○地方公営企業法の一部を改正する法律等の施行についての依命通達
昭和三五年六月一四日
自乙企発第一号
今般、地方公共団体の経営する企業について、その本来の目的である公共の福祉を増進するよう運営の合理化をはかり、あわせて企業の経済性を発揮せしめる趣旨により地方公営企業法の適用を受ける企業の範囲をひろげるとともに、地方公営企業の運営の現況にかんがみ、その能率的、かつ、合理的経営を助長するために、地方公営企業法の一部を改正する法律(昭和三十五年法律第七十号。以下「一部改正法」という。別紙第一)が四月三十日制定公布され、あわせて、地方公営企業法施行令の一部を改正する政令(昭和三十五年政令第百五十八号。以下「一部改正令」という。別紙第二)、地方公営企業法施行規則の一部を改正する総理府令(昭和三十五年総理府令第三十一号。以下「一部改正規則」という。別紙第三)及び地方公営企業資産再評価規則の一部を改正する総理府令(昭和三十五年総理府令第三十二号。以下「一部改正再評価規則」という。別紙第四)がそれぞれ六月十四日をもつて制定公布された。これらの改正の要旨及び運営上留意すべき諸点は下記のとおりであるから、充分御了知のうえ、制度の運営に遺憾なきを期せられたく、命により通達する。
なお、本通達の趣旨は、すみやかに、管下市町村にも通知のうえ、その徹底をはかられたい。
おつて、昭和二十七年九月二十九日自乙第二百四十五号自治庁次長通達「地方公営企業法及び同法施行に関する命令の実施についての依命通達」の一部を別紙第五により改正するとともに、昭和三十年自乙理発第三十九号自治庁次長通達「地方公営企業法及び同法施行に関する命令の一部改正について」は廃止するから、その運営について充分留意されたい。
記
第一 地方公営企業法の適用を受ける企業の範囲に関する事項
1 従来地方公営企業法(以下「法」という。)において、工業用水準事業は水道事業に含まれていたが、これを分離し、地方公共団体の経営する工業用水道事業のうち常時雇用される職員の数(以下「職員数」という。)が三〇人以上のものについては、法の規定の全部を適用するものとしたこと(一部改正法による改正後の法(以下「新法」という。)第二条第一項。)
2 法の規定の全部の適用を受ける企業(水道事業、工業用水道事業、軌道事業、自動車運送事業、地方鉄道事業、電気事業及びガス事業(以下「法定事業」という。)で、職員数がそれぞれ水道事業にあつては五〇人、工業用水道事業、電気事業及びガス事業にあつては三〇人並びに軌道事業、自動車運送事業及び地方鉄道事業にあつては一〇〇人(以下これらを「法定数」という。)以上のもの)のほか、法定事業であつて職員数が法定数未満二〇人以上のものについては、その合理的、かつ、能率的な運営を助長するため、新法第三条から第六条まで、第十七条から第三十五条まで、第四十条から第四十一条まで及び附則第二項から附則第四項までの規定(以下「財務規定等」という。)を適用するものとしたこと(新法第二条第二項)。
3 法の規定の全部が当然に適用されることとなる企業のほか、地方公共団体は、条例の定めるところにより、財務規定等が当然に適用される企業について財務規定等を除く法の規定を、法定事業であつて職員数が二〇人未満のもの及び地方財政施行令第十二条第二項各号に掲げる事業その他主としてその経費を当該企業の経営に伴う収入をもつてあてるものについて法の規定の全部又は財務規定等を適用することができるものとしたこと(新法第二条第三項及び一部改正令による改正後の地方公営企業法施行令(以下「新令」という。第一条)。なお、これらの事業は合理的な運営をはかるために、その実情を勘案のうえ、事情の許すかぎり、財務規定等を適用して企業会計方式によつて経理することが望ましいものと考えられること。
4 新たに法の規定を適用し又は適用しないこととなる場合等における経過措置について所要の改正を行なつたこと(新令第二条から第八条まで)。
(1) 法定事業でその職員数が二〇人未満のもののうち、条例で法の規定の全部又は財務規定等を適用していないものの職員数が法定数以上又は法定数未満で、二〇人以上となつた場合においては、条例で、六月をこえない範囲内において、法の規定又は財務規定等を適用する日を定めなければならないものであること(新令第二条第一項)。
