分取扱い一部事務組合制度等について所要の改正を加え、あわせて既に生じた赤字を計画的に解消するための財政再建方策を講じたものであること。
3 地方公営企業の経営悪化の一要因として企業をとりまく環境の変化等企業外の要因があることは事実であるが、それに藉口して経営の合理化がなおざりにされることがないよう、この際、企業の内容に再検討を加え、能率的な経営に徹底されたいこと。なお、特に赤字の累積している企業にあつては、この際財政再建に踏み切ることが必要であること。
第二 総則に関する事項
1 地方公営企業法の適用を受ける企業の範囲に関する事項
(1) 水道事業(簡易水道事業を除く。)、工業用水道事業、軌道事業、自動車運送事業、地方鉄道事業、電気事業およびガス事業については、その常時雇用される職員数の多少にかかわらず、すべて地方公営企業法の全部を適用するものとしたこと(改正法による改正後の地方公営企業法(以下「法」という。)第二条第一項)。
(2) 病院事業については、その常時雇用される職員数の多少にかかわらず、すべて財務に関する規定等(法第三条から第六条まで、第十七条から第三十五条まで、第四十条から第四十一条までおよび附則第二項から第四項までの規定をいう。以下「財務規定等」という。)を適用するものとしたこと(法第二条第二項)。
なお、病院事業については、条例(一部事務組合にあつては、規約。以下(5)において同じ。)で定めるところにより財務規定等を除く法の規定を適用することができるものであること(法第二条第三項および改正令による改正後の地方公営企業法施行令(以下「令」という。)第一条第一項)。
(3) 一部事務組合が経営する地方公営企業以外の企業に法を適用する場合には、その旨を当該一部事務組合の規約で定めなければならないものとしたこと(法第二条第三項)。
(4) 地方公共団体が経営する企業について地方公営企業法を適用する方式としては、従来、同法の規定の全部を適用する方式、財務規定等を適用する方式および財務規定等の一部を適用する方式の三種類があつたが、改正後は、経費負担の原則を定め、企業会計で負担すべきでない経費または企業会計で負担することが困難な経費については一般会計等が負担し、反面それ以外の経費については、企業会計で負担することとしたため、従来の財務規定等の一部を適用する方式は存置する必要がなくなつたのでこれを廃止し、同法の規定の全部を適用する方式および財務規定等を適用する方式の二種類としていること(法第二条第三項、令第一条)。
(5) 従来、簡易水道事業等政令で定める事業で常時雇用される職員の数が百人以上のものには、財務規定等の一部が法律上当然に適用されていたが、改正後は、これらの事業(病院事業を除く。)に法を適用するかどうかは、当該事業を経営する地方公共団体の条例によつて定めることとされたものであること(法第二条第三項)。なお、改正法施行の際、財務規定等の一部が当然に適用されている事業(病院事業を除く。)については、引き続き財務規定等を当然に適用することとしていること。ただし、条例で定めるところにより財務規定等を適用しないこともできること(改正法附則第三条第二項)。
(6) 法の規定を適用し、または適用しなくなつた場合における経過措置として、次のように規定したこと。
ア 法の適用の日の前日の属する会計年度の歳出予算の経費の金額のうち、繰越明許費(建設改良事業に係るものに限る。)および事故繰越しをすることとしたものについては法の適用の日の属する事業年度において使用することができるものとしたこと(令第四条第五項)。
イ 法の適用の日前にその取得または処分について議会の議決を経ている資産で、法の適用の日の前日までに取得または処分が終わらなかつたものについては、法の適用の日の属する事業年度に限り、予算で定めることなく、当該議決に基づいて当該資産の取得または処分をすることができるものとしたこと(令第四条第六項)。
ウ 法の適用の日前の事実に基づく職員の賠償責任については、従前の例によるものとしたこと(令第四条第七項)。
エ 法の適用がないこととなる日の前日の属する事業年度の支出予算の金額のうち、建設改良費および事故繰越しをすることとしたものについては、法の適用がないこととなる日の属する会計年度において使用することができるものとしたこと(令第六条第三項)。
オ 法の適用がないこととなる日の前日の属する事業年度の予算においてその取得または処分について定めている資産で同日までに取得または処分が終わらなかつたものについては、法の適用がないこととなる日の属する会計年度に限り当該予算の定めに基づいて、当該資産の取得または処分をすることができるものとしたこと(令第六条第四項)。
カ 法の適用がないこととなる日前の事実に基づく職員の賠償責任については、従前の例によるものとしたこと。この場合において、管理者の権限は、当該地方公共団体の長が行なうものとしたこと(令第六条第五項)。
2 地方公営企業の設置等に関する事項
(1) 地方公共団体は、地方公営企業を経営するという団体意思を確定するため、地方公営企業設置条例を設け、地方公営企業の設置および経営の基本に関する事項を定めなければならないものとしたこと(法第四条)。これに伴い、従来の基本計画の制度は廃止したこと。なお、公の施設としての性格を有する地方公営企業については、法第四条の規定に基づく条例が設けられるので、地方自治法第二百四十四条の二第一項の規定に基づく条例を設ける必要はないものであること。
(2) 公共の福祉の増進を本来の目的とする地方公営企業の性格にかんがみ、国の行政機関の長は、地方公営企業の業務に関する許認可事務、その他の事務の執行にあたつては迅速かつ地方公営企業の健全な運営が図られるように配慮するものとしたこと(法第五条の二)。
第三 組織に関する事項
1 地方公営企業の合理的、能率的運営を図るため、専任の管理者を置き、企業の経営に専念させることとしたものであること。ただし、次に掲げる事業以外の事業にあつては、条例で定めるところにより、管理者を置かないことができるものであること(法第七条、令第八条の二)。
(1) 水道事業(簡易水道事業を除く。以下同じ。)で、常時雇用される職員の数が二百人以上であり、かつ、給水戸数が五万戸(水道用水供給事業にあつては、給水能力が一日二十万立方メートル)以上であるもの。
(2) 工業用水道事業で、常時雇用される職員の数が百人以上であり、かつ、給水能力が一日五十万立方メートル以上であるもの。
(3) 軌道事業、自動車運送事業または地方鉄道事業で、これらの事業を通じて、常時雇用される職員の数が二百人以上であり、かつ、事業の用に供する車両の数が百五十両以上であるもの。
(4) 電気事業で、常時雇用される職員の数が百人以上であり、かつ、発電所の最大出力の合計が五万キロワット以上であるもの。
(5) ガス事業で、常時雇用される職員の数が百人以上であり、かつ、供給戸数が二万戸以上であるもの。
2 専任の管理者を置かないことができない企業の範囲については、次の点に留意する必要があること。
(1) いずれも職員数および施設の規模の両方の要件を定めており、この一方の要件を欠くときは、管理者を置かないことができない企業にはならないものであること。
(2) 水道事業の「給水戸数」は、現に水を供給している戸数によるものであり、水道用水供給事業および工業用水道事業の「給水能力」は現に稼動中または稼動しうる状態にある水道施設の能力によるものであつて、計画中のものあるいは建設途上にあるものは含まないものであること。
(3) 一の地方公共団体が二以上の種類の交通事業を経営する場合には、職員数および車両数をそれぞれ合算するものであること。「事業の用に供する車両の数」は、いわゆる在籍車両数によるものであること。
(4) ガス事業の「供給戸数」は現にガスを供給している戸数によるものであること。
3 管理者の選任については、必ずしも当該地方公共団体の吏員に限らず、広く地方公営企業の経営に関し識見を有するもののうちから、地方公共団体の長が任命するものとしたこと(法第七条の二第一項)。
4 管理者の責任態勢を確立するため、その職は特別職とし(地方公務員法第三条第三項第一号の三)、その身分取扱いについては次のとおり改められたこと(法第七条の二)。
(1) 管理者は、常勤の職員とし(法第七条の二第六項)、国会議員または地方公共団体の議会の議員若しくは常勤の職員と兼ねることができないものとしたこと(法第七条の二第三項)。したがつて管理者は副知事、助役との兼務はもとより、一般職の職員との兼職もできないものであること。
(2) 管理者は、四年の任期を有し、再任されることもできるものであること(法第七条の二第四項、第五項)。
(3) 地方公共団体の長は、管理者の心身の故障の場合のほか、管理者の業務の執行が適当でないため経営の状況が悪化したと認める場合その他管理者がその職に必要な適格性を欠くと認める場合にはこれを罷免することができるものであること(法第七条の二第二項)。
また、地方公共団体の長は、管理者について懲戒処分を行なうこともできるものであること(法第七条の二第八項)。
(4) 管理者は、退職しようとするときはその日前二十日までに地方公共団体の長に申し出なければならないものであること。ただし、地方公共団体の長の承認を得たときはこの限りでないこと(法第七条の二第十一項、地方自治法第百六十五条第二項)。
