○地方公営企業法の一部を改正する法律等の施行についての依命通達

昭和三六年六月二九日

自治乙企発第二号

今般、地方公共団体の経営する企業について、その財政的基礎の充実をはかるとともに、企業を経営する一部事務組合に関する特例を定め、もつてその経営の円滑化をはかるため、地方公営企業法の一部を改正する法律(昭和三十六年法律第九十一号。以下「一部改正法」という。別紙第一)が五月二十二日、地方公営企業法施行令の一部を改正する政令(昭和三十六年政令第百八十一号。以下「政令第百八十一号」という。別紙第二)が六月六日それぞれ制定公布され、また、交通事業の料金徴収事務の委任の範囲をひろげるため、地方公営企業法施行令の一部を改正する政令(昭和三十六年政令第九十一号。以下「政令第九十一号」という。別紙第三)が四月一日制定公布された。

これらの改正の要旨及び運営上留意すべき点は下記のとおりであるから、充分御了知のうえ、制度の運営に遺憾なきを期せられたく、命により通達する。

なお、本通達の趣旨は、すみやかに、管下市町村及び企業を経営する一部事務組合に通知のうえ、その徹底をはかられたい。

おつて、昭和二十七年九月二十九日自乙第二四五号自治庁次長通達「地方公営企業法及び同法施行に関する命令の実施についての依命通達」の一部を別紙第四により改正するからその運営について充分留意されたい。

第一 地方公営企業の特別会計に関する事項

地方公共団体は、その経営する地方公営企業の財政的基礎の充実をはかるため、地方公営企業の特別会計に必要な出資を行なうことができるものとしたこと(一部改正法による改正後の地方公営企業法(昭和二十七年法律第二百九十二号)(以下「新法」という。)第十七条の二)。地方公営企業は、公共性の確保のために経済性を発揮して独立採算を建前とした運営を行ない、経営の健全な発展をはかるとともに、住民に対するサービスを確保するための適切な施設の建設改良を積極的に推進しなければならないものであり、これら建設改良に要する経費は、主として地方債資金をもつてまかなわれることはいうまでもないが、地方公共団体においても、地方公営企業の特別会計における自己資本を充実させることの必要な地方公営企業の多いことにもかんがみ、その企業の開始又は拡張にあたつて出資(一般会計又は他の特別会計からの繰入れによる出資金及び財産等の移管による現物出資をいう。以下本項において同じ。)できる旨を明確に規定したものであること。したがつて、これら出資は、漫然と収益的収支の不足をまかなうためのようなものであつてはならず、あくまでも建設改良費等の資本的支出にあてられるべきものであること。なお、従来、出資金については、法第十八条第一項の規定により一般会計又は他の特別会計から繰り入れ、同条第二項ただし書の規定により繰りもどさない旨の議会の議決を必要としていたのであるが、今後は、新法第十七条の二の規定により繰り入れられる出資金となるので、繰りもどさない旨の議会の議決は必要でないこととなるものであること。

第二 地方公営企業を経営する一部事務組合に関する事項

1 法の目的に関する事項

新たに、法の目的に地方公営企業の経営に関する事務を共同処理する地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百八十四条第一項の規定による一部事務組合(以下「組合」という。)に関する特例を定める旨を加えたこと(新法第一条)。すなわち、従来、組合については、その経営する企業についてのみ法が適用されていたのであるが、当該組合は企業のみを経営することとしている点にかんがみ、組合の組織及び財務についても地方自治法の特例を定め、その運営の円滑化をはかるものとしたこと。

2 組織の特例に関する事項

(1) 組合には、従来、組合管理者のほか、その経営する地方公営企業の経営の責任者として法第七条第一項に規定する管理者(以下「企業管理者」という。)を置くこととする建前とされていたが、その組織の一元化をはかるため、企業管理者と組合管理者を一体化することとして、組合管理者が企業経営に専念することを建前としたこと(新法第三十九条の二第一項及び第二項)。したがつて、この場合においては、組合管理者は、地方公営企業の経営に関し識見を有し、企業管理に充分な能力を有する者であるべきことはいうまでもないこと。なお、法第七条第一項の規定の適用はないので、管理者を置かない旨の条例を制定する必要はないものであること。

(2) 企業管理者を置かないで組合管理者が企業経営に専念することとなる組合においては、組合管理者の地位を安定させる必要があるため、当該組合管理者の任期は、企業管理者について法第十二条の在職期間の保障があると同様の趣旨により、三年を下るものとすることができないものとしたこと(新法第三十九条の二第三項)。したがつて、この場合における任期は、当該組合の規約で、おおむね三年又は四年として定めることが適当であると考えられること。

(3) 法の規定の全部が適用される企業を経営する一部事務組合のうち、次に掲げるものにおいては、当該一部事務組合の管理者の権限に属する事務を処理させるための組織の名称は、その経営する事業内容等を明確に反映させるため、企業庁とすることができるものとしたこと(新法第三十九条の二第四項及び政令第百八十一号による改正後の地方公営企業法施行令(昭和二十七年政令第四百三号)第二十六条の二)。この場合において、企業庁の名称には、当該一部事務組合を組織する地方公共団体又は当該一部事務組合の経営する事業の関係地域及び当該一部事務組合の経営する事業の種類を表わす文字を冠するものとしたこと。