(2) 法定事業で職員数が二〇人未満のもののうち、条例で財務規定等を適用しているものが法定数以上となつた場合には、条例で、六月をこえない範囲内において、財務規定等を除く法の規定を適用すべき日を定めなければならないものであること(新令第二条第二項)。
(3) 法定事業で職員数が二〇人未満のもののうち、条例で法の規定の全部を適用しているものの職員数が法定数未満で二〇人以上となつた場合には、当該条例は、当該事業について財務規定等を除く法の規定を適用することを定めた条例とみなすものであること(新令第二条第三項)。
(4) 法定事業でその職員数が二〇人以上法定数未満のもののうち、条例で財務規定等を除く法の規定を適用していないものの職員数が法定数以上となつた場合においては、条例で、六月をこえない範囲内において、財務規定等を除く法の規定を適用する日を定めなければならないものであること(新令第三条)。
(5) 法定事業で職員数が法定数以上のものの職員数が法定数未満で二〇人以上となつた場合又は二〇人未満となつた場合には、条例で、六月をこえない範囲内において、財務規定等を除く法の規定又は法の規定を適用しないこととする日を定めなければならないものであること。ただし、この場合において、なお、引き続き財務規定等を除く法の規定、法の規定の全部又は財務規定等を適用しようとするときは、条例で、その旨及びその適用すべき日(財務規定等を適用しようとする場合に限る。)を定めなければならないものであること(新令第五条第一項及び第二項)。
(6) 法定事業でその職員数が二〇人以上法定数未満のもので、条例で財務規定等を除く法の規定を適用していないものの職員数が二〇人未満となつた場合には、条例で、六月をこえない範囲内において、当該事業について財務規定等を適用しないこととする日を定めなければならないものであること。ただし、なお、引き続き財務規定等を適用しようとするときは、条例で、その旨を定めなければならないものであること(新令第五条第三項)。
(7) 法定事業でその職員数が二〇人以上法定数未満のもので、条例で財務規定等を除く法の規定を適用しているものの職員数が二〇人未満となつた場合には条例で、六月をこえない範囲内において、法の規定の全部を適用しないこととする日を定めなければならないものであること。この場合において、なお、引き続き法の規定の全部又は財務規定等を適用しようとするときは、条例で、その旨及びその適用すべき日(財務規定等を適用しようとする場合に限る。)を定めなければならないものであること(新令第五条第四項)。
第二 組織に関する事項
地方公営企業においては、原則として、事業ごとに管理者をおくこととされ、条例で定める場合に限つて管理者をおかず、又は二以上の事業を通じて一人の管理者をおくことができることとされているが、各事業の総合的な経営に資するため、水道事業及び工業用水道事業をあわせて経営する場合又は軌道事業、自動車運送事業及び地方鉄道事業のうち二以上の事業をあわせて経営する場合においては、それぞれのあわせて経営する事業を通じて一人の管理者をおくことを常例とするものとしたこと(新法第七条第一項なお書)。なお、この場合においても、条例によつて定めることが必要であること。
第三 財務に関する事項
1 会計の原則に関する事項
地方公営企業の会計原則としては、従来真実性の原則、正規の簿記の原則、資本取引と損益取引の区分の原則、明りよう性の原則、及び継続性の原則を掲げているが、新たに事業の財政に不利な影響を及ぼすおそれのある事態にそなえて健全な会計処理をしなければならない旨のいわゆる安全性の原則を加えたこと(新令第九条第六項)。この原則により、その経営の安全性を確保するため、新たに地方公営企業について修繕引立金及び退職給与引当金の計上をみとめることとし、勘定科目表に所要の改正を行なつたのであるが、客観的に妥当な基準に従つて適正な運用が行なわれるよう留意されたいこと(一部改正規則による改正後の地方公営企業法施行規則(以下「新規則」という。)別表第一号)。
2 予算に関する事項