(5) 管理者は、地方公共団体の委員会の委員等に準じ、その職務に関し請負をすることまたは請負をする法人の役員になること等が禁じられるものであること(法第七条の二第十一項、地方自治法第百八十条の五第六項から第八項まで)。
(6) 管理者の服務については、法令等に従う義務、秘密を守る義務、政治的行為の制限等、一般職の職員の服務に関する規定が準用されるものであること(法第七条の二第十一項、地方公務員法第三十条から第三十七条まで、第三十八条第一項)。
5 管理者に事故のある場合のほか、管理者が欠けたときにも上席の職員がその職務を行なうものとし、当該管理者の職務を行なう職員の指定については地方公共団体の長の同意を要するものとしたこと(法第十三条第一項)。
6 管理者がその権限に属する事務の一部を他の管理者に委任する場合には、地方公共団体の長の同意を要しないものとしたこと(法第十三条の二)。
7 地方公営企業の合理化、能率的経営を図るため管理者の自主性を強化するものとし、地方公共団体の長の管理者に対する一般的指揮監督権を排除し、長は、管理者の権限に属する事項については、次に掲げる場合に限り必要な指示をすることができるものとしたこと(法第十六条)。
(1) 当該地方公共団体の住民の福祉に重大な影響がある地方公営企業の業務の執行に関しその福祉を確保するため必要がある場合
(2) 当該管理者以外の地方公共団体の機関の権限に属する事務の執行と当該地方公営企業の業務の執行との間の調整を図るため必要がある場合
第四 財務に関する事項
1 特別会計の設定に関する事項
二以上の事業を通じて一の特別会計を設けることができるのは、軌道事業、自動車運送事業および地方鉄道事業のうち二以上の事業をあわせて経営する場合または水道事業と法の規定の全部を適用する簡易水道事業をあわせて経営する場合に限るものとしまた、二以上の事業を通じて一の特別会計を設ける場合には、条例で定めなければならないものとしたこと(法第十七条ただし書、令第八条の四)。
2 企業会計と一般会計等との負担区分に関する事項
(1) 地方公営企業は、地方公共団体の経営する企業であるため、一般行政事務の一部をあわせ行ないあるいは本来採算をとることは困難であるが、公共的な必要からあえて事業を行なわなければならない場合があり、このような場合には、事務の性質または事業の実施によつて公共的利益を確保すべき責任の帰属に応じて一般会計等において所要経費を負担する必要があること。したがつて地方公営企業の経費のうち一般会計等で負担すべき性質の経費については、一般会計等において負担することを義務づけ、反面企業の負担とされたものについては、企業自身の努力によつて採算をとるべきことを明らかにすることにより、地方公営企業の合理的、能率的経営を推進するとともにその経営の健全性を確保することとしたこと。このような見地から、次に掲げる地方公営企業の経営で政令で定めるものは、地方公共団体の一般会計等において、出資、長期の貸付け、負担金の支出その他の方法により負担するものとしたこと(法第十七条の二第一項)。
ア その性質上当該地方公営企業の経営に伴う収入をもつて充てることが適当でない経費
イ 当該地方公営企業の性質上能率的な経営を行なつてもなおその経営に伴う収入のみをもつて充てることが客観的に困難であると認められる経費
なお、負担区分を定める政令は、近く制定される見通しであるが、その際改めて詳細に通知する予定であること。
(2) 地方公営企業の特別会計においては、その経費は、経費の負担区分に基づき一般会計等が負担するものを除き、当該地方公営企業の経営に伴う収入をもつて充てなければならないものとしたこと(法第十七条の二第二項)。
(3) 災害の復旧その他特別の理由により必要がある場合において一般会計等から補助することができる旨の規定は従来通り存置されているが(法第十七条の三)、負担区分の規定が設けられ本来企業会計で負担すべきでない経費および負担することが客観的に困難な経費について、一般会計等の負担が義務づけられたことに伴い、補助規定の運用にあたつては経費負担の原則をみだすことがないよう特に慎重に配意すべきものであること。
(4) 地方公営企業の特別会計が負担区分に基づく出資以外の出資を受けた場合には、利益の状況に応じ、納付金を一般会計等に納付するものとしたこと(法第十八条第二項)。納付金は、自己資本に対する報酬としての性格を有するものであり、その性格上定額でなく、利益の状況に応じて、利益処分として納付するものであること。
(5) 地方公営企業の特別会計が負担区分に基づく長期貸付以外の長期貸付けを受けた場合には適正な利息を一般会計等に支払わなければならないものとしたこと(法第十八条の二第二項)。
3 料金に関する事項
地方公営企業の料金は、公正妥当なものでなければならず、かつ、能率的な経営の下における適正な原価を基礎とし、地方公営企業の健全な運営を確保することができるものでなければならないものとしたこと(法第二十一条第二項)。この場合の原価は、営業費、支払利息等経営に要する費用であつて、いわゆる資金収支上の不足額をそのまま料金原価に含めることは適当でないこと。また、地方公営企業が健全な経営を確保する上に必要な資金を内部に留保するため、料金には適正な率の資本報酬を含ませることが適当であること。
なお、地方公営企業の料金には、地方自治法第二百二十五条の使用料に該当するものがあるが、使用料に該当する料金に関する事項は、条例で定めなければならないものであること(同法第二百二十八条)。
4 企業債に関する事項
企業債の償還元金が地方公営企業の資金繰りの圧迫要因となつている等の実情にかんがみ、国は地方公営企業の健全な運営を確保するため必要があると認めるときは、企業債の繰延べ、借換え等につき、法令の範囲内において、資金の事情が許すかぎり、特別の配慮をするものとしたこと(法第二十二条の二)。
5 予算に関する事項
(1) 地方公営企業の予算は、毎事業年度における企業運営の目標設定の意味を持つものであるので、予算には業務の予定量を定めることとする。とともに、予算の効率的な運営を確保するため収入および支出についてはその大綱を定めるものとしたこと(法第二十四条第一項)。
(2) 管理者は、従来の予算の見積りに関する書類の作成にかえて予算の原案を作成するものとしたこと。なお、予算の調製権は従来と同様地方公共団体の長にあるが、長は、管理者に対する指示権が限定された趣旨にかんがみ予算の調製にあたつてはできるかぎりその原案を尊重すべきものであること(法第八条第一項第一号、第二十四条第二項)。
(3) 予算に新たに記載することとした業務の予定量には、水道事業または工業用水道事業にあつては給水戸数または給水事業所数、年間総給水量、一日平均給水量等を、軌道事業、自動車運送事業または地方鉄道事業にあつては車両数年間走行キロメートル、年間総輸送人員、一日平均輸送人員等を、ガス事業にあつては供給戸数、年間供給量、一日平均供給量等を、電気事業にあつては年間販売電力量等を、病院事業にあつては病床数、年間入院患者数および外来患者数、一日平均入院患者数および外来患者数等を記載するほか、各事業を通じ、主要な建設改良事業の概要を記載するものであること(法第二十四条第一項、令第十七条第一項第一号)。
また、重要な資産の取得および処分は、地方公営企業の用に供する資産のうち条例で定める重要な資産の取得および処分について定めるものであること(法第三十三条第二項、令第十七条第一項第十二号)。
(4) 予算とともに議会に提出する予算の説明書は、事業計画が不要とされたほか、従来と変わりがないものであること(法第二十五条、令第十七条の二)。
(5) 継続費に係る支出予算の金額のうち、継続年度内に支払義務が生じなかつたものについて法第二十六条第一項または第二項の規定により繰り越した場合にあつては、当該継続費に係る継続費精算報告書は、当該繰り越された年度が終了した場合に作成するものとしたこと(令第十八条の二第二項)。また、管理者は、当該繰越しについては、継続費繰越計算書をもつて、地方公共団体の長に報告するものとしたこと(令第十九条)。
(6) 支出予算の金額のうち年度内に支出の原因となる契約その他の行為をし、避け難い事故のため年度内に支払義務が生じなかつたものを管理者が翌事業年度に繰り越して作用する場合の当該地方公共団体の長の承認に、要しないものとしたこと(法第二十六条第二項ただし書)。
6 出納に関する事項
(1) 地方公営企業の出納取扱金融機関または収納取扱金融機関は、管理者が、銀行、郵便官署その他これらに類する貯金の受入れまたは資金の融通を業とする機関のうちから地方公共団体の長の同意を得て指定するものとしたこと。なお、その指定にあたつては、出納取扱金融機関または収納取扱金融機関の機能が制度的に充分発揮されうる金融機関の種類を選ぶとともに、各金融機関の信用度を充分考慮しなければならないものであること(法第二十七条ただし書、令第二十二条、第二十二条の二)。
(2) 監査委員は、必要があると認めるとき、または管理者の要求があるときは、出納取扱金融機関または収納取扱金融機関が取り扱う地方公営企業の業務に係る公金の収納または支払の事務について監査をすることができるものとし、その監査をしたときは、その結果を地方公共団体の議会および長ならびに管理者に報告しなければならないものとしたこと(法第二十七条の二)。