(ア) 法第二条第一項の表の上欄に掲げる事業の経営に関する事務を共同処理する一部事務組合で、当該事業に常時雇用される職員の数がそれぞれ同表の下欄に掲げる数以上のもの

(イ) 法の規定の全部が適用される、交通事業(軌道事業、自動車運送事業及び地方鉄道事業を除く。)又は地方財政法施行令(昭和二十三年政令第二百六十七号)第十二条第二項各号に掲げる事業の経営に関する事務を共同処理する一部事務組合で、当該事業に常時雇用される職員の数が一〇〇人以上のもの

なお、企業庁の名称を使用しようとするときは、一部事務組合の名称のほか、当該企業庁の名称を当該一部事務組合の規約中にたとえば何々水道企業庁のように具体的に掲げることが適当であるが、この場合における何々には、当該一部事務組合を組織する地方公共団体又は当該一部事務組合の経営する事業の関係地域が看取できるようにすること。

(4) 従来、組合においては監査委員は任意設置とされていたが、組合における企業の適切な運営を期するため、これを必置とするものとしたこと(新法第三十九条の二第五項)。したがつて、監査委員に関して当該組合の規約で定めることが必要となるものであるが、この場合、その定数は原則として二人以内とし、企業の経営管理又は会計事務に関して識見を有する者の中から選任するようにすることが適当であること。なお、必ずしも常勤とする必要はなく、また、当該組合を組織する地方公共団体の監査委員をして兼務せしめることも差し支えないものであること。

3 財務の特例に関する事項

(1) 組合においては、地方公営企業の財務と認められない組合のすべての財務、たとえば組合の議会及び監査委員等に関する財務についても、財務の一元化をはかるため、法の財務に関する規定(第十七条から第三十五条まで並びに附則第二項及び附則第三項)の適用があるものとしたこと(新法第三十九条の三第一項)。したがつて、組合の財務はすべて法で定める発生主義に基づく企業会計方式によつて行なうことになるとともに、組合の出納その他の会計事務は、組合管理者が行なうこととなるので出納長又は収入役は置かないこととなること。また、この場合においては、これら地方公営企業の財務と認められない組合の財務も、地方公営企業の会計においてあわせて経理されることとなるが、組合において二以上の地方公営企業を経営し、それぞれ特別会計を設けて経理している場合にあつては、それぞれの特別会計に、これらの地方公営企業に専属する収益又は費用の総額によつてあん分して含ませるか、又はこれら特別会計のうち収益又は費用の総額のもつとも大きい特別会計の中に含ませて経理するか、いずれか一の方法によることが適当であると考えられること。

(2) 組合を組織する地方公共団体は、当該組合の財政的基礎を確立するため、必要な出資(出資金及び現物出資をいう。以下同じ。)を行なうものとするものとしたこと(新法第三十九条の三第二項)。すなわち、組合において企業活動をするためには財政的基礎が必要であることはいうまでもないが、本来組合については、これを組織する地方公共団体と別人格となるから、財政的基礎を確立するため、これを法第十七条の二とは別に規定し、組合設立の場合及び組合において新たに建設改良工事を行なう場合において必要な出資を行なうことを義務づけたものであること。出資は、建設改良(当該建設改良工事のため企業債を発行した場合における当該企業債の元金償還を含む。)に対するものであるから、漫然と収益的収支の不足をまかなうためのようなものであつてはならないこと。なお、組合を組織する地方公共団体における出資の割合等については、あらかじめ規約で定める必要があるものであること。

(3) 法第二条第二項又は第三項の規定により法の財務規定等のみが適用される企業の経営に関する事務を共同処理する一部事業組合についても、上記(1)及び(2)の財務に関する特例を準用するものとしたこと(新法第三十九条の三第三項)

第三 交通事業の料金の徴収委任に関する事項

交通事業の料金の徴収事務を委任することのできる者の範囲について、交通事業の利用者の利便をはかるため、新たに、旅行あつ旋業を経営する法人を加えるものとしたこと(政令第九十一号による改正後の地方公営企業法施行令第十六条の二第一項)。この場合においても、もちろん旅行あつ旋業を経営する法人のうち、交通事業の料金徴収の事務を行なうことにより、当該交通事業の経済性の発揮及び住民の便益の増進に寄与するに足る充分な能力を有すると認められるものに限るものであり、委任するに当つては、地方公営企業法施行令第十六条の二第二項の規定に基づき当該地方公共団体の長の同意を得たうえ、自治大臣又は都道府県知事の承認を受けなければならないことはいうまでもないこと。

第四 法令の施行期日に関する事項

1 政令第九十一号は、公布の日(昭和三十六年四月一日)から施行されたものであること。

2 一部改正は、公布の日から三月を経過した日(昭和三十六年八月二十二日)から施行されるものであるが、新法第三十九条の三第一項(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定は、昭和三十七年度の事業年度から適用することとされるものであること。

3 政令第百八十一号は、一部改正法の施行の日(昭和三十六年八月二十二日)から施行されるものであること。

別紙 (省略)

地方公営企業法の一部を改正する法律等の施行についての依命通達

昭和36年6月29日 自治乙企発第2号

(昭和36年6月29日施行)

体系情報
(附) 水道事業及び工業用水道事業関係法令/第1 地方公営企業関係法令
沿革情報
昭和36年6月29日 自治乙企発第2号