○地方公営企業法及び同法施行に関する命令の実施についての依命通達

昭和二七年九月二九日

自乙発第二四五号

今般地方公共団体の経営する企業についてその経済性を発揮するとともに、その本来の目的である公共の福祉の増進を図るため、地方公営企業法が制定公布され(昭和二七年八月一日法律第二九二号)、次いで、これが施行期日に関する政令(昭和二七年九月三日政令第四〇二号)、地方公営企業法施行令(昭和二七年九月三日政令第四〇三号)、地方公営企業法施行規則(昭和二七年九月二九日総理府令第七三号)及び地方公営企業資産再評価規則(昭和二七年九月二九日総理府令第七四号)もまたそれぞれ制定公布されたのであるが、その運営に当つては、左記事項に充分留意の上、地方公営企業の実効を挙げるに万遺憾なきを期せられたい。

なお、管下の各市町村に対してもそれぞれ示達の上その趣旨の周知徹底を図るよう致されたい。右命に依つて通達する。

第一 総則に関する事項

一 本法の目的

本法は、地方公共団体の経営する企業の組織、財務及びこれに従事する職員の身分取扱その他企業の経営の根本基準、企業の経営に関する事務を共同処理する地方自治法の規定による一部事務組合に関する特例並びに企業の財政の再建に関する措置を定め、地方自治の発達に資することを目的としたものであること(法第一条)

二 本法と他の法令との関係

(一) 本法と地方自治法、地方財政法及び地方公務員法との関係は、本法はこれらの法律の特例を定めるものであつて、地方公営企業の経営に関し本法に特別の定めがないものは、すべてこれらの法律によるものであること(法第六条)

(二) 水道法(昭和三二年法律第一七七号)工業用水道事業法(昭和三三年法律第八四号)、軌道法(大正一〇年法律第七六号)、道路運送法(昭和二六年法律第一八三号)、電気事業法(昭和三九年法律第一七〇号)、ガス事業法(昭和二九年法律第五一号)及び医療法(昭和二三年法律第二〇五号)等との関係については、本法には、別にこれらの各事業法令の特例は規定していないから、これらの各事業法令は、地方公営企業についても適用されるものであること。而して、本法に基く、財務関係の取扱もこれらの事業法令に基く財務関係の取扱との間に統一のとれるように措置されていること。

三 本法の適用を受ける企業の範囲

(一) 本法の規定の全部が当然に適用される事業は、地方公共団体の経営する企業のうち、法第二条第一項に掲げる事業(これらに附帯する事業を含む。以下「法定事業」という。)であり、これを本法において「地方公営企業」というものであること(法第二条第一項)

(二) 法定事業は、原則として、水道法、工業用水道事業法、軌道法、道路運送法、地方鉄道法、電気事業法及びガス事業法にいうそれぞれの事業であるが、水道事業には水道法にいう水道用水供給事業を含み、簡易水道事業及び下水道法(昭和三三年法律第七九号)による下水道事業は除かれるものであり、軌道事業には軌道法が準用される無軌条電車事業を含むものであり、地方鉄道事業には、索道事業は除かれるものであること。

(三) 附帯する事業とは、地方公営企業の経営に相当因果関係をもちつつ地方公営企業に附帯して経営される事業をいうものであること。

(四) 本法の規定のうち、第三条から第六条まで、第一七条から第三五条まで、第四〇条から第四一条まで及び附則第二項から附則第四項までの規定(以下「財務規定等」という。)は、地方公共団体の経営する企業のうち、病院事業に当然に適用されるものであること(法第二条第二項)

なお、地方公共団体は、財務規定等が当然に適用される病院事業については、条例(一部事務組合にあつては、規約。以下(八)までにおいて同じ。)で定めるところにより、財務規定等を除く法の規定を条例で定める日から適用することができるものであり、この場合においては、結果的に本法の規定の全部が適用されることとなるものであること(法第二条第三項及び施行令第一条第一項)

(五) 病院事業は、原則として医療法にいう病院の建設及び運営に係る事業であるが、主として一般行政上の目的から経営しているもの、例えば大学附属病院、独立の伝染病院等は、含まないものであること。

(六) 地方公共団体は、法定事業及び病院事業以外の事業で主としてその経費を当該事業の経営に伴う収入をもつて充てるものについて、条例で定めるところにより、法の規定の全部又は財務規定等を条例で定める日から適用することができるものであること(法第二条第三項及び施行令第一条第二項)。この場合「主としてその経費を当該企業の経営に伴う収入をもつて充てるもの」とはその経常的経費の少くとも七〇~八〇%程度を料金等の経営に伴う経常的収入をもつてまかなうことができるものであること。

(七) 本法を条例で適用する方法は、法の規定の全部を適用する方法、財務規定等を適用する方法及び既に適用されている財務規定等に加えて財務規定等を除く法の規定を適用する方法に限られるのであり、法の任意の条項のみを適用したり、法の任意の章を適用したりすることはできないものであること。なお、法定事業以外の事業に条例で本法の規定の全部を適用する場合には、法第三六条及び地方公営企業労働関係法第三条第一項第八号の規定により同法の適用があることとなることに留意すること。

(八) 地方公共団体は、条例で財務規定等を除く法の規定を適用している場合(施行令第一条第一項)又は法の規定の全部若しくは財務規定等を適用している場合(施行令第一条第二項)においては、当該条例を廃止又は改正することにより、法の規定の全部、財務規定等若しくは財務規定等を除く法の規定を適用しないこととし、又は法の規定の全部にかえて財務規定等を適用することとし、若しくは財務規定等にかえて法の規定の全部を適用することとする等条例で法の規定を適用する方法を施行令第一条の各項に定める範囲でそれぞれ変更することができることはいうまでもないこと。

(九) 法第二条第二項の規定により財務規定等が当然に適用される場合又は法第二条第三項の規定により財務規定等が条例(一部事務組合にあつては、規約。)で定めるところにより適用される場合においては、法第七条の規定の適用がないので管理者を設置することはできないが、この管理者が行なうべき権限は、当該地方公共団体の長が行なうものであること(法第三四条の二本文)。ただし、管理者の権限のうち、当該企業の出納その他の会計事務及び決算に係るものについては、条例で定めるところにより、その全部又は一部を当該地方公共団体の出納長又は収入役に行なわせることができるものであること(法第三四条の二ただし書)。この場合において、出納その他の会計事務とは、法第二七条に規定する出納その他の会計事務をいい、決算に係る事務とは、法第三〇条に規定する決算の事務をいうものであり、その一部とは、出納その他の会計事務若しくは決算の事務のうちいずれかの事務又はこれらの事務の一部をいうものであるが、出納長又は収入役に行なわせる事務の範囲は、条例で明確に規定すべきものであること。

(一〇) 法の施行の日後において地方公共団体の経営する地方公営企業以外の企業について財務規定等を除く法の規定、法の規定の全部若しくは財務規定等を適用することとなつた場合又は地方公営企業について法の規定を適用することとなつた場合の経過措置及び地方公営企業又は地方公営企業以外の企業について法の規定又は財務規定等を除く法の規定、法の規定の全部若しくは財務規定等の適用がないこととなる場合の経過措置については、施行令第四条、第六条から第八条まで、第二八条第二項及び施行令附則第一一項にそれぞれ規定されているものであること。

四 経営の基本原則

(一) 地方公営企業は、常に企業の経済性を発揮するとともに、その本来の目的である公共の福祉を増進するように経営されるべきことを企業経営の基本原則として定めたこと(法第一条、第三条及び第五条)

(二) 企業の経済性とは、企業一般に通ずる経営原則としての合理性と能率性とを主として指すものであること。

五 地方公営企業の設置

地方公共団体は、地方公営企業の設置及びその経営の基本に関する事項について、条例で定めなければならないものであること(法第四条)。経営の基本に関する事項とは、水道事業に例をとれば、経営の基本方針及び給水区域、給水人口、給水量その他事業の規模に関する事項等であり、これらの事項を条例で定めることによつて地方公営企業経営の大綱が定まり、その大綱に即して毎事業年度の予算が作成されるものであり、管理者の業務執行の基本となるものであること。

なお、公の施設としての性格を有する地方公営企業については、この条例が設けられるので、別に地方自治法第二四四条の二第一項の規定に基づく条例を設ける必要はないものであること。

六 国の配慮

公共の福祉の増進を本来の目的とする地方公営企業の性格にかんがみ、国の行政機関の長は地方公営企業の業務に関する許認可事務その他の事務の執行にあたつては、地方公営企業の健全な運営が図られるように迅速かつ適切な措置を講ずる等配慮するものとされていること(法第五条の二)

第二 組織に関する事項

一 管理者の設置

(一)

1 地方公営企業の合理的能率的運営を図るため、地方公営企業には専任の管理者を置かなければならないものであること(法第七条本文。)ただし、次に掲げる事業以外の事業については、企業の規模及び経営の実情等に応じて、条例で定めるところにより管理者を置かないことができるものであること。なお、次に掲げる事業であつても新たに設置された普通地方公共団体の経営するものについては、当該普通地方公共団体の長が選挙されるまでの間に限り、条例で定めるところにより管理者を置かないことができるものであること(法第七条ただし書及び施行令第八条の二)