(3) 地方公営企業の業務に係る現金の保管は、出納取扱金融機関、収納取扱金融機関その他の確実な金融機関への預入れその他の最も確実かつ有利な方法によつて保管しなければならないものとしたこと(令第二十二条の六第一項)。なおこのことは、管理者が業務上必要な限度において自ら保管することを禁止する趣旨のものではないが、管理者が自ら保管する現金の額は、自ら支払を行なうために必要とする額等、必要最小限度とすべきものであること。
また、管理者は、地方公営企業の業務に関して地方公共団体が債権者として債務者に属する権利を代位して行なうことにより、受領すべき現金または有価証券を保管することができるものとしたこと(令第二十二条の六第二項)。
(4) 企業出納員は、管理者の補助職員として法第十三条第二項の規定に基づき管理者の権限に属する出納その他の会計事務の一部の委任を受けることができるものであること。(改正法による改正前の地方公営企業法(以下「旧法」という。)第二十八条第五項参照)。
7 決算に関する事項
地方公営企業の業務の執行の成果を反映する決算の重要性にかんがみ、監査委員は、地方公営企業の決算の審査にあたつては、地方公営企業の運営が常に企業の経済性を発揮するとともに、その本来の目的である公共の福祉を増進する趣旨に従つてなされているかどうかについて、特に意を用いなければならないものとしたこと(法第三十条第三項)。
8 資産の取得、管理および処分に関する事項
(1) 次表に掲げる地方公営企業の用に供する資産の取得または処分でその予定価格(適正な対価を得てする売払い以外の方法による譲渡にあつては、その適正な見積価額)の金額が同表に掲げる金額を下らない範囲で条例で定める重要なものについては、予算で定めなければならないものとしたこと(法第三十三条第二項、令第十七条、第一項十二号、第二十六条の三、別表)。
種類 | 金額 |
不動産または動産の買入れまたは譲渡(土地については、その面積が都道府県にあつては一件二万平方メートル以上、指定都市にあつては一件一万平方メートル以上、市町村にあつては一件五千平方メートル以上のものに限る。) | 都道府県 七〇、〇〇〇千円 指定都市 四〇、〇〇〇千円 市 二〇、〇〇〇千円 町村 七、〇〇〇千円 |
なお、このことに伴い、地方公営企業の用に供する資産の取得、管理および処分については、一件ごとの地方公共団体の議会の議決または長の承認は要しないものとしたこと(法第三十三条第一項、第四十条第一項)。
(2) 地方公営企業の用に供する行政財産を地方自治法第二三八条の四第三項の規定によりその用途または目的を妨げない限度において使用させる場合に徴収する使用料に関する事項については、管理者が定めるものとしたこと(法第三十三条第三項)。
9 公金の徴収または収納の委託に関する事項
管理者は、地方公営企業の業務に係る公金(以下「公金」という。)の徴収または収納の事務について、収入の確保および住民の便益の増進に寄与すると認める場合に限り、私人に委託することができるものとしたこと(法第三十三条の二)。すなわち、従来委託することができることとされていた料金ならびに料金以外の使用料、手数料、賃貸料および貸付金の元利償還金のほか、物品の販売代金等すべての公金の徴収または収納について委託することができることとするとともに、委託の相手方についても法人であると、自然人であるとを問わないこととしたこと。なお、料金の徴収または収納の事務の私人への委託についても、地方公共団体の長の同意を要しないものとしたこと(令第二十六条の四)。
10 契約に関する事項
地方公営企業の業務に関する契約の締結については、この契約に関する特例(旧法第三十四条参照)を廃止し、地方自治法および同法施行令の契約に関する規定を適用するものとしたこと(地方自治法第二百三十四条から第二百三十四条の三まで、地方自治法施行令第百六十七条から第百六十七条の十六まで参照)。
なお、地方公営企業の業務に係る入札保証金および契約保証金の率または額は、管理規程で定めるものとしたこと(令第二十一条の十四)。
11 職員の賠償責任に関する事項
地方自治法第二百四十三条の二の規定は、地方公営企業の業務に従事する職員の賠償責任について次のように準用するものとしたこと(法第三十四条)。
(1) 損害賠償
ア 管理者もしくは出納その他の会計事務および決算調製事務について管理者の権限を行なう者もしくは管理者の権限を行なう者の出納その他の会計事務を補助する職員または地方公営企業の業務に関し、資金前渡を受けた企業職員、その他の地方公共団体の職員、占有動産を保管している地方公営企業の職員または物品を使用している地方公営企業の職員が故意または重大な過失(現金については、故意または過失)により、その保管に係る現金、有価証券、物品もしくは占有動産またはその使用に係る物品を亡失し、または損傷したときは、これによつて生じた損害を賠償しなければならないものであること。
イ 地方公営企業の業務に係る支出負担行為支出もしくは支払または地方自治法第二百三十四条の二第一項の監督もしくは検査を行なう権限を有する地方公営企業の職員またはその権限に属する事務を直接補助する地方公営企業の職員で地方公共団体の規則または企業管理規程で指定したものが故意または重大な過失により法令の規定に違反して当該行為をしたことまたは怠つたことにより地方公共団体に損害を与えたときは、当該損害を賠償しなければならないものであること。
(2) 賠償の命令
ア 管理者(管理者が置かれていない地方公営企業にあつては、地方公共団体の長)は、(1)の職員が(1)の行為によつて当該地方公共団体に損害を与えたと認めるときは、監査委員に対し、その事実があるかどうかを監査し、賠償責任の有無および賠償額を決定することを求め、その決定に基づき期限を定めて賠償を命じなければならないものであること。
なお、当該監査委員の意見の決定は、監査委員の定数が二人以上である場合においては、その合議によるものであること。
イ (1)のアの場合にあつてはその事実を知つた日から、(1)のイの場合にあつては、その事実の発生した日から三年を経過したときは、アにかかわらず賠償を命ずることができないものであること。
(3) 賠償責任の全部または一部の免除
ア (2)のアにより監査委員が賠償責任があると決定した場合において、管理者(管理者が置かれていない地方公営企業にあつては、地方公共団体の長)は、当該職員からなされた当該損害が避けることのできない事故その他やむを得ない事情によるものであることの証明を相当に認めるときは、賠償責任の全部または一部を免除することができるものであること。ただし、条例で定める場合には、賠償責任の免除について議会の同意を得なければならないものであること。
なお、管理者限りで賠償責任を免除することができる途を開いたのは、地方公営企業の特質にかんがみ必然的に日常定型的に発生するものについては管理者の権限と責任において弾力的に処理し、企業の能率的運営を確保しようとする趣旨であるので、条例には、たとえば一定金額以上というように特に賠償責任の重大なものに限つて規定することが適当であること。また、当該同意を求めるにあたつて、当該地方公営企業に管理者が置かれているときは、管理者は当該同意を求める議案の作成に関する資料を作成して地方公共団体の長に送付し、地方公共団体の長はこの資料に基づいて当該同意を求める議案を作成し、議会に提出しなければならないものであること。
イ アの免除を行なう場合においては、管理者(管理者が置かれていない地方公営企業にあつては、地方公共団体の長)は、あらかじめ監査委員の意見をきかなければならないものであること。なお、地方公共団体の長はアの免除について同意を求める議案を議会に提案するときは、この監査委員の意見もあわせて議会に付議しなければならないものであること。
また、当該監査委員の意見の決定は、監査委員の定数が二人以上である場合においては、その合議によるものであること。
(4) 不服申立て
(2)の処分に不服がある者は、次の区分によつて当該処分について不服申立ができるものであること。
ア 当該地方公営企業に管理者が置かれている場合
(ア) (2)の処分に不服がある者は、当該地方公共団体の長に当該処分について審査請求をすることができるものであること。この場合において、当該地方公共団体の長は議会に諮問して当該審査請求について裁決しなければならず、当該議会はその諮問があつた日から二十日以内に意見を述べなければならないものであること。
(イ) (2)の処分に不服がある者で(ア)の地方公共団体の長の審査請求についての裁決に不服があるものは、都道府県知事がした裁決については自治大臣、市町村長がした裁決については都道府県知事に再審査請求をすることができるものであること。
イ 当該地方公営企業に管理者が置かれていない場合
(ア) (2)の処分に不服がある者は、当該地方公共団体の長に当該処分について異議申立てをすることができるものであること。
この場合において、当該地方公共団体の長は、議会に諮問して当該異議申立てについて決定しなければならず、当該議会は、その諮問があつた日から二十日以内に意見を述べなければならないものであること。