(1) 地方公営企業の予算の実施にあたつて、従来現金支出を伴わない経費のうち一部(固定資産除却損及びたな卸資産減耗損)について予算で定めた額をこえて支出することができることとされていたが、これを現金支出を伴わない経費の全部について予算で定めた額をこえて支出することができることに改めたこと(新令第十八条第二項ただし書)。ただし、このことは、予算をできる限り正確な見積りによつて計上すべきことを前提としているのであつて、なおやむを得ない事情による場合に限り予算超過の支出を認める趣旨のものであることはいうまでもないこと。
(2) 地方公営企業についてその経費をもつて支弁する事件で数年を期してその経費を支出すべきものは、議会の議決を経て、その年期間各年度の支出額を定め、継続費として執行することができるものであるが(地方自治法第二百三十六条)、この継続費の毎事業年度の支出予定額のうち、当該事業年度内に支払義務が生じなかつたものがある場合においては、管理者は、その額を継続年度の終わりまで逓次繰り越して使用することができるものであり、この場合においては、管理者は、翌年度の五月三十一日までに継続費繰越計算書をもつて長に報告するものとし、報告を受けた地方公共団体の長は、次の会議においてその旨を議会に報告しなければならない旨の規定を設け、地方自治法施行令第百五十六条の特例を定めたこと(新令第十八条の二)。なお、この場合における継続費繰越計算書の様式及び地方公営企業に係る継続費年期及び支出方法書の様式については別に定めたものであること(新規則別表第八号の二及び別表第八号の三)。
3 出納に関する事項
地方公営企業の業務に係る出納は、管理者が行なうものであるが、業務の執行上必要がある場合においては、地方公営企業の業務に係る現金を保管するものとして地方公共団体の長が指定した金融機関に、現金の出納事務の一部を取り扱わせることができるものとしたこと(新法第二十七条第一項ただし書)。
4 決算に関する事項
(1) 地方公営企業の決算はおそくとも年度終了後三月を経過した後において最初に招集される定例会である議会の認定に付さなければならないものとしたこと(新法第三十条第二項)。
(2) 二以上の地方公営企業を通じて一の特別会計をもつて経理している場合における各地方公営企業に関連する収益又は費用は、これをあん分してそれぞれ当該地方公営企業の収益又は費用として整理しなければならないものとされ、そのあん分の基準としては、各地方公営企業に専属する収益又は費用の総額によることとされていたが、このほか、その収益又は費用の性質に応じて適当と思われる基準をとることができるものとしたこと(新令第二十条)。なお、これらの基準としては、たとえば厚生福利費等人的経費については各事業の専属人件費の総額又は専属職員数の割合等が予想されるものであること。
5 自己資本金への組入れに関する事項
地方公営企業会計に他会計から繰り入れられた繰入金は、原則として当該繰り入れた会計に繰りもどすものであり、繰入金のうち建設改良の資金にあてるものは、借入資本金として整理するものとされているが、この繰入金を地方公営企業が経営の結果生じた利益を処分して積み立てた任意積立金を使用して繰りもどしたときは、建設改良のために借り入れた企業債を減債積立金をもつて償還した場合と同様、その使用した積立金の額に相当する金額を自己資本金に組み入れることとするとともに、当該繰入金が議会の議決により繰りもどさなくてもよいとされたときは、その繰りもどさないこととした繰入金の額に相当する金額を自己資本金に組み入れるものとしたこと(新令第二十五条第三項)。
6 計理状況の報告に関する事項
管理者が当該地方公共団体の長に対して行なう当該企業の計理状況の報告期限について翌月十日を翌月二十日に改めたこと(新法第三十一条)。
7 減価償却に関する事項
(1) 地方公営企業の経営の健全性を確保するために必要がある場合においては、直接その営業の用に供する固定資産の減価償却について、その資産の法定の耐用年数に基づいて計算される各事業年度の減価償却額に、一〇〇分の五〇をこえない範囲内で予算で定めた率を当該償却額に乗じて得た金額を加えた金額をもつて、各事業年度の減価償却額とすることができることとしたこと(新規則第八条第二項及び第九条第二項)。この場合において、通常の償却額をこえる額を算出する際に用いる乗率は当該企業の経営の実情及び将来の施設の更新、改良等の見込を勘案の上定めるものとすること。