(1) 水道事業(簡易水道事業を除く。)で、常時雇用される職員の数が二〇〇人以上であり、かつ、給水戸数が五万戸(水道用水供給事業にあつては、給水能力が一日二〇万立方メートル)以上であるもの

(2) 工業用水道事業で、常時雇用される職員の数が一〇〇人以上であり、かつ、給水能力が一日五〇万立方メートル以上であるもの

(3) 軌道事業、自動車運送事業又は地方鉄道事業で、これらの事業を通じて、常時雇用される職員の数が二〇〇人以上であり、かつ、事業の用に供する車両の数が一五〇両以上であるもの

(4) 電気事業で、常時雇用される職員の数が一〇〇人以上であり、かつ、発電所の最大出力の合計が五万キロワット以上であるもの

(5) ガス事業で、常時雇用される職員の数が一〇〇人以上であり、かつ、供給戸数が二万戸以上であるもの

2 1に掲げる事業の範囲については、次の点に留意する必要があること。

(1) いずれも職員数及び施設の規模の両方の要件を定めており、この一方の要件を欠くときは、管理者を必置とする企業にはならないものであること。

(2) 常時雇用される職員とは、臨時の必要のために雇用される職員を除き、当該事業の運営に当たらせるため雇用されている職員をいうものであり、たとえ名目は臨時職員であつても事実上常時雇用になつているようなものは、常時雇用される職員の数に含ませるべきものであること。したがつて、常時雇用される職員の数は、条例で定める職員の定数とは必ずしも一致するものではなく、雇用の実態によつて判断し算定すべきものであること。

(3) 水道事業の「給水戸数」は現に水を供給している戸数によるものであり、水道用水供給事業及び工事用水道事業の「給水能力」は現に稼働中又は稼働しうる状態にある水道施設の能力によるものであつて、計画中のものあるいは建設途上にあるものは含まないものであること。

(4) 一の地方公共団体が二以上の種類の交通事業を経営する場合には、職員数及び車両数をそれぞれ合算するものであること。「事業の用に供する車両の数」は、いわゆる在籍車両数によるものであること。

(5) ガス事業の「供給戸数」は、現にガスを供給している戸数によるものであること。

3 管理者を置かない地方公共団体においては、管理者の権限は、当該地方公共団体の長が行なうものであること(法第八条第二項)。この場合においては、財務規定等が適用される場合と異なり(法第三四条の二ただし書)、出納又は決算の事務を出納長又は収入役に行なわせる措置をとることはできないものであること。

(二) 管理者は、原則として各事業ごとに置くものであるが、条例で定めるところにより二以上の事業を通じて管理者一人を置くこともできるものであること(法第七条ただし書)。なお、水道事業(簡易水道事業を除く。)及び工業用水道事業をあわせて経営する場合又は軌道事業、自動車運送事業及び地方鉄道事業のうち二以上の事業をあわせて経営する場合においては、それぞれそのあわせて経営する事業を通じて管理者一人を置くことを常例とするものであること(法第七条なお書)。管理者一人を置くことを常例とするとは、やむを得ない特別の事情のない限り、原則として一人の管理者を置くということであり、この場合においても法第七条ただし書の規定に基づく条例を定める必要があること。

(三) 管理者の具体的職名は、例えば、水道局長、交通部長、企業課長等の如く管理者の権限に属する事務を処理させるための組織に関する条例で適宜定めて差し支えないものであること。

なお、対外的に管理者たることを分明ならしめる必要がある場合は管理者名を附することが適当であること。

例えば 水道事業管理者

水道部長 何某 画像

(四) 管理者に事故があるとき、又は管理者が欠けたときは、管理者が当該地方公共団体の長の同意を得てあらかじめ指定する上席の職員がその職務を行なうものであること(法第一三条第一項)

(五) 法第七条ただし書の規定により管理者を置かない場合、管理者の権限を行なう地方公共団体の長に事故があるとき又は長が欠けたときは、地方自治法第一五二条第一項及び第二項の規定により副知事、助役がその職務を代理するものであること。

二 管理者の選任及び身分取扱い

(一) 管理者は、地方公営企業の経営に関し識見を有する者のうちから、地方公共団体の長が任命するものであり(法第七条の二第一項)、地方公共団体の長の補助機関としての性格を有するが、その職務の特殊性から特別職とされているものであること(地方公務員法第三条第三項第一号の三)

(二) 管理者は、常勤の職員とされ(法第七条の二第六項)、また、地方公共団体の常勤の職員との兼職が禁止され(法第七条の二第三項)ているものであること。したがつて、管理者は、副知事、助役との兼職はもとより、一般職の職員との兼職もできないものであること。

(三) 管理者の任期は四年とされている(法第七条の二第四項)が、地方公共団体の長は、管理者の心身の故障の場合のほか管理者の業務執行が適当でないため経営の状況が悪化したと認める場合その他管理者がその職に必要な適格性を欠くと認める場合にはこれを罷免することができ(法第七条の二第七項)、また、管理者に職務上の義務違反等がある場合にはこれに対し懲戒処分を行なうことができ(法第七条の二第八項)るものであること。

(四) 管理者の交代があつた場合の事務引継、退職の手続き、兼業の禁止及び服務については、地方自治法及び地方公務員法の関係規定が準用されるものであること(法第七条の二第一一項、地方自治法第一五九条、第一六五条第二項及び第一八〇条の五第六項から第八項まで並びに地方公務員法第三〇条から第三七条まで及び第三八条第一項)

三 管理者と地方公共団体の長との関係

(一) 地方公営企業に関し、予算を調製し、議会の議決を経べき事件につきその議案を提出し、決算を監査委員の審査及び議会の認定に付し、並びに地方自治法第二二八条第二項及び第三項並びに第二四四条の二第七項の規定により過料を科する権限は、地方公共団体の長の権限として留保されるものであること(法第八条第一項)

(二) (一)に掲げるもののほか、次のようなものについても、地方公共団体の長の権限に留保されているものであること。

1 管理者に事故があるとき、又は管理者が欠けたときにその職務を行なう上席の職員の指定についての必要条件である同意を与えること(法第一三条第一項)

2 主要職員を指定し、及び管理者がこれを任免する場合の必要条件である同意を与えること(法第一五条第一項)

3 地方公営企業の出納を取り扱う金融機関の規定についての必要条件である同意を与えること(法第二七条)

4 予算のいわゆる弾力条項発動の報告(法第二四条第三項)、予算の繰越使用計画の報告(法第二六条第三項)、計理状況の報告(法第三一条)及び業務状況を説明する書類の提出(法第四〇条の二第一項)を受けること。

(三) 管理者は、地方公共団体の長の補助機関であるが、地方公営企業の運営を自主的に行なわせるため、地方公共団体の長は、当該地方公共団体の住民の福祉に重大な影響がある地方公営企業の業務の執行に関しその福祉を確保するため必要があるとき、又は地方公営企業の業務の執行と他の事務の執行との間の調整を図るため必要があるときに限り、管理者に対して必要な指示をすることができるものであること(法第一六条)。したがつて、管理者に対する地方公共団体の長の一般的な指揮監督権は、排除されるものであること。

(四) 地方自治法第一五三条第一項の規定により、地方公共団体の長はその権限に属する事務の一部を管理者に委任することができるものであること。

四 管理者の地位及び権限等

(一) 管理者は、長の権限として留保されたものを除き、企業の日常の業務運営の責任者として地方公営企業の業務を執行し、当該業務の執行に関し当該地方公共団体を代表するものであること(法第八条第一項)

(二) 管理者が、地方公営企業の業務の執行に関し、担任する事務の概目は列挙されているものであること(法第九条)。なお、担任する事務については左に掲げる事項に留意すること。

1 分課とは、管理者の権限に属する事務を処理させるため条例で設けられた組織の内部分課であること。従つて、企業の規模に応じ、できるだけ簡素なものとすることが好ましいのであつて、地方公営企業法が適用になつたために従来の機構よりも拡大複雑化することのないよう留意すること(法第九条第一号)

2 職員の任免に関しては、管理者の権限に属する事務の執行を補助する職員(以下「企業職員」という。)は、管理者が任免することとされているが、当該地方公共団体の規則で定める主要な職員を任免する場合には、あらかじめ当該地方公共団体の長の同意を得なければならないものであること(法第九条第二号及び第一五条)

3 予算の調製は、地方公共団体の長の権限であるが、管理者は予算の原案及び予算に関する説明書を作成し、地方公共団体の長に送付するものであること(法第九条第三号及び第四号、第二四条第二項並びに第二五条)

4 決算を監査委員の審査及び議会の認定に付することは、地方公共団体の長の権限であるが、決算の調製は管理者の権限とせられているものであること(法第九条第五号)

5 料金に関する条例の制定改廃等地方公営企業の業務に関し議会の議決を経るべき事件につきその議案を提出することは地方公共団体の長の権限であるが、管理者は、その議案の作成に関する資料を作成し、地方公共団体の長に送付するものであること(法第九条第六号)