(イ) (2)の処分に不服がある者で、(ア)の地方公共団体の長の異議申立てについての決定に不服があるものは、都道府県知事がした処分については自治大臣、市町村長がした処分については都道府県知事に審査請求をすることができるものであること。
第五 職員の身分取扱いに関する事項
1 指定職員に関する事項
従来職階制および給与に関する地方公営企業法の規定は、政令で定める基準に従い地方公共団体の長が定める職にある職員(以下「指定職員」という。)には適用されなかつたのである。(旧法第三十七条、第三十八条参照)が、これらの職員にもこれらの規定を適用することとしたこと(法第三十七条、第三十八条)。したがつて、職階制および給与については、管理者の補助職員は、指定職員であるとその他の職員であるとを問わず、すべて地方公営企業法上同様の取扱いを受けることとなつたものであること。また、これに伴い、指定職員には政治的行為の制限に関する地方公務員法第三十六条の規定が適用されることを除き地方公務員法の適用関係については、その他の職員との間に差別がなくなつたものであること(法第三十九条)。
なお、法第三十九条第二項の規定に基づき地方公共団体の長が定める職の基準に関する政令の内容は、従来の地方公営企業法第三十七条第一項の規定に基づき地方公共団体の長が定める職の基準に関する政令の内容と同一であること。
2 給与に関する事項
(1) 企業職員の給与の種類は、給料および手当の二種であることを明確にしたこと(法第三十八条第一項)。
(2) 企業職員の給与は、その職務に必要とされる技能、職務遂行の困難度等職務の内容と責任に応ずるものであり、かつ、職員の発揮した能率が充分に考慮されるものでなければならないものとしたこと(法第三十八条第二項)。すなわち、企業職員の給与の性格は、いわゆる職務給であることに加えて、職務遂行にあたつて職員の発揮した能率が給与の面に充分考慮されるいわゆる能率給でなければならないことが法文上明確にされたものであること。したがつて、職務の内容と責任、職員の勤務成績と無関係に、年功序列のみによつて決定されるような給与は、法律の趣旨に反するものであること。
(3) 企業職員の給与は、同一または類似の職種の国および地方公共団体の職員ならびに民間事業の従事者の給与を考慮しなければならないものとしたこと(法第三十八条第三項)。すなわち、従来企業職員の給与を決定するにあたつては、国および地方公共団体の職員ならびに民間企業の従事者の給与を考慮しなければならないこととされていたが、考慮すべき公務員等の給与は同一または類似の職種のそれであることが明らかにされたものであること。したがつて、企業職員についてその職種に関係なく一律に国または地方公共団体の行政事務に従事する職員の給与と同一の給与を定めるようなことは、法律の趣旨に反するものであること。
(4) 企業職員の給与は、当該地方公営企業の経営の状況を考慮して定めなければならないものとしたこと(法第三十八条第三項)。したがつて、企業の経営状況と全く無関係に給与を決定することは、法律の趣旨に反するものであること。
第六 一部事務組合の特例に関する事項
地方公営企業の経営に関する事務を共同処理する一部事務組合について、当該企業の経営を能率的、かつ、機動的に行なうことができるようにするためその組織等について次のような特例を設けたものであること。
1 組織に関する特例に関する事項
(1) 地方公営企業の経営に関する事務を共同処理する一部事務組合の名称を企業団としたこと(法第三十九条の二第一項。)
(2) 企業団の管理者の名称は、企業長とし、企業団には、地方公営企業の管理者を置かず、当該管理者の権限は、企業長が行なうものとしたこと(法第三十九条の二第二項)。
企業長は、企業団の規約で別段の定めをしない限り、地方公営企業の経営に関し識見を有する者のうちから、企業団を組織する地方公共団体の長が共同して任命するものとしたこと(法第三十九条の二第三項)
企業長は、常勤の特別職とし、企業長の欠格事由、任期、罷免、懲戒、失職、兼業禁止等については、地方公営企業の管理者および委員会の委員等に関する規定を準用するとともに、企業長には、秘密を守る義務に関する地方公務員法第三十四条の規定を準用するものとしたこと(法第三十九条の二第四項、第七条の二第二項、第四項から第十項まで、地方自治法第百八十条の五第六項から第八項まで、地方公務員法第三条第三項第一号の三、第三十四条)。
(3) 企業団の監査委員の定数は、企業団の規約で定めるところにより二人または一人とするものとし、監査委員は、企業長が企業団の議会の同意を得て、事業の経営管理について専門の知識または経験を有する者のうちから選任するものとしたこと(法第三十九条の二第五項、第六項)。
(4) 企業団の議会の議員の定数は、十五人をこえることができないものとしたこと(法第三十九条の二第七項)。
2 財務に関する特例に関する事項
法の規定の全部または一部を適用している企業の経営に関する事務を共同処理する一部事務組合(以下「組合」という。)と当該組合を組織する地方公共団体との間の経費の負担区分を明確化するため、法第十七条の二から第十八条の二までの規定は、当該組合を組織する地方公共団体の当該組合に対する経費の負担、補助、出資および長期の貸付けについて準用するものとしたこと(法第三十九条の三第二項、第三項)。
第七 雑則に関する事項
1 地方自治法の適用除外に関する事項
地方公営企業の能率的な経営を図るため、地方公営企業の業務については、次のように地方自治法の規定の適用を除外することとしたこと(法第四十条)。
(1) 地方公営企業の業務に関する契約の締結ならびに財産の取得、管理および処分については、地方自治法第九十六条第一項第五号から第七号までおよび第二百三十七条第二項の規定は適用しないものであること(法第四十条第一項)。したがつて、これらの処分等については、議会の議決または条例は要しないものであること。
(2) 地方公営企業の業務に関する負担附きの寄附または贈与の受領、地方公共団体がその当事者である審査請求その他の不服申立て、訴えの提起、和解、あつせん、調停および仲裁ならびに法律上地方公共団体の義務に属する損害賠償の額の決定については、条例で定めるものを除き、地方自治法第九十六条第一項第八号、第十一号および第十二号の規定は適用しないものであること(法第四十条第二項)。
したがつて、これらの事案については、特に必要と認めて条例で定めるものを除き、議会の議決は要しないものであること。なお、条例には、係争金額の多額なもの、事案の複雑なもの等重要な事案に限定して規定すべきものであること。
2 地方公共企業体に関する事項
地方公営企業を能率的、かつ、合理的に経営するため、地方公営企業に間接経営方式を導入することとし、その一形態として地方公共団体は地方公共企業体を設けることができるものとし、その具体的な規定は別に法律をもつて定めるものとしたこと(法第四十二条)。
第八 財政再建に関する事項
財政状況の極度に悪化した地方公営企業を経営する地方公共団体で自らの努力のみによつて企業の再建を図ることが困難なものについて、国の援助、協力のもとに計画的にその再建を行なわせるため新たに地方公営企業の財政再建に必要な措置を定めたものであること。
1 対象事業に関する事項
財政再建措置の対象となる事業は、法を適用している水道事業、工業用水道事業(その布設に要する経費について国から補助金の交付を受けたものを除く。)、軌道事業、自動車運送事業、地方鉄道事業、電気事業、ガス事業または病院事業(以下「水道事業等」という。)のうち実質上収支が均衡していないもので、昭和四十一年三月三十一日(同年四月一日に新たに地方公営企業法を適用した事業にあつては、同日)において不良債務を有するものまたは同年四月一日において地方公営企業法を適用していなかつた事業にあつては昭和四十年度において実質赤字を有するもの(以下「昭和四十年度の赤字企業」と総称する。)であること(法第四十三条第一項)。
実質上収支が均衡していないときは、累積欠損金を有する場合のほか、最近地方公営企業法を適用した事業で貸借対照表上累積欠損金としては表示されないが同法の適用前における収入不足等のため実質上不健全な財政状態にある場合を含む趣旨であること。
不良債務とは、流動負債の額が流動資産の額をこえる額をいい、次の算式によつて計算されるものであること(法第四十三条第一項、令第三十条)。
不良債務=(令第十五条第三項の流動負債の額-起債前借りである一時借入金の額)-(令第十四条の流動資産の額-当該事業年度に執行すべき事業に係る支出予算の額のうち翌事業年度に繰り越したものの財源に充当することができる特定の収入で当該事業年度に収入された部分に相当する額(自治大臣が特に必要と認めたものに限る。))
実質赤字とは、繰上充用額および支払繰延額または当該年度に執行すべき事業に係る歳出予算の額のうち翌年度に繰り越した額から未収入特定財源を控除した金額をいうものであること(法第四十三条第三項)。
なお、財政再建措置の対象となる事業は地方公営企業法を適用しているものに限られているので、現に同法を適用していないものについて財政再建をしようとするときは、条例(昭和四十二年一月一日以降は、一部事務組合にあつては、規約)で同法を適用しなければならないものであること。
2 財政再建計画の策定および承認に関する事項