(2) 有形固定資産の減価償却は、その資産の価額が帳簿原価の一割(以下「残存価額」という。)に達するまで行なうこととされているのであるが、鉄骨鉄筋コンクリート造等の建物、構築物及び装置については、その資産の性質上、残存価額に達した後においてもなお使用に供されている場合においては、その資産が使用不能となるものと認められる年度までの間においてその価額が一円に達するまで減価償却を行なうことができるものとしたこと(新規則第八条第三項)。なお、すでに再評価を行なつた資産のうち、これらの有形固定資産に相当するものについても、これに準じて帳簿価額が一円に達するまで減価償却を行なうことができるものとしたこと(一部改正再評価規則による改正後の地方公営企業資産再評価規則(以下「新再評価規則」という。)第十二条第二項ただし書)。
8 資産の再評価に関する事項
(1) 地方公営企業以外の企業が法の規定の全部又は財務規定等を適用することとなつた場合又は新たに地方公営企業となつたものについて法の規定を適用することとなつた場合においても、資産の適正な減価償却の基礎を確立するため資産の再評価を行なわなければならないものであるが(新令附則第十一項)、この場合における再評価額の基準は、その資産の取得価額に地方公営企業資産再評価規則別表第一、第二及び第三に定められた率を乗じて算出した金額から、当該資産について昭和二十七年四月一日以後再評価日までの間において、減価償却をしたものとした場合における減価償却額を控除した金額とすることとしたものであること(新再評価規則第四条の四第一項)。
(2) 再評価を行なつた資産について減価償却を行なう場合、各事業年度の減価償却額を算出する際に用いる当該資産の耐用年数は、地方公営企業法施行規則別表第二号及び第三号に定める耐用年数から、昭和二十七年度から再評価日の属する年度の直前の年度までの年数を差し引いた年数とすることとしたこと(新再評価規則第十二条第三項)。
9 財務関係様式の改正
地方公営企業の運営の実情に応じ、決算報告書、試算表等、財務に関する諸表の様式につき所要の改正を行なつたこと(新規則別表第一号、別表第二号、別表第七号、別表第十号、別表第十二号、別表第十四号及び別表第十六号から別表第二十一号まで)。
第四 他の法律の改正に関する事項
法の改正により法定事業として工業用水道事業が水道事業から分離されるとともに、法定事業で職員数が法定数未満二〇人以上のものに財務規定等を適用するものとしたことに伴い、地方財政再建促進特別措置法及び地方公営企業労働関係法の所要の規定に改正を行なつたものであること(一部改正法附則第四項及び第五項)。
第五 法令の施行期日及び施行の際の経過措置
1 施行期日
(1) 一般改正法、一部改正令、一部改正規則及び一部改正再評価規則は、公布の日から施行されたが、これらの規定のうち次に掲げるものは、昭和三十六年四月一日から施行されるものであること。
イ 一部改正法……法第二条の改正規定及び新法第三十四条の二の規定並びに附則第四項及び附則第五項の規定。
ロ 一部改正令……地方公営企業法施行令第一条から第八条まで、第二十八条及び附則第十一項の改正規定並びに附則第六項の規定
ハ 一部改正規則……地方公営企業法施行規則第二条の三を削る規定
(2) 今回の改正法令の適用に関しては、次のような特例規定が設けられていること。
イ 一部改正法
一部改正法の施行により、職員数が五〇人未満二〇人以上の水道事業又は職員数が三〇人未満二〇人以上の工業用水道事業については財務規定等が昭和三十六年四月一日から適用されることとなるが(新法第二条第二項及び一部改正法附則第一項)、職員数が三〇人未満二〇人以上の水道事業又は工業用水道事業を経営する地方公共団体は、あらかじめ条例で定める場合においては、昭和三十七年三月三十一日までの間は、当該事業に財務規定等を適用しないことができる特例措置が認められていること(一部改正法附則第二項)。この特例措置は、小規模の水道事業又は工業用水道事業について、昭和三十六年四月一日までに財務規定等の適用に係る所要の準備が終わらないものがある場合を考慮して定められたものであるから、これらの事業にあつても、所要の準備を完了する向については、可能な限り昭和三十六年四月一日から適用されるようされたいこと。
ロ 一部改正令