6 地方公営企業の用に供する資産の取得、管理及び処分は管理者の権限であり、地方公共団体の長の承認又は同意は要せず、また、これらについては地方自治法第九六条第一項第六号から第八号及び第二三七条第二項及び第三項の規定は適用されないので議会の議決は要しないが、条例で定める重要な資産の取得及び処分については、予算で定めなければならないものであること(法第九条第七号、第三三条第二項及び第四〇条第一項)

7 地方公営企業の業務に関する契約を結ぶことは管理者の権限であり、地方自治法第九六条第一項第五号の規定が適用されないので、議会の議決は要しないものであること(法第九条第八号及び第四〇条第一項)

8 企業職員の給与、勤務時間その他の勤務条件について労働協約を結ぶことは、管理者の権限に属するものであること(法第九条第一三号)

9 出納に関する事務は、管理者が行なうものとされ、出納長又は収入役の権限ではないこと(法第九条第一一号、法第二七条及び第二八条)。ただし、地方公営企業以外の企業に財務規定等を適用する場合においては、第一総則に関する事項三の(九)に示したように会計及び決算の事務に係る権限については、条例で定めるところにより、その全部又は一部を出納長又は収入役が行なうことができるものであること(法第三四条の二ただし書)

10 地方公営企業の日常の業務の執行に関する行政庁の許可、認可、免許その他の処分のうち、国の地方支分部局の長又は地方公共団体の長の権限に属するものについては、日常業務運営の責任者である管理者が当該地方公共団体を代表して受けることができるものであること(法第九条第一四号及び施行令第八条の三)。なお、地方債の許可を受けること等日常の業務の執行に属しないものについては、地方公共団体の長が受けるものであるから注意すること。

(三) 管理者は、法令又は当該地方公共団体の条例若しくは規則又はその機関の定める規則に違反しない限りにおいて、企業管理規程を制定する権限を有すること(法第一〇条)。企業管理規程は地方公営企業の運営のための内部規程であり現金取扱員の取り扱いうる現金の限度額の指定(法第二八条第四項)、賠償責任に関する予算執行職員等の指定(法第三四条及び地方自治法第二四三条の二第一項)、入札保証金及び契約保証金の率又は額の決定(施行令第二一条の一四)は、この企業管理規程で行なわなければならないことになつており、その他内部分課の所掌規程、会計規程等は、企業管理規程で定められるべきものであること。

(四) 管理者は、その権限に属する事務の一部をその補助職員に委任し、又はこれにその職務の一部を臨時に代理させることができるものであること(法第一三条第二項)

(五) 事務の種類又は性質上一の管理者においてその事務を処理させることが適当であると認められるものについて事務の合理的能率的処理を図るため、管理者は、その権限に属する事務の一部を当該地方公共団体の経営する他の地方公営企業の管理者に委任することができるものであること(法第一三条の二)

五 事務の引継

管理者を置かない地方公営企業が管理者を置いた場合、管理者を置く地方公営企業が管理者を置かなくなつた場合及び管理者の交替があつた場合における管理者と地方公共団体の長又は管理者相互の間の事務引継は、その必要が生じた日から一〇日以内に行なわれなければならないものであること(施行令第七条)

第三 財務に関する事項

一 特別会計の設定及び一般会計等の関係

(一) 特別会計の設定

地方公営企業は、事業ごとにその経営成績及び財政状態を明らかにして経営すべきものであるので、その経理は事業ごとに特別会計を設けて行なうのが原則であること。ただし、軌道事業、自動車運送事業及び地方鉄道事業のうち二以上の事業をあわせて経営する場合又は水道事業及び法の規定の全部を適用する簡易水道事業をあわせて経営する場合において、事業の経営上好ましいと考えられるときは、条例でそれぞれそのあわせて経営する事業を通じて一の特別会計を設けることができるものであること(法第一七条及び施行令第八条の四)。なお、同一の事業にあつては例えば地下鉄事業と路面電車事業のようにその経理を分離して明らかにすることが適当な場合においては、必要に応じ別個の特別会計を設けることを妨げるものではないこと。

(二) 経費の負担の原則

1 地方公営企業は、地方公共団体が経営する企業であるため、一般行政事務の一部をあわせ行ない、あるいは本来採算をとることは困難であるが公共的な必要からあえて事業を行なわなければならない場合があり、このような場合には、事務の性質又は事業の実施により公共的利益を確保すべき責任の帰属に応じて、これに要する経費又は増こう経費について一般会計又は他の特別会計(以下「一般会計等」という。)において、出資、長期の貸付け、負担金の支出その他の方法により負担をしなければならないものであること(法第一七条の二第一項)

なお、この経費の負担の原則は、同一の地方公共団体の内部における地方公営企業の特別会計と一般会計等との間の経費の負担区分を定めたものであり、国と地方公共団体等の間又は地方公共団体相互間の経費の負担区分を定めたものではないこと。

2 地方公営企業の経費で地方公共団体の一般会計等において負担すべきものは、次のとおりであること(施行令第八条の五)

(1) その性質上当該地方公営企業の経営に伴う収入をもつて充てることが適当でない経費(法第一七条の二第一項第一号)として一般会計等において負担すべきものは、次に掲げる経費であること。ただし、これらの経費に係る特定の収入がある場合には、当該特定の収入の額をこえる部分に限られるものであること(施行令第八条の五第一項)。これらの経費に係る特定の収入とは、当該経費に充てるべき国庫補助金、負担金、分担金等の収入をいうものであること。

ア 水道事業の経費のうち、公共の消防のための消火栓に要する経費その他水道を公共の消防の用に供するために要する経費及び公園その他の公共施設において水道を無償で公共の用に供するために要する経費(施行令第八条の五第一項第一号)

公共の消防のため消火栓に要する経費その他水道を公共の消防の用に供するために要する経費とは、消火栓の設置及び管理に要する経費、消火栓の設置に伴う水道管の増設、口径の増大等に要する経費等をいうものであるが、これらの経費を一般会計等が負担するのは、地方公共団体がその責任を有する公共の消防に係る場合のみに限られるものであること。また、公園その他の公共施設において水道を無償で公共の用に供するために要する経費とは、公園、広場、公衆便所等の公共施設において水道を無償で公共の用に供する場合におけるその施設の設置及び管理に要する経費をいうものであり、当該施設において無償で公共の用に供した水の原価を含むものであること。

イ 工業用水道事業の経費のうち、公共の消防のための消火栓に要する経費その他工業用水道を公共の消防の用に供するために要する経費(施行令第八条の五第一項第二号)

この経費については、水道事業の場合と同様であること。

ウ 病院事業の経費のうち、看護婦の確保をはかるため行なう養成事業に要する経費、伝染病に関する医療に要する経費、救急の医療を確保するために要する経費及び集団検診、医療相談等保健衛生に関する行政として行なわれる事務に要する経費(施行令第八条の五第一項第三号)

看護婦の確保をはかるため行なう養成事業に要する経費とは保健婦助産婦看護婦法(昭和二三年法律第二〇三号)にいう看護婦養成所及び准看護婦養成所の施設の設置及び運営に要する経費を、伝染病に関する医療に要する経費とは伝染病予防法(明治三〇年法律第三六号)に基づき伝染病患者を収容するための隔離病舎等の施設の設置及び運営に要する経費を、救急の医療を確保するために要する経費とは消防法(昭和二三年法律第一八六号)第二条第九項に規定する救急隊により搬送される傷病者に関する医療を担当する医療機関として救急病院等を定める省令(昭和三九年厚生省令第八号)に基づき都道府県知事が告示する地方公共団体の経営する病院において行なわれる交通事故等に伴う救急の医療に必要な施設の設置に要する経費、医師及び医療技術者の待機、空床の確保等その運営に要する経費を、集団検診、医療相談等保健衛生に関する行政として行なわれる事務に要する経費とはがん、成人病、身体障害、精神衛生、結核、乳幼児等の集団検診事業、妊産婦、身体障害、肢体不自由児、栄養指導等の医療相談、へき地巡回診療、防疫活動等で無料又は著しく低廉な対価によつて行なうものに必要な施設の設置及び運営に要する経費をいうものであること。

(2) 当該地方公営企業の性質上能率的な経営を行なつてもなおその経営に伴う収入のみをもつて充てることが客観的に困難であると認められる経費(法第一七条の二第一項第二号)として一般会計等において負担すべきものは、次に掲げる経費であること。ただし、これらの経費についての一般会計等の負担は、当該事業において能率的な経営を行なつてもなお当該事業の経営に伴う収入をもつて充てることができない部分に限られるものであり(施行令第八条の五第二項)、これらの経費がそのままただちに一般会計等の負担になるという趣旨ではないこと。この場合において、経営に伴う収入をもつて充てることができるか否かは当該事業全体を通じて判断すべきものであり、たとえば二以上の病院を経営する病院事業においては各病院ごとに区分して判断すべきものではないこと。

ア 軌道事業の経費のうち、当該軌道事業の用に供する車両以外の車両が通行することにより必要が生じた軌道敷の維持、修繕及び改良並びに道路における交通の混雑を緩和するため当該軌道事業を経営する地方公共団体の長が必要と認めた場合に行なう軌道の撤去に要する経費(施行令第八条の五第二項第一号)