(1) 昭和四十年度の赤字企業について財政再建を行なおうとする地方公共団体は、議会の議決を経て、その旨を昭和四十一年十二月三十一日までに自治大臣に申し出て、自治大臣の指定する日(以下「指定日」という。)現在により財政再建計画を定め、自治大臣の承認を得なければならないものであること(法第四十三条、第四十四条、令第三十一条)。改正規則による改正後の地方公営企業法施行規則(以下「施行規則」という。)第十三条、地方財政再建促進特別措置法施行規則(以下「再建規則」という。)第一条、第二条第一項
(2) 財政再建計画は、指定日の属する年度およびこれに続くおおむね七年度以内に不良債務を解消し、財政の健全性を回復するように、財政再建に関する基本的事項を定めるものであること(法第四十三条第二項)。再建期間は、一応七年を標準としているが、経済変動の激しい現状にかんがみ、できるだけ短縮してすみやかな再建の完了を目途とすべきものであること。
(3) 財政再建計画は、当該地方公共団体の計画であるから、地方公共団体の長が管理者の作成する資料に基づいて作成し、議会の議決を経なければならないものであること。(法第四十四条第一項)。
(4) 財政再建計画の変更は、その作成と同様の手続によつて行なうものであること(法第四十四条第二項、施行規則第十三条、再建規則第二条第二項)。なお、災害その他緊急やむを得ない理由により財政再建計画を変更する必要が生じた場合において、あらかじめその変更について自治大臣の承認を得るいとまがないときは、事後において遅滞なく承認を得なければならないものであること(法第四十四条第三項、施行規則第十三条、再建規則第二条)。
(5) 財政再建計画の承認にあたつては、その実行の適否について技術的な検討を要するものであるので、当該地方公共団体は、財政再建計画の策定および変更に際しあらかじめ当省と緊密な連絡を保持することが必要であること。
3 国の援助措置に関する事項
(1) 財政再建計画について自治大臣の承認を得た地方公共団体(以下「財政再建団体」という。)は、昭和四十一年三月三十一日(同年四月一日に新たに地方公営企業法を適用した事業にあつては同日)における不良債務または昭和四十年度の実質赤字の範囲内における一時借入金の償還および未払金の支払に充てるためならびに財政再建計画の承認のあつた日から財政再建計画による財政の再建が完了する年度の前年度の末日までの間に財政再建計画に基づく職制若しくは定数の改廃または予算の減少により退職した管理者および企業職員に支給すべき退職手当の財源に充てるため、財政再建債を起こすことができるものであること(法第四十五条)。なお財政再建債を起こすには別途自治大臣の許可を受けなければならないものであること(法第五十条、地方財政再建促進特別措置法(以下「再建法」という。)第十四条、施行規則第十三条、再建規則第四条)。
(2) 財政再建債は、指定日の属する年度の翌年度以降おおむね七年度以内(退職手当の財源に充てるためのものについては、その起こした日の属する年度の翌年度以降三年度以内)に、財政再建計画に基づき償還しなければならないものであること(法第四十六条)。
(3) 財政再建債に対する利子補給は、昭和四十年度の不良債務または実質赤字を同年度の営業収益の額(受託工事収益の額を除く。)の十分の一の額で除して得た数値が二未満の財政再建団体にあつては、利息の定率を年六分五厘として計算して得た額をこえる部分に相当する金額(年一分五厘(都道府県または市にあつては、年一分)の定率を乗じて得た額を限度とする。)。この数値が二以上の財政再建団体にあつては逓増方式により計算し、八以上の財政再建団体において利息の定率を年三分五厘として計算して得た額をこえる部分に相当する金額(年四分五厘(都道府県または市にあつては、年四分)の定率を乗じて得た額を限度とする。)について行なうものであること(法第四十七条、令第三十二条、施行規則第十三条、再建規則第五条)。
(4) 財政再建団体(財政再建債を起こさないものを除く。)が、退職手当債を起こしている場合には、財政再建計画の承認を受けた(同日以後に起こされた退職手当債については、その起こされた日)以後は、これを財政再建債とみなしこれらの日以後の分について利子補給を行なうものであること(法附則第五項)。
(5) 国は、必要があると認めるときは、企業債の償還の繰延べその他財政再建を促進するための措置について配慮するものであること(法第四十八条)。
(6) 昭和四十年度の赤字企業を経営する地方公共団体は、財政再建計画を策定し、またはこれを実施するため必要があるときは、自治大臣その他関係行政機関の長に対し、助言その他必要な援助を求めることができるものであること(法第五十条、再建法第十八条)。
4 財政再建の確保に関する事項
(1) 財政再建団体の長は、財政再建計画に従つて予算を調製しなければならず管理者は財政再建計画に従つて業務を執行しなければならないものであること(法第四十四条第四項、第五項)。
(2) 自治大臣は、必要に応じ、財政再建団体について財政再建計画の実施状況を監査するものであること(法第五十条、再建法第二十条)。
(3) 自治大臣は、財政再建団体の財政の運営が財政再建計画に適合しないと認める場合においては、財政の運営を財政再建計画に適合させるため、予算のうち過大である部分の執行停止その他の必要な措置を講ずることを求めることができるとともに制度の改正等特別の理由により必要があると認める場合においては、財政再建計画の変更を求めることができるものであること(法第五十条、再建法第二十一条第一項、第二項)。
財政再建団体がこれらの求めに応じなかつた場合には、財政再建債の利子補給を停止することができるものであること(法第五十条、再建法第二十一条第三項)。
5 地方財政再建促進特別措置法等の準用に関する事項
財政再建計画の公表(再建法第四条)、財政再建計画承認の通知(同法第五条第二項)、国等の協力義務(同法第六条)、国の直轄事業の実施に関する自治大臣への通知(同法第七条)、財政再建についての長と議会との関係(同法第十一条)、財政再建計画の実施状況の報告および公表(同法第十九条)ならびに退職手当債の起債(同法第二十四条第一項)については再建法の規定が、実施について自治大臣への通知を要する国の直轄事業(地方財政再建促進特別措置法施行令(以下「再建令」という。)第四条)、財政再建が完了した団体の報告等(同令第十四条の四)、市町村の提出する書類(同令第十五条)および自治省令への委任(同令第十六条)については再建令の規定が、財政再建計画の実施状況の報告(再建規則第八条)および財政再建が完了した団体の報告(同規則第十四条)については再建規則の規定がそれぞれ準用されているものであること(法第五十条、令第三十三条および施行規則第十三条)。
6 赤字の企業の財政再建に関する事項
法を適用している水道事業等で昭和四十一年度以降の年度において不良債務または実質赤字を有するものは、財政再建債の発行及び利子補給等の規定を除き、財政再建計画の策定、承認等昭和四十年度の赤字企業の財政再建と同様の手続によつて財政再建を行なうことができるものであること(法第四十九条、令第三十一条)。
第九 関係法令の規定の整備に関する事項
今回の改正に伴い関係法令の規定について次のように所要の整備を行なつたものであること。
1 地方自治法施行令および地方自治法施行規則の一部改正
継続費に係る歳出予算の金額のうち継続年度内に支出を終わらなかつたものについて地方自治法第二百二十条第三項ただし書の規定により翌年度に繰り越した場合にあつては、当該継続費に係る継続費精算報告書は、その繰り越された年度が終了したときに調整するものとしたこと(改正令附則第十条第一項、地方自治法施行令第百四十五条第二項)。また、当該繰越しにあたつては、地方公共団体の長は、継続費繰越計算書を調製するものとしたこと(改正規則附則第四項、地方自治法施行規則第十五条の五、別記継続費繰越計算書様式)。なお、この改正は昭和四十二年度の予算および決算から適用されるものであること(改正令附則第十条第二項、改正規則附則第五項)。
2 地方財政法および地方財政法施行令の一部改正
従来、地方公共団体の経営する水道事業、工業用水道事業、交通事業、電気事業およびガス事業については、その経費は経営に伴う収入をもつて充てなければならないものとされ、簡易水道事業、港湾整備事業(埋立事業ならびに荷役機械、上屋、倉庫、貯木場および船舶の離着岸を補助するための船舶を使用させる事業に限る。以下同じ。)、病院事業、市場事業、と畜場事業、観光施設事業、宅地造成事業、公共下水道事業については主としてその経費は経営に伴う収入をもつて充てるべきものとして、区別されていたのであるが、これらの事業を通じて事業の会計と一般会計等との間の経費負担の原則を確立することとし、本来一般会計において負担すべき性質の経費および事業の経営に伴う収入のみをもつて充てることが客観的に困難な経費については、一般会計等において負担し、その他の経費については、事業の経営に伴う収入をもつて充てなければならないものとしたこと(改正法附則第十二条、地方財政法第六条、改正令附則第十一条、地方財政法施行令第十二条)。なお、これらの事業について一般会計等において負担すべき具体的な経費の範囲については、地方公営企業法の適用される企業を除き、政令をもつて明示することとはしていないので、事業の立地条件、採算可能の程度、事業の有する公共性等各事業の具体的条件に応じて判断すべきものであるが一般的には、簡易水道事業については水道事業に準じて一般会計等の負担する経費を定めるべきであり、港湾整備事業、市場事業、と畜場事業、観光施設事業、宅地造成事業については事業の性格上その経費は事業に伴う収入をもつて充てるべきものであること。おつて、公共下水道事業の経費のうち一般会計等において負担すべきものの基準については、別途通知する予定であること。