新令第十八条(予算の実施)の規定は、昭和三十六年度分から適用されるものであること(一部改正令附則第二項)。
ハ 一部改正規則
(イ) 新規則別表第十七号(固定資産明細書様式)及び別表第十八号(企業債明細書様式)は、昭和三十五年度の決算から、新規則第八条第二項及び第三項並びに第九条第二項の規定(有形固定資産の減価償却額並びに無形固定資産の減価償却額)は昭和三十六年度分の減価償却から、新規則別表第一号(勘定科目表)、別表第二号(耐用年数)、別表第十四号(貸借対照表様式)、別表第十九号(試算表様式)及び別表第二十号(資金予算表様式)は昭和三十六年度分に係るものから、新規則別表第十号(決算報告書様式)は昭和三十六年度の決算からそれぞれ適用されるものであること(一部改正規則附則第二項)
(ロ) 新規則第八条第三項の規定は、一部改正規則(同規則附則第一項ただし書に係る分を除く。)の施行の日前においてすでに残存価額に達した有形固定資産についても適用するものとし、この場合においては、昭和三十六年度から行なうことができることとしたものであること(一部改正規則附則第三項)。
2 一部改正法施行の際新たに法の規定が適用されるものに係る経過措置
(1) 一般的事項
一部改正法の施行の際(同法附則第二項の規定により、条例でその経営する事業に財務規定等を昭和三十七年三月三十一日までの間適用しないこととした地方公共団体については、当該事業に対する財務規定等の適用の際。以下同じ。)新たに法の規定又は財務規定等が適用される企業の予算及び決算並びに資産再評価その他当該企業の経営に関し必要な経過措置については、新令第四条(会計年度及び事業年度の特例)、第七条(事務引継)、第八条(条例制定等の事前行為)、第二十八条第二項(内閣総理大臣への報告)及び附則第五項から第十項(資産の再評価)までの規定が準用されるものであること(一部改正令附則第四項及び第五項)。
(2) 財務に関する事項
イ 地方公共団体の経営する企業について、一部改正法の施行により法の規定又は財務規定等が新たに適用される場合の最初の事業年度は、昭和三十六年四月一日(一部改正法附則第二項の規定により条例で財務規定等を適用しないこととした場合には、その適用しないこととした期間の最終日の翌日、以下「法の適用の日」という。)から始まり、昭和三十七年三月三十一日(法の適用の日が昭和三十七年四月一日であるものにあつては、昭和三十八年三月三十一日)に終るものとし、法の適用の日の前日の属する会計年度は、当該企業に関する限り同日をもつて終了するものであること(一部改正令附則第四項及び新令第四条第一項本文前段)。
ロ この場合、当該会計年度に属する出納は、その日をもつて閉鎖し、当該会計年度の決算は、従前の例によつて行なうものであること(一部改正令附則第四項及び新令第四条第一項本文後段)。したがつて、この場合においては、いわゆる出納整理期間は存在せず、同日をもつて当該企業に属するすべての出納は打ち切られ、決算は、証書類とあわせて、出納長又は収入役から出納閉鎖後三月以内に長に提出され、長は、その決算及び証書類を監査委員の審査に付し、その意見をつけて次の通常予算を議する会議までに議会の認定に付する等の地方自治法の規定による手続がとられることとなること。なお、法の適用を受ける事業に関する会計が一般会計又は法の適用を受けない事務とあわせて特別会計によつて経理されている場合においては、当該一般会計又は特別会計のうち法の適用を受ける事業に関する部分についてのみ会計年度が終了し、決算が行なわれるものであること。
ハ 従前の例により決算が行なわれる場合において、法の適用の日の前日の属する会計年度の歳入が当該会計年度の歳出に不足するときは、歳入不足額として決算に計上し(繰上充用を行なうことができないので、この歳入不足額について補てん説明をする必要はない。)この場合において地方自治法第二百二十七条の規定により予算内の支出をするために借り入れた一時借入金があつて償還することができないときは、その償還することができない金額を限度として借り換えることができるものであり、(一部改正令附則第四項並びに新令第四条第一項ただし書及び第四条第二項)。この借り換えた一時借入金は、法の適用の日の属する事業年度内に借入金以外の収入をもつて償還しなければならないものであること(一部改正令附則第四項及び新令第四条第三項)。これに対して従前の例により決算が行なわれる場合において歳入歳出差引残額があるときは、歳入歳出差引残額は、法の適用に伴い、同法の規定による特別会計へ引き継いだ旨を記載すること。なお、この引継金を適用の日の属する事業年度の資本的支出の財源として使用しようとする場合に新規則別表第五号予算様式第三条本文かつこ書中に「引継金」として計上すること。