当該軌道事業の用に供する車両以外の車両が通行することにより必要を生じた軌道敷の維持、修繕及び改良に要する経費とは、軌道敷のうち自動車等の一般の車両の通行が認められている区域について一般の車両が通行することに起因して必要となる軌道敷の維持及び修繕並びに軌道敷の舗装等の改良に要する経費をいうものであり、一般会計等において負担する経費の算定は、一般の車両の通行量等を勘案して行なうべきものであること。軌道の撤去に要する経費には、軌条、架線、安全地帯等の撤去に直接要する経費のほか、道路の原状回復に要する経費が含まれるものであること。また、軌道の撤去に要する経費について一般会計等が負担するのは、当該軌道事業を経営する地方公共団体の長が道路交通の混雑を緩和するためその撤去を必要と認めた場合のみに限られるものであり、軌道事業の都合で撤去する場合は含まれないものであること。

イ 病院事業の経費のうち、山間地、離島その他のへんぴな地域等における医療の確保をはかるため設置された病院又は診療所でその立地条件により採算をとることが困難であると認められるものに要する経費及び病院の所在する地域における医療水準の向上をはかるため必要な高度又は特殊な医療で採算をとることが困難であると認められるものに要する経費(施行令第八条の五第一項第二号)

その立地条件により採算をとることが困難であると認められる病院とは病床数一〇〇床未満の地方公共団体の経営する病院で、同一市町村内に他の病院が存在せず、隣接市町村に所在する病院まで交通機関によつても相当の時間を要する距離にあるもの及びこれとほぼ同等の実情にある病院を、その立地条件により採算をとることが困難であると認められる診療所とは病院に附属する診療所のうちへき地診療所又はこれとほぼ同等の実情にある診療所をいうものであり、これらの病院又は診療所に要する経費には、それらの運営費のほか、建設改良に要する経費が含まれるものであること。高度な医療で採算をとることが困難であると認められるものとは、高度な器械、設備、技術等によつて行なう医療で患者数等からみて採算をとることが困難であるが、地方公共団体の経営する病院として行なわざるを得ないものをいうものであり、この医療に要する経費には、その運営費のほか、建設改良に要する経費が含まれるものであること。何が高度な医療であるかは病院の所在する地域の実情によつても異なり、個々具体的な事情をも勘案して判断しなければならないものであること。特殊な医療で採算をとることが困難であると認められるものとは、(1)リハビリテイションその他の先駆的医療、(2)未熟児収容部門における医療その他特殊の看護を要する医療、(3)その立地条件からみて患者数に対応して施設の縮小転換がただちに困難と認められる結核病院における医療、(4)病理解剖等いずれも採算をとることが困難であるが、地方公共団体の経営する病院として行なわざるを得ないものをいうものであり、この医療に要する経費には、その運営費のほか、建設改良に要する経費が含まれるものであること。

3 地方公営企業は2に掲げる経費を除き、住民負担の衡平及び企業の能率的経営を図る見地から、その経費は当該企業の経営に伴う収入をもつて充てなければならないものであること(法第一七条の二第二項)

(三) 補助

地方公共団体は、災害の復旧その他特別の理由により必要がある場合には、一般会計等から地方公営企業の特別会計に補助をすることができるものであること(法第一七条の三)。特別の理由により必要がある場合とは、災害に準じるような一時的な企業外の要因又は要請により企業会計において所要経費をまかなうことが客観的に困難又は不適当な場合をいうものであり、補助は経費負担の原則の例外をなすものであるのでその運用にあたつては真にやむを得ないものに限定されるべきであること。

(四) 出資

地方公共団体は、負担区分に基づく出資のほかその経営する地方公営企業の財政的基礎の充実をはかるため、地方公営企業の特別会計に必要な出資を行なうことができるものであること(法第一八条第一項)。ここに必要な出資とは、地方公営企業が、経済性を発揮して独立採算を建前とした運営を行ない、住民に対するサービスを確保するため必要、かつ、適切な建設改良工事を行なうにあたつて、自己資本として必要とされる一般会計等からの出資及び財産等の移管による現物出資をいうものであつて、収益的収支の不足をまかなうためのようなものをいうものではないこと。具体的には、たとえば(ア)地方公営企業の建設当初において一般会計等から元入される出資金又は現物出資としての財産の移管 (イ)地方公営企業の事業施設の拡張に要する経費(その資金を企業債を発行してまかなつた場合における当該企業債の元金償還金を含む。)にあてるための一般会計等からの出資金又は財産等の移管による現物出資をいうものであること。

地方公営企業の特別会計は、負担区分に基づく出資以外の出資を受けた場合には、利益の状況に応じ、納付金を一般会計等に納付するものとされていること(法第一八条第二項)。納付金は、自己資本に対する報酬としての性格を有するものであり、その性格上定額でなく、利益の状況に応じて利益処分として納付するものであること。

(五) 長期貸付け

地方公共団体は、負担区分に基づく長期の貸付けのほか、一般会計等から地方公営企業の特別会計に長期の貸付けをすることができるものであること(法第一八条の二第一項)。地方公営企業の特別会計は、負担区分に基づく長期の貸付け以外の長期の貸付けを受けた場合には、適正な利息を一般会計等に支払わなければならないものであること(法第一八条の二第二項)

なお、地方公営企業の特別会計が長期の貸付けを受けた場合においては、当該貸付けに係る金額に相当する金額を、建設改良に充てるものは借入資本金として貸借対照表上資本の部へ計上し、営業運転資金に充てるものは固定負債として貸借対照表上負債の部へ計上するものであること。

二 事業年度

地方公営企業の事業年度は、地方公共団体の会計年度によるものであること。(法第一九条)

三 計理の方法

(一) 地方公営企業の計理の方法は、その経営成績を明らかにするため、すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した年度に正しく割り当てられるように処理しなければならないものであり(法第二〇条第一項)、また地方公営企業の財政状態を明らかにするため、すべての資産、資本及び負債の増減及び異動は、その発生の事実に基づき、かつ、適当な区分及び配列の基準並びに一定の評価基準に従つて、整理しなければならないものであること(法第二〇条第二項)。したがつて、一般会計における現金主義にかえて発生主義を採用するものであり、これに伴い複式簿記を採用することになるので、簿記記録の内部牽制が可能となり、貸借対照表を始め財務諸表の正確な作成が期せられる反面、出納整理期間を必要としないため、決算の迅速な作成が可能であつて、次事業年度の予算執行に前事業年度の決算を充分考慮でき、企業活動の合理的運営に資することができるものであること。

(二) 資産、資本及び負債の内容は政令で定めることとしていること(法第二〇条第三項)。即ち、

1 資産は、固定資産、流動資産及び繰延勘定に区分するものであり(施行令第一四条)、固定資産とは有形固定資産(土地、立木、建物、構築物、車両、機械設備、備品、建設仮勘定等)、無形固定資産(水利権、営業権等)及び投資資産(出資金、前払費用(一年以内に費用となるものを除く。)、長期貸付金等)であり、流動資産とは現金、預金、貯蔵品、製品、未収金、前払費用(一年以内に費用となるもの)、前払金等であり、繰延勘定とは企業債発行差金、試験研究費であること。

2 資本の金額は、資産の金額から負債(建設又は改良に要する経費にあてるために発行する企業債は含まない。)の金額を控除した額とし、資本金及び剰余金に分け、さらに資本金は、自己資本金(法適用の際における当該地方公営企業の固有の資本金のほか、法第一七条の二第一項又は法第一八条第一項の規定に基づく出資及び施行令第二五条第一項から第三項まで又は再評価規則第一一条の規定による組入額)及び借入資本金(建設又は改良に要する資金にあてるための企業債及び一般会計等からの長期借入金)に、剰余金は、資本剰余金(工事寄附金、再評価積立金等)及び利益剰余金(企業経営上の利益金)に区分するものとすること(施行令第一五条)

3 負債は、欠損金処理のための企業債及びその他の負債とし、固定負債(欠損金処理のための企業債、その他の長期負債)及び流動負債(一時借入金、未払金、前受金、預り金等)に区分するものとすること(施行令第一五条)

(三) 会計処理の原則は、所謂企業会計原則に採用された一般原則即ち、真実性の原則、正規の簿記の原則、資本取引と収益取引との区分の原則、明瞭性の原則、継続性の原則及び安全性の原則を地方公営企業においても採用するものであること(施行令第九条)

このような原則に従つて前記の資産、資本及び負債の増減及び異動を仕訳記帳するための計算区分として勘定科目を採用するものであつて、勘定の分類は、損益計算書、貸借対照表の作成を標準として損益勘定(収益及び費用)、資産勘定(固定資産、流動資産及び繰延勘定)、資本勘定(資本金及び剰余金)、負債勘定(固定負債及び流動負債)及びその他の整理勘定を設けることとし、勘定科目の区分は、施行規則別表第一号の定めるところにより、管理者が会計規程によつて定めるものであること(施行令第一八条)