3 地方公務員法の一部改正
地方公営企業の管理者および企業団の企業長の職を特別職に加えたものであること(改正法附則第十四条、地方公務員法第三条第三項第一号の三)。
4 その他の法令の改正
地方財政再建促進特別措置法、地方公営企業労働関係法、自治省設置法および自治省組織令ならびに地方公営企業法第三十七条第一項の規定に基づき地方公共団体の長が定める職の基準に関する政令の関連規定を整備するとともに地方公営企業制度調査会令を廃止したこと(改正法附則第十三条、第十五条から第十七条まで、改正令附則第九条、第十二条、第十三条)。
第十 改正法令の施行期日および経過措置に関する事項
1 施行期日
改正法、改正令および改正規則は、それぞれ財政再建に関する部分の規定は公布の日、地方公営企業の組織、財務(決算、経費の負担の原則等に係る部分を除く。)および職員の身分取扱い、企業団等に関する部分の規定は昭和四十二年一月一日、地方公営企業の範囲、決算、経費の負担の原則等に関する部分の規定は同年四月一日から施行されるものであること(改正法附則第一条、改正令附則第一条、改正規則附則第一項)。
2 適用区分等
(1) 特別会計
特別会計の設置に関する法第十七条の規定は、昭和四十二年度の予算および決算から適用し、改正法附則第一条第二号に掲げる規定(以下「管理者関係の改正規定」という。)の施行の際旧法第十七条ただし書の規定により議会の議決を経て二以上の事業を通じて設けられている一の特別会計については、昭和四十一年度に限りなお従前の例によるものであること(改正法附則第二条第一項、改正令附則第二条第一項)。したがつて、昭和四十一年度の予算の補正および同年度の決算は、当該特別会計について行なうものであること。
(2) 予算および決算
法の規定中予算および決算に係る部分は、昭和四十二年度の予算および決算から適用し、昭和四十一年度分以前の予算および決算については、なお従前の例によるものであること(改正法附則第二条第 項、改正令附則第二条第二項、改正規則附則第二項)。したがつて、昭和四十一年度の予算の補正および同年度の決算は改正前の制度のもとで行ない、昭和四十二年度の当初予算は改正後の制度のもとにその調整および議会の議決を行なうものであること。
(3) 重要な資産の取得および処分
昭和四十二年一月一日から同年三月三十一日までの間に行なわれる法第三十三条第二項の重要な資産の取得および処分については、議会の議決を経なければならないものであること(改正法附則第二条第三項)
3 法の新規適用に関する特例等
(1) 法の新規適用に関する特例
常時雇用される職員の数が二十人未満で、法の規定の全部または一部を適用していない水道事業(簡易水道事業を除く。)、工業用水道事業、軌道事業、自動車運送事業、地方鉄道事業、電気事業若しくはガス事業または常時雇用される職員の数が百人未満で法の規定の全部または一部を適用していない病院事業については、昭和四十三年三月三十一日までの間は、条例(一部事務組合にあつては、規約。以下この3の(2)から(4)までにおいて同じ。)で定める場合には、それぞれ法の規定または財務規定等を適用しないことができるものであること(改正法附則第三条第一項)。
(2) 指定事業に関する経過措置
ア 改正法附則第一条第三号に掲げる規定(以下「等」という。)法適用関係等の改正規定の施行の際旧法第二条第三項の規定に基づき財務規定等の一部が適用されている簡易水道事業、港湾整備事業、市場事業、と畜場事業、観光施設事業、宅地造成事業および公共下水道事業については、引き続き法の財務規定等が適用されるものであること。ただし、条例で法の財務規定等を適用しないことができるものであること(改正法附則第三条第二項)。
イ 地方公共団体は、アの本文の事業について、条例で定めるところにより、法の財務規定等を除く法の規定を条例で定める日から適用することができるものであること(改正令附則第三条第二項)。
(3) 病院事業に対する財務規定等の適用についての特例
ア 地方公共団体は、当分の間、財務規定等が適用される病院事業について法第二条第二項の規定にかかわらず、条例で定めるところにより、財務規定等のうち、法第十七条の二(経費の負担の原則)および第十七条の三(補助)の規定を適用しないことができるものであること(改正法附則第三条第四項)。
イ 地方公共団体は、財務規定等が適用される病院事業で、財務規定等のうちアにより法第十七条の二および第十七条の三の規定を適用しない、病院事業については財務規定等を除く法の規定を適用することはできないものであること(改正令附則第四条)。
ウ 地方公共団体が、その経営する病院事業についてアにより法第十七条の二および法第十七条の三の規定を条例で適用しないこととした場合または当該条例を廃止して法第十七条の二および第十七条の三の規定を適用することとなつた場合には、当該地方公共団体の長は自治大臣にその旨を報告しなければならないものであること(改正令附則第五条、令第二十八条第三項、改正規則附則第三項)。
(4) 地方公営企業法の全部または一部を適用する条例についての経過措置
法適用関係の改正規定等の施行の際旧法第二条第四項の規定に基づく地方公共団体の経営する事業に旧法の全部または一部を適用する条例で現に効力を有するものについては、次のように取り扱うものであること(改正法附則第三条第三項、改正令附則第三条第三項、第四項)。
対象事業 | 改正前の条例 | 改正後の取扱い |
旧法第二条第一項の表の上欄に掲げる事業 | (i) 法の規定の全部を適用する条例 | 当該条例を廃止すること。 |
(ii) 財務規定等を適用する条例 | 同右 | |
(iii) 財務規定等を除く法の規定を適用する条例 | 同右 | |
病院事業 | (i) 法の規定の全部を適用する条例 | 法の財務規定等を除く法の規定を適用する条例とみなすものであること。ただし、財務規定等のうち法第十七条の二および第十七条の三の規定を適用しない病院事業については当該条例を廃止すること。 |
(ii) 財務規定等を適用する条例 | 当該条例を廃止すること。 | |
(iii) 財務規定等の一部を適用する条例 | 同右 | |
(iv) 法第十七条の二の規定を適用する条例 | 同右 | |
(v) 財務規定等の一部を除く法の規定を適用する条例 | 新法の財務規定等を除く法の規定を適用する条例とみなすものであること。ただし、財務規定等のうち法第十七条の二および第十七条の三の規定を適用しない病院事業については当該条例を廃止すること。 | |
その他の事業 | (i) 法の規定の全部を適用する条例 | 令第一条第二項の法の規定の全部を適用する条例とみなすものであること。 |
(ii) 財務規定等を適用する条例 | 令第一条第二項の財務規定等を適用する条例とみなすものであること。 | |
(iii) 財務規定等の一部を適用する条例 | 令第一条第二項の財務規定等を適用する条例とみなすものであること。 | |
(iv) 法第十七条の二の規定を適用する条例 | 当該条例を廃止すること。 | |
(v) 財務規定等の一部を除く法の規定を適用する条例 | 法の財務規定等を除く法の規定を適用する条例とみなすものであること。 |
(5) 一部事務組合の経営する企業についての特例
管理者関係の改正規定等の施行の際旧法第二条第四項の規定に基づき一部事務組合の経営する事業について旧法の規定の全部または一部を適用する条例で現に効力を有するものは、それぞれ地方公営企業法第二条第四項の規定に基づき当該一部事務組合の経営する事業について同法の規定の全部または一部を適用することを定めた当該一部事務組合の規約とみなすものであること(改正令附則第三条第一項)。
4 出納を取り扱う金融機関に関する経過措置
管理者関係の改正規定等の施行の際現に旧法第二十七条第一項の規定に基づき地方公営企業の業務に係る現金の出納事務を取り扱つている出納取扱金融機関または収納取扱金融機関は、法第二十七条ただし書の規定により管理者が指定した出納取扱金融機関または収納取扱金融機関とみなすものであること(改正法附則第四条)。
5 重要な資産の取得および処分に関する経過措置
昭和四十二年四月一日前に地方自治法第九十六条第一項第六号若しくは第七号または改正法附則第二条第三項の規定により適用される法第三十三条第二項の規定に基づきその取得または処分について議会の議決を経ている重要な資産について昭和四十二年三月三十一日までに取得または処分が終わらなかつたものがあるときは、管理者は、昭和四十二年度に限り、当該議決に基づき、当該資産の取得または処分をすることができることとしたものであること(改正法附則第五条)。したがつて、昭和四十二年度中に当該資産の取得または処分を行なうことができない場合には、昭和四十三年度の予算に計上しなければならないものであること。