ニ 法の適用の日の前日の属する会計年度以前の会計年度に発生した債権又は債務に係る未収金又は未払金がある場合においては、法の適用の日の属する事業年度に属する債権又は債務として整理するものであること(一部改正令附則第四項及び新令第四条第四項)。この場合において、当該未収金又は未払金は、法の適用の日現在において作成する開始貸借対照表の資産(未収金)又は負債(未払金)として整理するとともに、予算に一条を設けて処理することが適当であること。
ホ 法の規定の全部又は財務規定等が適用される地方公共団体の経営する企業においては、当該企業の資産の適正な減価償却の基礎を確立するため、資産の再評価をしなければならないものであるが、(法附則第三項)。この再評価は、昭和三十六年四月一日(一部改正法附則第二項の規定により条例で財務規定等を適用しないこととされた事業については、当該事業に対する財務規定等の適用の日又は当該日以後一年以内に開始する事業年度開始の日のうちいずれかの日)現在において行なわなければならないこと(一部改正令附則第五項)。ただし、昭和三十六年四月一日前において、資産再評価法(昭和二十五年法律第百号)の規定に準じて資産の再評価を行なつた企業がある場合においては、当該地方公共団体の議会の議決を経て、法で定める再評価を行なつたものとみなすことができること(新令附則第九項)。
(3) 事務引継に関する事項
イ 地方公共団体の経営する企業について、一部改正法の施行により、法の規定又は財務規定等が新たに適用される場合、①法の規定が適用されるときは、長から管理者への事務の引継(法第七条ただし書の規定により条例で管理者を置かないこととした場合には不要)及び出納その他の会計事務についての出納長又は収入役から管理者への事務の引継(法第七条ただし書の規定により条例で管理者を置かないこととした場合には出納長又は収入役から長への事務の引継)が必要となり、②財務規定等が適用されるときは、出納その他の会計事務について出納長又は収入役から長への事務の引継(法第三十四条の二ただし書の規定により条例で出納長又は収入役に出納その他の会計事務の全部又は一部を行なわせることとした場合には、その出納長又は収入役が行なうこととなる事務については不要)が必要となるが、この場合における事務の引継は、その必要が生じた日から十日以内にしなければならないこと(一部改正令附則第四項及び新令第七条)。
ロ 長から管理者への事務引継、出納長又は収入役から管理者又は長への事務引継の場合においては、イに述べた手続以外の手続については、地方自治法施行令に規定されている長又は出納者若しくは収入役相互間の事務引継の手続に準じて行なうことが適当であること(地方自治法施行令第百二十三条、第百二十五条及び第百二十八条参照)。
(4) その他の経過措置
イ 地方公共団体の経営する企業について、一部改正法の施行により法の規定又は財務規定等が新たに適用される場合において、(1)法の規定が適用されるときは、法第十条(企業管理規程)に規定する企業管理規程の制定、又は法第十四条(事務処理のための組織)に規定する管理者の権限に属する事務を処理させるための必要な組織に関する条例の制定、法第二十四条第一項(予算)に規定する予算の調製及び議決その他法の規定の全部の適用について必要な手続を、(2)財務規定等が適用されるときは、法第二十四条第一項(予算)に規定する予算の調製及び議決その他財務規定等の適用について必要な手続を、それぞれ一部改正法の施行の日前においてすることができるものであり、この場合においてこれらの規定に基づき管理者の行なうべき権限は、長が行なうものであること(一部改正令附則第四項及び新令第八条)。
ロ 法の規定又は財務規定等が新たに適用されることに伴い、一部改正法の施行の際必要となる手続の主なものは、次のとおりであること。