(四) 整理勘定(所謂中間勘定)としては、企業の施設の建設及び改良に伴う資産の増減の過程、又は用品その他の資産の生産、製作、修理、加工、購入、保管又は運搬に要する経費の計算及びこれらの費用の振替過程を明らかにするものであるから、貯蔵物品(用品)勘定、工事勘定、工場勘定、関連勘定(二以上の事業を通じて一の特別会計を設けて経理する場合)等が予想されるものであること。

また、消費税に相当する額については、消費税額を納める義務が免除される者を除き、仮払消費税勘定又は仮受消費税勘定によつて整理するものであること(施行規則第一〇条)

(五) 年度所属区分

1 地方公営企業の年度所属区分は、収益、費用及び資産等の増減又は異動の年度所属区分を施行令第一〇条から第一二条までに規定したものであること。年度所属区分は収益及び費用の発生並びに資産、資本及び負債の増減異動をその原因である事実の生じた日を基準として区分することとするものであり、これにより難い場合は、この原因である事実を確認した日の属する年度に区分することとするものであること。地方公営企業の年度所属区分は、地方自治法施行令第一四二条及び第一四三条に定める年度所属区分とその性格が全く異なるのでこれを排除する規定としたものであること。

2 年度所属区分に関連して特に注意すべきことは、企業の収入又は支出が確定した際直ちに現金の収納又は支払が行われないものについては、それが行われるまではその債権又は債務の種別によつて未収収益又は未収金或いは未払費用又は未払金等に整理しなければならないものであること(施行令第一三条)

四 料金

地方公営企業の給付について、地方公共団体は料金を徴収することができるものである(法第二一条第一項)が、当該料金は公正妥当なものでなければならず、かつ、能率的な経営の下における適正な原価を基礎とし地方公営企業の健全な運営を確保することができるものでなければならないものであること(法第二一条第二項)。この場合の原価は、営業費、支払利息等経営に要する費用であつて、いわゆる資金収支上の不足額をそのまま料金原価に含めることは適当でないこと。また、地方公営企業が健全な経営を確保する上に必要な資金を内部に留保するため、料金には、適正な率の事業報酬を含ませることが適当であること。

なお、地方公営企業の料金には、地方自治法第二二五条の使用料に該当するものがあるが、使用料に該当する料金に関する事項は条例で定めなければならないものであること(同法第二二八条)。また料金の決定については、他の事業法等の法令の適用を排除しているものではないこと。

五 企業債

(一) 地方公共団体が地方公営企業の建設、改良等に要する資金に充てるため起す地方債を企業債といい、行政庁の許可を必要としないものであるが(法第二二条)、当分の間は地方自治法第二五〇条の規定の適用があるものとしているので(法附則第二項)、従来通り行政庁の許可は必要であること。即ち企業債とは地方債の一種であり、差し当り従来の取扱と何ら変らないものであること。なお、建設改良等とは、建設改良費に充当するものの外、同一又は類似の事業の買収に要する資金に充てるためのもの、又は建設改良工事資金に充当した公債の借替のためのもの等をいうものであること。

(二) 企業債の償還元金が地方公営企業の資金繰りの圧迫となつている等の実情にかんがみ、国は、地方公営企業の健全な運営を確保するため必要があると認めるときは、企業債の償還の繰延べ、借換え等につき、法令の範囲内において、資金の事情が許すかぎり、特別の配慮をするものとされていること(法第二二条の二)

(三) 企業債のうち地方公営企業の建設資金に充てるものについては、償還期限を定めないことができることとしたが(法第二三条前段)、これは、(1)償還期限が不定であること、(2)償還期限がない所謂永久公債的なものであることを意味するものであること。即ち、地方公営企業の経営は、地方公共事務のうち住民の福祉を増進するための具体的方法の一であり、その設置は、地方住民の総意に俟つべきものと考えるので、地域住民から直接、地方公営企業の建設資金を調達する方法を設けたものであること。この場合においては、当該地方公営企業の毎事業年度における利益剰余金の状況に応じて特別利息をつけることができるのであつて(法第二三条後段)、償還期限を定めない企業債が株式に類似した性格を有するものであるから特別利息は配当金に類似したものということができるのであり、これが最高限度については、規定を設けていないが、普通の利息の外に特別の利息を加算する点に鑑み、年元金の一割程度のものが適当であると考えるものであること。

六 予算

(一) 地方公営企業の予算の原案は当該地方公営企業の管理者が作成するのである(法第八条第一項第一号及び第二号並びに第二四条第二項)が、調製権及び提案権は従前通り地方公共団体の長の権限であること。なお、地方公共団体の長は、管理者に対する指示権が限定されている趣旨にもかんがみ、予算の調製にあたつては、できる限りその原案を尊重すべきものであること。而して、一般会計の予算等いわゆる官公庁予算と異なるところは、官公庁予算においては歳出の規制に重点が置かれているのに対して、地方公営企業の予算においては、企業の効率的運営に主眼が置かれ、毎事業年度における企業運営の目標設定の意味を持つものであるので、予算には業務の予定量を定めるとともに収入及び支出についてはその大綱を定めるものとし(法第二四条第一項)、また、業務量の増加に伴い収入が増加する場合には当該事務に要する経費について予算超過の支出を認める等、企業の経営活動が外部の事情の変動に応ずるよう図られているものであること。

(二) 地方公営企業の予算が官公庁予算に比し極めて弾力性に富む概括的な形成を採るに伴い、議会の議決を求める場合には予算とともに予算に関する説明書、即ち、予算の実施計画、資金計画、給与費明細書、継続費に関する調書、債務負担行為に関する調書並びに当該事業年度の予定貸借対照表並びに前事業年度の予定損益計算書及び予定貸借対照表をもあわせて提出することとしているものであること(法第二五条及び施行令第一七条の二第一項)

1 予算に記載すべき事項は、施行令第一七条第一項に掲げる (i)業務の予定量 (ii)予定収入及び予定支出の金額 (iii)継続費 (iv)債務負担行為 (v)企業債 (vi)一時借入金の限度額 (vii)予定支出の各項の経費の金額の流用 (viii)議会の議決を経なければ流用することのできない経費 (ix)一般会計等からの補助金 (x)利益剰余金の処分 (xi)たな卸資産購入限度額 (xii)重要な資産の取得及び処分であり、予算様式については、施行規則別表第五号に定められている(施行令第一七条第三項)が、その内容は次に掲げるところによるものであること。

(1) 業務の予定量には、水道事業又は工業用水道事業にあつては給水戸数又は給水事業所数、年間総給水量、一日平均給水量等を、軌道事業、自動車運送事業又は地方鉄道事業にあつては車両数、年間走行キロメートル、年間総輸送人員、一日平均輸送人員等を、ガス事業にあつては供給戸数、年間供給量、一日平均供給量等を、電気事業にあつては年間販売電力量等を、病院事業にあつては病床数、年間入院患者数及び外来患者数、一日平均入院患者数及び外来患者数等を記載するほか、主要な建設改良事業の概要を記載するものであること。

(2) 予定収入及び予定支出は、収益的収入及び支出並びに資本的収入及び支出に大別し、それぞれ款項に区分するものであること。

(3) 収益的収入は営業収益、営業外収益及び特別利益に、収益的支出は営業費用、営業外費用、特別損失及び予備費にそれぞれ区分して記載するものであること。

(4) 収益的支出については、減価償却費、たな卸資産減耗損、固定資産除却損及び繰延勘定償却費等現金の支出を伴わないものも含まれるものであるが、当該年度に現金が支出されるものであつても、その支出の効果が将来の事業年度に影響するような営業経費(開発費、試験研究費等)について、繰延勘定として整理することとしたものについては収益的支出として計上されないことに留意すべきものであること。

(5) 収益的収入及び収益的支出には、営業収益若しくは営業外収益又は営業費用、営業外費用若しくは予備費のほか、固定資産売却益、固定資産売却損若しくは臨時損失又は過年度損益修正事項に属する収益又は費用等(その金額が少額のもので当年度の損益に著しい影響を与えないものとして営業収益若しくは営業外収益又は営業費用若しくは営業外費用に整理されるものを除く。)を含むものであり、これらの収益又は費用については、特別利益又は特別損失として予算に計上すべきものであること。

(6) 資本的収入には、企業債、出資金、一般会計等からの長期借入金及びその他の収益的収入に属さない収入を、資本的支出には、建設改良費、企業債償還金、一般会計等からの長期借入金償還金及びその他の収益的支出に属さない支出をそれぞれ計上するものであること。

(7) 企業債には、企業債の発行に伴う収入を計上するものであり、したがつて、企業債発行差金を含まないものであつて、債券の額面額からいわゆる割引額を差引いた金額を計上するものであること。

(8) 地方公営企業の給付に対する対価等として一般会計等から受け入れる金額は、その性質により給水収益、受託工事収益等当該性質にしたがつた科目により収益的収入又は資本的収入として整理するものであること。

(9) 資本的収入には、企業債並びに出資金及び一般会計等からの長期借入金のほか固定資産売却代金、国庫補助金、工事負担金等を計上するものであるが、固定資産売却代金には売却差益を含まない金額を計上するものであること。