6 契約に関する経過措置
昭和四十二年一月一日前に行なわれた公告または申込みに係る契約の手続については、なお、旧法第三十四条本文または同条ただし書の規定に基づく条例が適用されるものであること(改正法附則第六条)。
7 職員の賠償責任に関する経過措置
昭和四十二年一月一日前の事実に基づく地方公共団体の職員の賠償責任については、従前の例によつて処理されるものであること(改正法附則第七条)。したがつて、当該賠償責任の全部または一部の免除については地方自治法第百七十九条または第百八十条の規定による場合のほか、議会に付議しなければならないものであること。
8 給料に関する経過措置
企業職員の給与に関する規定の改正に伴い給与制度を切り替えるにあたつては、現に地方公営企業に従事する職員の受ける給料に著しい変動を生じることがないように適切な考慮を払わなければならないものであること(改正法附則第八条)。
9 地方公共団体の長の指定する職に関する経過措置管理者関係の改正規定等の施行の際現に旧法第二十七条第一項の規定に基づき地方公共団体の長が定めている職は、法第三十九条第二項の規定に基づき地方公共団体の長が定めた職とみなすものであること(改正法附則第九条)。
10 料金徴収事務の委任等の告示および公表に関する経過措置
料金の徴収事務の委任または料金以外の使用料等の徴収若しくは収納の委託について昭和四十二年一月一日前に改正令による改正前の地方公営企業法施行令(以下「旧令」という。)第十六条の二第三項または第十六条の三第二項の規定により行なわれた告示および公表は、令第二十六条の四第一項の規定により行なわれた告示および公表とみなすものであること(改正令附則第八条)。
11 企業団に関する経過措置等
管理者関係の改正規定等の施行の際現に存在する水道事業(簡易水道事業を除く。)工業用水道事業、軌道事業、自動車運送事業、地方鉄道事業、電気事業若しくはガス事業または地方公営企業法の規定の全部を適用しているその他の事業の経営に関する事務を共同処理する一部事務組合について法第三十九条の二の規定が新たに適用される際の当該一部事務組合の管理者、監査委員および議会についての経過措置は、次のとおりであること(改正法附則第十条)。
(1) 一部事務組合の管理者
ア 法第三十九条の二の規定が新たに適用される際現に在任する当該一部事務組合の管理者は、昭和四十四年十二月三十一日(当該管理者の任期が同日までに満了する場合にあつては、その任期が満了する日)までの間、引き続き法の規定による企業団の企業長として在任することができるものであること(改正法附則第十条第一項)。
イ 企業長の選任方法は、特別の理由がない限り、地方公営企業の経営に関し識見を有する者のうちから企業団を組織する地方公共団体の長が共同して任命するという法第三十九条の二第三項に規定する方法によるべきであるが、この方法による場合には、企業団の規約には企業長の選任についての規定を置く必要はないものであり、当該一部事務組合の管理者の選任方法に関する規約の規定は、法第三十九条の二の規定が適用される日までに削除の手続をとるべきものであること。なお、特別の理由により、法第三十九条の二第三項に規定する方法と異なる選任の方法によろうとするときは、その別段の方法を規約に定めるべきものであること(法第三十九条の二第三項)。
(2) 監査委員
ア 法第三十九条の二の規定が新たに適用される際現に在任する当該一部事務組合の監査委員は、昭和四十四年十二月三十一日(当該監査委員の任期が同日までに満了する場合にあつては、その任期が満了する日)までの間、引き続き法による監査委員として在任することができるものであること(改正法附則第十条第二項前段)。
イ アの場合において、監査委員として在任する者の数が法第三十九条の二第五項の規定により当該一部事務組合の規約で定める定数をこえるときは、同項の規定にかかわらず、当該在任する者の数をもつて当該企業団の監査委員の定数とし、これらの委員に欠員が生じたときは、これに応じて、その定数は、当該規約で定める定数に至るまで減少するものであること(改正法附則第十条第二項後段)。
なお、監査委員の定数を三人以上と定めている一部事務組合の規約の規定は、法第三十九条のこの規定が新たに適用される日までに当該定数を二人又は一人とするように改正する必要があること。
(3) 議会の議員
法第三十九条の二の規定が新たに適用される際現に当該一部事務組合の議会の議員の定数が十五人をこえているときは、同条第七項の規定にかかわらず、昭和四十五年十二月三十一日までの間、当該定数をもつて当該議会の議員の定数とすることができるものであること(改正法附則第十条第三項)。
12 改正法の施行の際すでに地方公営企業法の規定の全部又は一部が適用されているものに係る準備行為
管理者関係の改正規定等の施行の際すでに地方公営企業法の規定の全部または一部が適用されている地方公営企業を経営する地方公共団体においては、管理者関係の改正規定等の施行により当該地方公営企業について制定が必要となる次の条例を昭和四十二年一月一日前に、施行期日を昭和四十二年一月一日として制定または整備しておくことが必要であること。
(1) 地方公営企業の設置およびその経営の基本に関する事項について定める条例(法第四条)
(2) 昭和四十二年度以降引き続き二以上の事業を通じて一の特別会計とする場合には、その旨を定める条例
(3) 必要がある場合には、予算で定めなければならない重要な資産の取得または処分を定める条例(法第三十三条第二項)
(4) 必要がある場合には、職員の賠償責任の全部または一部の免除のうち議会の同意を得なければならないものを定める条例(法第三十四条)
(5) 企業職員の給与の種類および基準を定める条例(法第三十八条第四項)
(6) 必要がある場合には、企業の業務に関する負担附きの寄附または贈与の受領、地方公共団体がその当事者である審査請求その他の不服申立て、訴えの提起、和解、あつせん、調停および仲裁ならびに法律上地方公共団体の義務に属する損害賠償の額の決定のうち議会の議決を経なければならないものを定める条例(法第四十条第二項)
13 改正法の施行の際新たに法の規定が適用されるものに係る経過措置等
(1) 一般的事項
改正法の施行(同法附則第三条第一項の規定により、条例(一部事務組合にあつては、規約)でその経営する企業に法の規定または財務規定等を昭和四十三年三月三十一日までの間は適用しないこととした地方公共団体については、当該事業に対する法の規定または財務規定等の適用。以下同じ。)の際新たに法の規定または財務規定等が適用される企業の予算および決算ならびに資産再評価その他、当該企業の経営に関し必要な経過措置については、令第四条(会計年度、事業年度の特例等)、第七条(事務引継)、第八条(条例制定等の準備行為)、第二十八条第二項(自治大臣への報告)および附則第五項から第十項(資産の再評価)までの規定が準用されるものであること(改正令附則第六条、第七条)。
(2) 財務に関する事項
ア 地方公共団体の経営する企業について、改正法の施行により法の規定または財務規定等が新たに適用される場合の最初の事業年度は昭和四十二年四月一日(改正法附則第三条第一項の規定により条例(一部事務組合にあつては、規約)で法の規定または財務規定等を適用しないこととした場合には、その適用しないこととした期間の最終日の翌日。以下「法の適用の日」という。)から始まり、昭和四十三年三月三十一日(法の適用の日が昭和四十三年四月一日のものにあつては昭和四十四年三月三十一日)に終わるものとし、法の適用の日の前日の属する会計年度は、当該企業に関する限り同日をもつて終了するものであること(改正令附則第六条、令第四条第一項本文)。
イ アの場合、当該会計年度に属する出納は、法の適用の日の前日をもつて閉鎖し、当該会計年度の決算は、従前の例によつて行なうものであること(改正令附則第六条、令第四条第一項本文)、したがつて、この場合においては、いわゆる出納整理期間は存在せず、同日をもつて当該企業に属するすべての出納は打ち切られ、決算は、証書類とあわせて、出納長または収入役から出納閉鎖後三ケ月以内に長に提出され、長はその決算および証書類を監査委員の審査に付し、その決算を監査委員の意見をつけて次の通常予算を議する会議までに議会の認定に付する等地方自治法の規定による手続がとられるものであること(地方自治法第二百三十三条、同法施行令第百六十六条参照)。
ウ 従前の例により決算が行なわれる場合において法の適用の日の前日の属する会計年度の歳入が当該会計年度の歳出に不足するときは、歳入不足額として決算に計上すること(繰上充用を行なうことができないので、この歳入不足額について補てん説明をする必要はない。)。この場合において、地方自治法第二百三十五条の三第一項の規定により予算内の支出をするため借入れた一時借入金があつて償還することができないときは、その償還することができない金額を限度として借り換えることができるものであり(改正令附則第六条、令第四条第一項ただし書、第二項)、この借り換えた一時借入金は、法の適用の日の属する事業年度内に借入金以外の収入をもつて償還しなければならないものであること(改正令附則第六条、令第四条第三項)。これに対して、歳入歳出差引残額があるときは、その残額は、法の適用による特別会計へ引き継いだ旨を記載すること。なお、この引継金を法の適用の日の属する事業年度の資本的支出の財源として使用しようとする場合には施行規則別表第五号予算様式第四条本文かつこ書中に「引継金」として計上するものであること。