(イ) 法の規定の全部が新たに適用される場合
i 企業の基本計画についての議会の議決(法第四条)
ii 管理者を置かず、又は二以上の事業を通じて管理者一人を置く場合には、その旨の条例の制定(法第七条第一項ただし書)
iii 企業管理規程の制定(法第十条)
(i) 必要な分課の設置に関するもの(法第九条第一号)
(ii) 企業職員の給与、勤務時間その他の勤務条件に関するもの(法第九条第二号)
(iii) 企業の会計事務の処理に関するもの(会計規程―規則第一条)
(iv) その他
iv 管理者の権限に属する事務を処理させるため必要な組織に関する条例の制定(法第十四条)(なお、この組織に関する条例には、法第十五条の管理者の補助職員の任命及び法第二十八条第二項の企業出納員又は現金取扱員の任命についての経過措置をあわせて規定することが適当である。)
v 必要がある場合には、任免についてあらかじめ長の同意を必要とする企業の主要な職員を定める規則の制定(法第十五条第一項ただし書)
vi 二以上の事業を通じて一の特別会計を設ける場合には、その旨の議会の議決(法第十七条ただし書)
vii 企業の料金徴収事務を委任する場合には、長の同意及び自治庁長官又は都道府県知事の承認並びに受任者の帳簿等を検査する職員の身分を示す証票の様式を定める条例の制定(法第二十一条第三項、令第十六条の二第二項及び第六項)
viii 予算の調製及び議決(法第二十四条第一項)
ix 企業の業務に係る現金を預け入れる金融機関の指定及び管理者が自ら保管しうる現金の限度額の決定(法第二十七条第二項)
x 必要がある場合には、取得及び処分について長の承認を受けなければならない重要な資産を定める条例の制定(法第三十三条ただし書)
xi 法第三十四条本文に定める契約の方法以外の契約の方法に関する条例の制定(法第三十四条ただし書)。
xii 企業職員の給与の種類及び基準を定める条例の制定(法第三十八条第三項)
xiii 労働組合を結成し、又はこれに加入することができない職員の範囲を定める条例の制定(地方公営企業労働関係法第五条第二項)
xiv 企業の業務状況を説明する書類に関する条例の制定(法第四十条)
xv 企業の資産について再評価を行なつたものとみなす場合には、その旨の議会の議決(令附則第九項)
(ロ) 財務規定等が新たに適用される場合
i 企業の基本計画について議会の議決(法第四条)
ii 企業出納員及び現金取扱員の任命(法第三十四条の二本文及び第二十八条第二項)
iii 企業の会計事務の処理の特例に関する規則(会計規程に相当するもの)の制定(法第三十四条の二本文及び規則第一条)
iv 二以上の事業を通じて一の特別会計を設ける場合には、その旨の議会の議決(法第十七条ただし書)
v 企業の料金徴収事務を委任する場合には、自治庁長官又は都道府県知事の承認及び受任者の帳簿等を検査する職員の身分を示す証票の様式を定める条例の制定(法第二十一条第三項、令第十六条の二第二項及び第六項)
vi 予算の調製及び議決(法第二十四条第一項)
vii 企業の業務に係る現金を預け入れる金融機関の指定及び長が自ら保管する現金の限度額の決定(法第二十七条第二項)
viii 法第三十四条本文に定める契約の方法以外の契約の方法に関する条例の制定(法第三十四条ただし書)
ix 会計及び決算の事務の全部又は一部を出納長又は収入役に行なわせる場合には、その旨の条例の制定(法第三十四条の二ただし書)
x 企業の業務状況を説明する書類に関する条例の制定(法第四十条)
xi 企業の資産について再評価を行なつたものとみなす場合には、その旨の議会の議決(令附則第九項)
(5) 法の適用についての内閣総理大臣への報告
地方公営企業を経営する地方公共団体又は地方公営企業以外の企業を経営する地方公共団体が法の規定又は財務規定等の適用を受けることとなつた場合においては、遅滞なくその旨を内閣総理大臣に報告しなければならないこと(一部改正令附則第四項及び新令第二十八条第二項前段)。この場合の報告は、都道府県又は五大市(都道府県又は五大市の加入する一部事務組合を含む。)にあつては直接自治庁長官に、その他の地方公共団体にあつては都道府県知事を経由して自治庁長官に提出するものであり(令第二十八条第二項後段及び第二十八条第一項)その報告書の様式は、規則別表第二十一号に定められていること。