(10) 一般会計等へ支出するもののうち、事務費、分担金、工事委託費等は、その性質により収益的支出又は資本的支出中において、当該性質に従つた科目により整理するものであること。

(11) 資本的支出には、建設改良費及び企業債償還金のほか出資金、貸付金等を計上するものであるが、繰延勘定として整理することとする支出で現金の支払を伴うものも計上するものであること。

(12) 予算様式第四条本文かつこ書中当年度分損益勘定留保資金とは、収益的支出に計上した費用のうち現金の支払を伴わないもの(減価償却費、固定資産除却損、たな卸資産減耗損等)の合計額をいうものであること。ただし、この資金を資本的支出の財源としてあてようとするときは、企業が経営のために通常必要とされる運転資金(貯蔵品を含む。)をこえる部分についてのみに止めるべきであること。

(13) 予算様式第四条本文かつこ書中繰越利益剰余金処分額とは、前年度末における繰越利益剰余金として生ずることが確実と見込みうる金額のうち、予算様式第一二条において処分することとした額に相当する金額をいうものであり、当年度利益剰余金処分額とは、当年度において経営の結果生ずることが確実な純利益の額に相当する金額をあらかじめ予算様式第一二条において処分した額をいうものであること。

(14) 予算様式第四条本文かつこ書中何々には、利益剰余金のうち、既に法定積立金及び任意積立金として処分済のものであつて、本年度において資本的支出の財源として取り崩す予定のもの等を掲げるものであること。なお、企業開始当初において企業に属する現金若しくは貯蔵品として引き継いだもののうち資本的支出の財源としてあてることのできる金額又は本年度の予算に計上した資本的支出の特定財源として前年度以前において受け入れた金額で前年度以前において他の支出の財源として使用しなかつたもの等がある場合においては、これらをそれぞれ「引継金」、「引継貯蔵品」又は「繰越工事資金」等の名称をもつて掲げるものであること。ただし、これらの資金を資本的支出の財源としてあてようとするときは、企業の経営のために通常必要とされる運転資金(貯蔵品を含む。)をこえる部分についてのみに止めるべきであつて、その金額は、原則として前事業年度末における流動資産(未収金を除く。)の金額から、流動負債の金額を控除した残額の範囲内であり、かつ、継続費の逓次繰越等予算の繰越使用に係る財源として使用すべき資金の額を控除した残額の範囲内とすべきものであること。

(15) 一時借入金については、予算において、その年度内の借入の最高限度を記載すれば足りることとしたものであるが、この場合における一時借入金の最高限度額には、企業債の前借を含まず、一般会計等から一時の資金として融通を受ける額を含むものであること。

(16) 議会の議決を経なければ流用できない経費とは、職員給与費及び交際費等が予想されるものであるが、これらの経費についての予備費の使用は、必要やむを得ざる場合で当該金額が多額にわたらないときに限られるべきであり、できうる限り予算の修正措置を講ずるべきものであること。

(17) 予算様式第一一条他会計からの補助金には、収益的収入予算及び資本的収入予算に含まれている補助金について、補助の理由及び補助をした会計並びに補助の金額を明瞭に記載するものであること。

(18) 剰余金処分においては、当年度分と繰越分とを区分して記載するものであること。

(19) たな卸資産の購入限度額とは、当年度中における購入額の累計額についていうものであること。なお、たな卸資産について製作又は加工の結果その価額が増加する分についてもこれに含めるものであること。

(20) 重要な資産の取得及び処分は、地方公営企業の用に供する資産のうち条例で定める重要な資産の取得及び処分について定めるものであること(一八の(二)参照)

(21) 該当事項が予算に計上されている仮払金又は前払金、仮受金、前受金、預り金及び単なる帳簿上の修正等は、予算事項ではないこと。

2 予算の実施計画の様式は、施行規則別表第六号の通りであること。

なお、二以上の事業を通じて一の特別会計により計理する場合の実施計画は、施行規則別表第六号様式に準じて作成すること。

3 資金計画の様式は、施行規則別表第八号の通りであること。

受入資金としては、営業収益、営業外収益、特別利益、固定資産売却代金、企業債、出資金、一般会計等からの長期借入金、一般会計等への長期貸付金償還金、補助金、工事負担金及び前年度以前の未収収益、同未収金等が予想され、支払資金としては、営業費用、営業外費用、特別損失、建設改良費、企業債償還金、一般会計等からの長期借入金償還金、一般会計等への長期貸付金及び前年度以前の未払費用、同未払金等が予想されるものであること。

4 給与費明細書の様式は、施行規則別表第八号の二の通りであること。なお、同様式中「賃金」の欄には常時勤務に服することを要する職員に支弁される賃金を記載し、かつ、当該職員に係る付加給及び法定福利費はそれぞれ「手当」及び「法定福利費」の欄に記載するものであること。

5 継続費に関する調書及び債務負担行為に関する調書の様式は、それぞれ施行規則別表第八号の三及び第八号の四の通りであること。

6 予定損益計算書及び貸借対照表は、決算の損益計算書及び貸借対照表の様式に準じて作成するものであること。

(三) 管理者は、地方公営企業の予算の執行について、地方公営企業の適正な経営管理を確保するため、必要な計画を定め、これに従つて地方公営企業の予算を執行しなければならないものであること(施行令第一八条第一項)

(四) 地方公営企業の経営を経済情勢に応じて能率的にすることができるように、予算の実施に関し次の特例が定められていること。

1 流用

予定支出の経費の金額は、各款の間又は各項の間において相互に流用することができないのであるが、予算の執行上必要がある場合に限り、各項の経費の金額は、予算の定めるところにより流用することができるものであること(施行令第一八条第二項)

2 弾力条項

(1) 業務量の増加に伴い収入が増加する場合に限つて当該事務に要する経費について予算超過の支出を認める(法第二四条第三項前段)いわゆる弾力条項は、真に已むを得ない場合に限つて発動すべきものと考えられるものであつて、一般に特別会計は予備費を設けることは任意とされており、予備費を設けた場合は、第一次的には予備費を充て、第二次的にこの規定が適用されるものと解すべきものであること。この場合において地方公営企業の業務のため直接必要な経費とは、例えば交通事業にあつては、臨時に大量の乗客が増加した場合の運転車両の増加、運転時間の延長、或いは水道事業にあつては、給水量の増加、給水時間の延長等によつて直接必要となる増加人件費又は増加物件費をいうものであること。

(2) この弾力条項の適用は、予算修正のいとまのない場合等に限られるべきものであつて、料金率の変更、給与水準の改訂、物価騰貴による物件費の変動等の場合は、この弾力条項を適用することなく、予算の補正に俟つべきものと考えられるものであること。

(3) この弾力条項を適用した場合、遅滞なく、管理者は、当該地方公共団体の長にその旨を報告するものとし、報告を受けた地方公共団体の長は、次の会議においてその旨を議会に報告しなければならないものであること(法第二四条第三項後段)

3 弾力条項を適用する場合のほか、管理者は、支出の予算がなく、かつ、予備費支出、費目流用その他財務に関する規定により支出することができない場合においては、支出することができないものであること。ただし、現金の支出を伴わない経費については、この場合においても、支出することができるものであること(施行令第一八条第五項)

(五) 地方公営企業においては、予算の会計年度独立の原則の例外として、次に掲げるところにより予算の繰越使用が認められるものであること。

1 地方公営企業の経費をもつて支弁する事件で数年を期してその経費を支出すべきものは、予算の定めるところにより、その経費の総額及び年割額を定め、継続費とすることができるのであるが、この継続費については、管理者は、毎事業年度の支出予定額のうち当該年度内に支払義務が生じなかつたものを、継続年度の終わりまで逓次繰り越して使用することができるものであること。この場合においては、管理者は、地方公共団体の長に、施行規則別表第八号の五の様式の継続費繰越計算書をもつて翌事業年度の五月三一日までに報告をするものとし、報告を受けた地方公共団体の長は、次の議会においてこの旨を報告しなければならないものであること(地方自治法第二一二条、施行令第一八条の二第一項及び第三項)

2 予算に定めた地方公営企業の建設又は改良に要する経費のうち、事業年度内に支払義務が生じなかつたものがある場合においては、管理者は、その額を翌年度において予算に計上することなく、繰り越して使用することができるものであること(法第二六条第一項)

3 毎事業年度の支出予算の金額のうち、年度内に支出の原因となる契約その他の行為をなし、その後に災害等避け難い事故により年度内に支払義務が生じなかつたものについては、管理者は、その金額を翌事業年度に繰り越して使用することができるものであること(法第二六条第二項)

4 2及び3に掲げるところにより予算を繰越使用する場合、管理者は、施行規則別表第九号の様式の繰越計算書(継続費に係るものにあつては、施行規則別表第八号の五の様式の継続費繰越計算書)をもつて翌事業年度の五月三一日までに地方公共団体の長に報告し、当該地方公共団体の長は、次の会議において、その旨を議会に報告しなければならないものであること(法第二六条第三項及び施行令第一九条)