エ 法の適用の日の前日の属する会計年度以前の会計年度に発生した債権または債務に係る未収金または未払金がある場合においては、法の適用の日の属する事業年度に属する債権又は債務として整理するものであること(改正令附則第六条、令第四条第四項)、この場合において、当該未収金または未払金は、法の適用の日現在において作成する開始貸借対照表の資産(未収金)または負債(未払金)として整理するとともに法の適用の日の属する事業年度の予算に一条を設けて処理するものであること。
オ 法の規定の全部または財務規定等が適用される地方公共団体の経営する企業においては、当該企業の資産の適正な減価償却の基礎を確立するため、資産の再評価をしなければならないものであるか(法附則第三項)その再評価は、昭和四十二年四月一日(改正法附則第三条第一項の規定により条例(一部事務組合にあつては、規約)で法の規定または財務規定等を適用しないこととされた企業にあつては、当該企業に対する法の規定または財務規定等の適用の日または当該適用の日以後一年以内に開始する事業年度開始の日のうちいずれかの日。以下この項において同じ。)現在において行なわなければならないものであること(改正令附則第七条)。ただし、昭和四十二年四月一日前において、資産再評価法(昭和二十五年法律第百号)の規定に準じて資産の再評価を行なつた企業がある場合においては、当該地方公共団体の議会の議決を経て、法で定める再評価を行なつたものとみなすことができるものであること(令附則第九項)。
(3) 事務引継に関する事項
ア 地方公共団体の経営する企業について、改正法の施行により、法の規定または財務規定等が新たに適用される場合において、(i)法の規定が適用されるときは、長から管理者への事務の引継(法第九条ただし書の規定により条例で管理者をおかないこととした場合には、不要)および出納その他の会計事務および決算についての出納長または収入役から管理者への事務の引継(法第七条ただし書の規定により条例で管理者を置かないこととした場合には、出納長または収入役から長への事務の引継)が必要となり、財務規定等が適用されるときは、出納その他の会計事務および決算について出納長または収入役から長への事務の引継(法第三十四条の二ただし書の規定により条例で出納長または収入役に出納その他の会計事務および決算の全部または一部を行なわせることとした場合には、その出納長または収入役が行なうこととなる事務については、不要)が必要となるが、この場合における事務の引継は、その必要が生じた日から十日以内にしなければならないものであること(改正令附則第六条、令第七条)。
イ 長から管理者への事務引継、出納長または収入役から管理者または長への事務引継の場合においては、アに述べた手続以外の手続については、地方自治法施行令に規定されている長または出納長若しくは収入役相互間の事務引継の手続に準じて行なうことが適当であること(地方自治法施行令第百二十三条、第百二十五条、第百二十九条参照)。
(4) その他の経過措置
ア 地方公共団体の経営する企業について、改正法の施行により法の規定または財務規定等が新たに適用される場合において、もしも法の規定が適用されるときは、法第十条(企業管理規程)に規定する企業管理規程の制定または法第十四条(事務処理のための組織)に規定する管理者の権限に属する事務を処理させるための必要な組織に関する条例の制定、法第二十四条第二項(予算)に規定する予算の調製および議決その他法の規定の全部の適用について必要な手続を、財務規定等が適用されるときは、法第二十四条第二項(予算)に規定する予算の調製および議決その他財務規定等の適用について必要な手続を、それぞれ改正法の施行の日前においてすることができるものであり、この場合においてこれらの規定に基づき管理者の行なうべき権限は、長が行なうものであること(改正令附則第六条、令第八条)。
イ 法の規定または財務規定等が新たに適用されることに伴い、改正法の施行の際必要となる手続の主なるものは、次のとおりであること。
(ア) 法の規定の全部が新たに適用される場合
i 地方公営企業の設置およびその経営の基本に関する事項について定める条例の制定(法第四条)
ii 管理者を置かず、または二以上の事業を通じて管理者一人を置く場合には、その旨の条例の制定(法第七条)
iii 企業管理規程の制定(法第十条)
(i) 必要な分課の設置に関するもの(法第九条第一号)
(ii) 企業職員の給与、勤務時間その他の勤務条件に関するもの(法第九条第二号)
(iii) 企業の会計事務の処理に関するもの(会計規程、施行規則第一条)
(iv) 入札保証金および契約保証金の率または額(令第二十一条の十四)
(v) その他
iv 管理者の権限に属する事務を処理させるため必要な組織に関する条例には、法第十五条の管理者の補助職員への身分の引継について規定しておくことが適当であること。
v 必要がある場合には、任免についてあらかじめ長の同意を必要とする企業の主要な職員を定める規則の制定(法第十五条第一項ただし書)
vi 二以上の事業を通じて一の特別会計とする場合には、その旨の条例の制定(法第十七条ただし書)
vii 予算の調整および議決(法第二十四条第二項)
viii 企業の業務に係る公金の出納事務の一部を取り扱わせる金融機関の指定(法第二十七条ただし書)
ix 必要がある場合には、予算で定めなければならない重要な資産の取得または処分を定める条例の制定(法第三十三条第二項)
x 必要がある場合には、職員の賠償責任の全部または一部の免除のうち議会の同意を得なければならないものを定める条例の制定(法第三十四条)
xi 企業職員の給与の種類および基準を定める条例の制定(法第三十八条第四項)
xii 地方公務員法第三十六条の規定が適用される企業職員の職の長の指定(法第三十九条第二項)
xiii 必要がある場合には、企業の業務に関する負担附きの寄附または贈与の受領、地方公共団体がその当事者である審査請求その他の不服申立て、訴えの提起、和解、あつせん、調停および仲裁ならびに法律上地方公共団体の義務に属する損害賠償の額の決定のうち議会の議決を経なければならないものを定める条例の制定(法第四十条第二項)
xiv 企業の業務状況を説明する書類に関する条例の制定(法第四十条の二第一項)
xv 企業の資産について再評価を行なつたものとみなす場合には、その旨の議会の議決(令附則第九項)
(イ) 財務規定等が新たに適用される場合
i 地方公営企業の設置およびその経営の基本に関する事項について定める条例の制定(法第四条)
ii 企業出納員および現金取扱員の任命(法第三十四条の二本文、第二十八条第二項)
iii 企業の会計事務の処理の特例に関する規則(会計規程に相当するもの)の制定(法第三十四条の二本文、施行規則第一条)
iv 入札保証金および契約保証金の率または額を定める規則の制定(法第三十四条の二本文、令第二十一条の十四)
v 二以上の事業を通じて一の特別会計とする場合には、その旨の条例の制定(法第十七条ただし書)
vi 予算の調製および議決(法第二十四条第二項)
vii 企業の業務に係る公金の出納事務の一部を取り扱わせる金融機関の指定(法第二十七条ただし書)
viii 必要がある場合には、予算で定めなければならない重要な資産の取得または処分を定める条例の制定(法第三十三条第二項)
ix 必要がある場合には、職員の賠償責任の全部または一部の免除のうち議会の同意を得なければならないものを定める条例の制定(法第三十四条)
x 出納その他の会計事務および決算の事務の全部または一部を出納長または収入役に行なわせる場合には、その旨の条例の制定(法第三十四条の二ただし書)
xi 必要がある場合には、企業の業務に関する負担附きの寄附または贈与の受領、地方公共団体がその当事者である審査請求その他の不服申立て、訴えの提起、和解、あつせん、調停および仲裁ならびに法律上地方公共団体の義務に属する損害賠償の額の決定のうち議会の議決を経なければならないものを定める条例の制定(法第四十条第二項)
xii 企業の業務状況を説明する書類に関する条例の制定(法第四十条の二第一項)
xiii 企業の資産について再評価を行なつたものとみなす場合には、その旨の議会の議決(令附則第九項)
(5) 法の適用についての自治大臣への報告
地方公営企業を経営する地方公共団体または地方公営企業以外の企業を経営する地方公共団体が法の規定の全部または財務規定等の適用を受けることとなつた場合においては、遅滞なくそれぞれその旨を自治大臣に報告しなければならないものであること(改正令附則第六条、令第二十八条第二項前段)。この場合の報告は、都道府県または指定都市(都道府県または指定都市の加入する一部事務組合を含む)にあつては直接自治大臣に、その他の地方公共団体にあつては都道府県知事を経由して自治大臣に提出するものであり、その報告書の様式は施行規則別表第二十一号に定められたものであること(改正令附則第六条、令第二十八条第二項後段、第三項)。