3 一部改正法の施行の際すでに法の規定が適用されているものに係る経過措置
(1) 一部改正法の施行の際、現に法定事業でその職員数が法定数未満二〇人以上のものについて、改正前の地方公営企業法施行令(以下「旧令」という。)第一条の規定に基づいて法の規定の全部を適用することを定めている条例は、当該事業について新令第一条第一項の規定に基づいて財務規定等を除く法の規定を適用することを定めた条例とみなされるものであること(一部改正法令附則第六項)。なお一部改正法の施行の際、現に法定事業でその職員数が法定数未満二〇人以上のものについて、旧令第一条の規定に基づいて法の規定の一部を適用することを定めている条例は、当然その効力を失うこととなるので、すみやかに廃止すべきものであること。
(2) 一部改正法の施行の際、現に地方公共団体の経営する企業について旧令第一条の規定に基づいて法の規定の全部又は法の規定の一部を適用することを定めている条例((1)に該当するものを除く。)は、当該企業について新令第一条第二項の規定に基づいて法の規定の全部又は財務規定等を適用することを定めた条例とみなされるものであること。
(3) 今回の法改正により水道事業と工業用水道事業とが法定事業として分離されたが、一部改正法の施行の際、現に水道事業及び工業用水道事業を含めた事業について旧法第二条第一項の規定により地方公営企業として法の規定が当然に適用されている場合において、水道事業又は工業用水道事業の職員数が二〇人以上法定数未満であるときは、当該水道事業又は工業用水道事業に対しては財務規定等を除く法の規定は適用されないこととなるので従前通り適用しようとする場合は、新たに新令第一条第二項の規定に基づいて条例で当該事業について財務規定等を除く法の規定を一部改正法の施行の日から適用する旨を定めなければならないものであり、水道事業又は工業用水道事業の職員数が二〇人未満であるときは、当該水道事業又は工業用水道事業に対しては法の規定は当然には適用されないこととなるので、従前通り適用しようとする場合は新たに新令第一条第二項の規定に基いて条例で当該事業について法の規定の全部を一部改正法の施行の日から適用する旨を定めなければならないものであることに注意すること。
また、一部改正法の施行に伴い、法第七条第一項本文の規定により水道事業及び工業用水道事業ごとに管理者を置かなければならないこととなること。しかしながら、法第七条第一項に水道事業と工業用水道事業をあわせて経営する場合においては当該あわせて経営する事業を通じて管理者一人を置くことを常例とする旨の規定が加えられた趣旨にかんがみ、やむを得ない特別の事情のない限り、同項ただし書の規定に基づき、条例で管理者一人を置くこととすることが適当であると考えられること。
なお、法第十七条本文の規定により水道事業及び工業用水道ごとに特別会計を設けて経理しなければならないこととなることに注意すること。もちろん法第十七条ただし書の規定に基づき、議会の議決を経て水道事業及び工業用水道事業を通じて一の特別会計を設けることができるが、この場合においても、固定資産勘定、損益勘定等は、当該特別会計内において水道事業と工業水道事業とをそれぞれ明確に区分経理すべきものであること。
(4) 一部改正令の施行の日前において旧令第二十四条第四項の規定により積み立てた積立金を使用して借入資本金である繰入金を法第十八条第二項本文の規定により繰りもどし、又は借入資本金である繰入金を同項ただし書の規定により繰りもどさないこととした地方公営企業においては、その使用した積立金又はその繰りもどさないこととした繰入金の額に相当する金額を、昭和三十五年度において、自己資本金に組入れるものとすること(一部改正令附則第三項)。
(5) 新規則第八条第三項の規定により残存価格に達した有形固定資産について更に減価償却を行なうことができることとなつたが、この規定は、一部改正規則の施行の日前において既に残存価額に達した有形固定資産についても、昭和三十六年度から当該固定資産が使用不能となるものと認められる事業年度までの間において、同項の規定により一円まで減価償却ができるものであること(一部改正規則附則第三項)。
別紙 (省略)