七 出納

(一) 地方公営企業の業務に係る出納は、管理者が行うのであつて(法第九条第一一号及び法第二七条本文)、出納長又は収入役の権限(地方自治法第一七〇条)は排除しているものであること。ただし、財務規定等のみが適用され、又は条例(一部事務組合にあつては、規約)で財務規定等のみを適用することとした場合においては、第一総則に関する事項三の(九)に示したように、条例の定めるところによりその全部又は一部を出納長又は収入役が行なうことができるものであること(法第三四条の二ただし書)

(二) 地方公営企業の業務に係る現金の保管は、出納取扱金融機関、収納取扱金融機関その他の確実な金融機関への預入れその他の最も確実かつ有利な方法によつて保管しなければならないものであること(施行令第二二条の六第一項並びに地方自治法第二三五条の四第一項)。なお、このことは、管理者が業務上必要な限度において自ら現金を保管することを禁止する趣旨のものではないが、管理者が自ら保管する現金の額は、自ら支払を行なうために必要とする額等必要最少限度とすべきものであること。

また、管理者は、地方公営企業の業務に関して地方公共団体が債権者として債務者に属する権利を代位して行なうことにより受領すべき現金又は有価証券を保管することができるものであること(施行令第二二条の六第二項)

(三) 地方公営企業の出納その他の会計事務は、管理者の担任する事務であることは前に述べた通りであるが、この種の事務は他の一般事務以上にその厳正な執行を要請されるものであるから、特定の職員にこの事務を担当させるものとし、その職員を企業出納員及び現金取扱員とし、かつ、企業出納員は必置とし、現金取扱員は任意設置とし(法第二八条第一項)、企業職員(法第一五条)のうちから任命するのであるが(法第二八条第二項)、多数の営業所等を有する地方公営企業においては、相当数の企業出納員を任命することも予想されるものであること。

(四) 企業出納員は、管理者の命を受けて、出納その他の会計事務をつかさどるが(法第二八条第三項)、管理者から委任された事務の範囲内において、自己の名と責任においてこれを処理する権限を有するものであること(法第一三条第二項)

(五) 現金取扱員は、上司の命を受けて、企業管理規程で定めた額を限度として当該地方公営企業の業務に係る現金の出納に関する事務をつかさどるが(法第二八条第四項)、地方公営企業はその業務形態から集金員又は現金収受の業務員等が多数である場合が普通であるので、主要収益たる公金の取扱を慎重にし、業務責任を明確にするため現金取扱員の名称を設定したものであること。従つて取扱現金については企業の規模に応じて限度額を定めることが適当であるものであること。

(六) 地方公営企業の収入は、管理者が現金で収納するのであるが、地方公営企業の収入の納入義務者の利便をはかる等のため次のような方法によることができるものであること。

1 証紙による収入

使用料又は手数料の徴収については、条例の定めるところにより証紙による収入の方法によることができ、この場合においては、証紙の売りさばき代金をもつて収入とすることができるものであること(地方自治法第二三一条の二第一項及び第二項)

2 口座振替の方法による納付

出納取扱金融機関又は収納取扱金融機関が定められている場合は、当該金融機関に預金口座を設けている地方公営企業の収入の納入義務者は、その金融機関に請求して、口座振替の方法によりその収入を納付することができるものであること(施行令第二一条の二)

3 証券による納付

出納取扱金融機関又は収納取扱金融機関が定められている場合は、地方公営企業の収入の納入義務者は、次の(1)(2)及び(3)に掲げる証券で納付金額をこえないものをもつてその収入を納付することができるものであること。この場合においては、証券による納付をもつてただちに収納済みとなるものであること。なお、納付された証券を支払の呈示期間又は有効期間内に呈示し、支払の請求をした場合において、支払の拒絶があつたときは、当該収入は、はじめから納付がなかつたものとみなされ、管理者は、証券をもつて納付した者に対し、すみやかに、その証券について支払がなかつた旨及びその者の請求により当該証券を還付する旨を書面で通知しなければならないものであること(施行令第二一条の三)

(1) 持参人払式の小切手又は管理者、出納取扱金融機関若しくは収納取扱金融機関(以下「管理者等」という。)を受取人とする小切手で、手形交換所に加入している金融機関又は当該金融機関に手形交換を委託している金融機関を支払人とし、支払地が管理者の定める区域内であつて、その呈示期間内に支払のための呈示をすることができるもの。この場合において、管理者等は、当該小切手の支払が確実でないと認める場合は、その受領を拒絶することができることとされているものであること。

(2) 管理者等を受取人とする郵便振替貯金払出証書又は持参人払式の郵便為替証書若しくは管理者等を受取人とする郵便為替証書で、その有効期間内に支払の請求をすることができるもの

(3) 無記名式の国債若しくは地方債又は無記名式の国債若しくは地方債の利札で、支払期日の到来したもの

4 取立及び納付の委託

出納取扱金融機関又は収納取扱金融機関が定められていない場合は、管理者は、地方公営企業の収入の納入義務者から前記3の(1)から(3)までに掲げる証券の提供を受け、その証券の取立て及びその取立てた金銭による納付の委託を受けることができるものであること。この場合においては、証券による納付の委託を受けてもただちに収入済みとしないで、その証券によつて取り立てた金銭による納付のあつたときに収納済みとするものであること。なお、証券の取立てにつき費用を要するときは、管理者は取立て及び納付の委託をしようとする者に、その費用の額に相当する金額をあわせて提供させなければならないものであること。また、証券の取立て及び納付の委託を受けた場合において、必要があると認めるときは、管理者は、確実と認める金融機関にその取立てを再委託することができるものであること(施行令第二一条の四)

(七) 地方公営企業の支出は、債権者のために管理者が自ら現金で支払をするほか、債権者の利便をはかる等のため次のような方法によつて支出し、又は支払をすることができるものであること。

1 資金前渡

次の(1)から(12)までに掲げる経費については、地方公営企業に従事する職員をして現金支払をさせるため、その資金を当該職員に前渡することができるものであること。なお、収入の誤納又は過納となつた金額を払い戻すため必要があるときにおいても、その資金(当該払戻金に係る還付加算金を含む。)を前渡することができるものであること。

(1) 外国において支払をする経費

(2) 遠隔の地又は交通不便の地域において支払をする経費

(3) 船舶に属する経費

(4) 給与その他の給付

(5) 企業債の元利償還金

(6) 諸払戻金及びこれに係る還付加算金

(7) 報償金その他これに類する経費

(8) 社会保険料

(9) 官公庁に対して支払う経費

(10) 事業現場その他これに類する場所において支払を必要とする事務経費

(11) 非常災害のため即時支払を必要とする経費

(12) (1)から(11)までに掲げるもののほか、経費の性質上現金支払をさせなければ事務の取扱いに支障を及ぼすような経費で管理規程で定めるもの。なお、管理規程で定めるにあたつては、一般会計等において規則で定められているものとの均衡を考慮して定めるべきであり、このことは前金払、繰替払について管理規程で定める場合においても同様であること。

資金の前渡は、特に必要があるときは、地方公営企業に従事する職員以外の当該地方公共団体の職員又は他の地方公共団体の職員に対してもすることができるものとし、地方公共団体の職員以外の私人に資金を前渡する場合には支出事務の委託の方法によるものであること(施行令第二一条の五及び第二一条の一一)

2 概算払

次の(1)から(5)までに掲げる経費については、概算払をすることができるものであること(施行令第二一条の六)

(1) 旅費

(2) 官公署に対して支払う経費

(3) 補助金、負担金及び交付金

(4) 訴訟に要する経費

(5) (1)から(4)までに掲げるもののほか、経費の性質上概算をもつて支払をしなければ事務の取扱いに支障を及ぼすような経費で管理規程で定めるもの

3 前金払

次の(1)から(8)までに掲げる経費については、前金払をすることができるものであること(施行令第二一条の七)

(1) 官公署に対して支払う経費

(2) 補助金、負担金、交付金及び委託費

(3) 前金で支払をしなければ契約しがたい請負、買入れ又は借入れに要する経費

(4) 土地又は家屋の買収又は収用によりその移転を必要とすることとなつた家屋又は物件の移転料

(5) 定期刊行物の代価、定額制供給に係る電灯電力料及び日本放送協会に対し支払う受信料

(6) 外国で研究又は調査に従事する者に支払う経費

(7) 運賃

(8) (1)から(7)までに掲げるもののほか、経費の性質上前金をもつて支払をしなければ事務の取扱いに支障を及ぼすような経費で管理規程で定めるもの

4 繰替払

管理者は、次の(1)から(3)までに掲げる経費の支払については、その経費に係る現金を自ら繰替えて使用し、又は出納取扱金融機関若しくは収納取扱金融機関をして繰替えて使用させることができるものであること(施行令第二一条の八)。なお、この繰替払は、支払手続を簡易化するためのものであるので繰替払に係る収入と支出とを相殺することはできず収入及び支出のそれぞれを全額予算に計上すべきものであること。

(1) 証紙取扱手数料 当該証紙の売りさばき代金

(2) 収入の徴収又は収納の委託手数料 当該委託により徴収又は収納した収入金

(3) (1)及び(2)に掲げるもののほか、経費の性質上繰り替えて使用しなければ事務の取扱いに支障を及ぼすような経費で管理規程で定めるもの 管理規程で定める収入金

5 隔地払

管理者は、出納取扱金融機関が定められている場合において、隔地の債権者に支払をするため必要があるときは、支払場所を指定し、出納取扱金融機関に必要な資金を交付して、送金の手続をさせることができるものであること。この場合においては、その旨を債権者に通知しなければならないものであること(施行令第二一条の九第一項)

出納取扱金融機関は、資金の交付を受けた日から一年を経過した後は、債権者に対し支払をすることができないものであること。この場合においては、債権者は、管理者に支払の請求をすることができ、管理者は、その支払をしなければならないものであること。なお、出納取扱金融機関は、交付を受けた資金のうち資金交付の日から一年を経過しまだ支払を終らない金額があつた場合には債権者に対する送金を取り消し、その金額を管理者に納付しなければならないものであること(施行令第二一条の九)

6 口座振替の方法による支出

管理者は、出納取扱金融機関が定められている場合において、出納取扱金融機関その他管理者が定める金融機関に預金口座を設けている債権者から申出があつたときは、出納取扱金融機関に通知して、口座振替の方法により支出することができるものであること(施行令第二一条の一〇)

7 支出事務の委託

資金前渡のできる経費(前記1の(1)から(12)までに掲げる経費に限る。)、貸付金及び資金前渡のできる払戻金(当該払戻金に係る還付加算金を含む。)については、必要な資金を交付して、私人に支出の事務を委託することができるものであること(施行令第二一条の一一第一項)。支出の事務の委託を受けた者は、管理規程の定めるところにより、その支出の結果を管理者に報告しなければならず、また管理者は、その命じた職員に、支出事務の委託を受けた者の委託に関する帳簿、書類その他の物件を検査させることができるものであること(施行令第二一条の一一第一項及び第三項)

8 小切手の振出し及び公金振替書の交付

(1) 支出は、管理者が自ら現金で支払をしてするものとしているが、このほか、出納取扱金融機関を定めている地方公営企業にあつては、出納取扱金融機関を支払人とする小切手を振り出し(職員に支給する給与(退職手当を除く。)に係る支出については、小切手を振り出すことはできない。)、又は公金振替書を出納取扱金融機関に交付してするものであること。ただし、地方自治法第二三五条の規定により金融機関を指定していない地方公共団体の経営する地方公営企業にあつては、小切手の振出しによらず出納取扱金融機関をして現金で支払をさせることができるものであること。なお、小切手を振り出して支払をするものとしている場合であつても債権者の申出がある場合には、小切手の振り出しによらず出納取扱金融機関をして現金で支払をさせることができるものであること(施行令第二一条の一二第一項及び第五項)

(2) 小切手の振出しは、受取人の氏名、支払金額、事業年度、番号その他必要な事項を記載して行なわなければならないものであるが、受取人の氏名の記載は、管理者が特に定める場合を除くほか、これを省略することができるものであること(施行令第二一条の一二第二項)。なお、この方法は公金振替書の交付について準用されるものであること(施行令第二一条の一二第六項)

(3) 管理者は、小切手を振り出したときは、これを出納取扱金融機関に通知しなければならず、また、出納取扱金融機関は、管理者の振り出した小切手の呈示を受けた場合において、その小切手が振出日付から一〇日以上を経過しているものであつても一年を経過しないものであるときは、その支払をしなければならないものであること(施行令第二一条の一二第三項及び第四項)

(4) 管理者は、小切手の所持人から償還の請求を受けた場合は、これを調査し、償還すべきものと認める場合は、その償還をしなければならないものであること(施行令第二一条の一三)

(八) 出納取扱金融機関等

1 管理者は、銀行、郵便官署その他これらに類する貯金の受入れ又は資金の融通を業とする機関のうちから地方公共団体の長の同意を得て指定したものに、当該地方公営企業の業務に係る公金の出納事務の一部を取り扱わせることができるものであること。この場合において、収納及び支払の事務の一部を取り扱わせ、又は収納の事務の一部を取り扱わせることができるものとし、収納及び支払の事務の一部を取り扱う金融機関を出納取扱金融機関と、収納の事務の一部を取り扱う金融機関を収納取扱金融機関と称し、これらの指定にあたつては、出納取扱金融機関又は収納取扱金融機関の機能が制度的に充分発揮され得る金融機関の種類を選ぶとともに各金融機関の信用度を充分考慮しなければならないものであること。

なお、出納取扱金融機関の数は必ずしも一に限定されていないが、支払を行なう金融機関が二以上ある場合においては事務の処理が煩雑になることが予想されるので、出納取扱金融機関を二以上定めることは極力避けることが適当であると考えられるものであること。また、やむを得ない事情により出納取扱金融機関を二以上定める場合においては、管理者は当該二以上の出納取扱金融機関のうち一の出納取扱金融機関を総括出納取扱金融機関として定めなければならないものであること。

出納取扱金融機関又は収納取扱金融機関を定めるに当つては金融機関の本支店を一括して定めることもできるものであるが、これら出納取扱金融機関又は収納取扱金融機関を定め、又は変更した場合は、これを告示しなければならないものであること(法第二七条ただし書並びに施行令第二二条、第二二条の二及び第二二条の四第四項)

また、金融機関を定めるにあたつては、取り扱わせる事務の内容を明確に定め、地方公営企業とそれぞれの金融機関との間において直接に契約を結ぶものであり、これらの金融機関は地方公営企業に対し、個々に責任を負うものとし、これらの金融機関は管理者の定めるところにより担保を提供しなければならないものであること(法第二七条ただし書並びに施行令第二二条、第二二条の二、第二二条の三及び第二二条の四)

2 出納取扱金融機関及び収納取扱金融機関は、納入通知書その他納入に関する書類に基づかなければ地方公営企業の収入の収納をすることができず、また管理者の振り出した小切手又は管理者の通知がなければ地方公営企業の支出の支払をすることができないものであること。なお、これらの金融機関において地方公営企業の収入を収納した場合又はその払込みを受けた場合は、それらの金融機関にある地方公営企業の預金口座に自動的に振り込み、その後、収納取扱金融機関にあつては、管理者の定めるところにより、出納取扱金融機関(二以上出納取扱金融機関がある場合においては、総括出納取扱金融機関)にある地方公営企業の預金口座に振り替えなければならないものであり、総括出納取扱金融機関以外の出納取扱金融機関についても同様とするものであること。

また、総括出納取扱金融機関以外の出納取扱金融機関は、地方公営企業の支出の支払をしたときは、管理者の定めるところにより、これを総括出納取扱金融機関に通知しなければならないものであること(施行令第二二条の四)

3 管理者は、出納取扱金融機関及び収納取扱金融機関について、定期及び臨時に検査をしなければならず、その結果に基づいて、これらの金融機関に対し必要な措置を講ずべきことを求めることができるものであること。監査委員は、その検査の結果について、管理者に対し報告を求めることができるものであること(施行令第二二条の五)

4 監査委員は、必要があると認めるとき、又は管理者の要求があるときは、出納取扱金融機関及び収納取扱金融機関が取り扱う地方公営企業の業務に係る公金の収納又は支払の事務について監査をすることができるものであり、当該監査を行なつたときは、監査の結果に関する報告を地方公共団体の議会及び長並びに管理者に提出しなければならないものであること(法第二七条の二)

八 一時借入金

(一) 管理者は、予算内の支出をするため、一時の借入をすることができるのであつて(法第二九条第一項)、原則として当該事業年度内に償還しなければならないが、資金不足のため償還することができない場合においては、償還することができない金額を限度として翌事業年度にわたつて借り換えることができるものであること(法第二九条第二項)。この借り換えた借入金は、一年以内に償還しなければならないものであつて、この場合借入金をもつて償還するようなことをしてはならないものであること(法第二九条第三項)

(二) 一時借入金の限度額は予算で定めるものであつて(施行令第一七条第一項第六号及び第一八条第四項)単独議決は必要でないものであり、翌年度に亘る一時借入金は地方自治法上は地方債の取り扱いになるものを地方公営企業においては欠損金補てん❜❜のため翌年度収益の繰上充用を行うことはできないので、特例を認めたものであること。

九 繰延勘定及び引当金

(一) 繰延勘定

1 災害によつて資産に多額の損失を受け、その全額をその災害のあつた事業年度において負担することができないときは、その損失の全部又は一部を繰延勘定として整理することができるものであるが、このほか、その支出の効果が将来の事業年度に及ぶ次に掲げる経費についても、その全部又は一部を繰延勘定として整理することができるものであること(施行令第二六条第一項並びに第二項及び施行規則第一〇条の二)

(1) 企業債発行差金

(2) 開発費

(3) 試験研究費

(4) 退職給与金

(5) 控除対象外消費税額

2 繰延勘定として整理した場合においては、企業債発行差金については、当該企業債の償還期限内、その他の営業経費については当該繰延勘定を設けた事業年度の翌事業年度以降五事業年度以内、控除対象外消費税額については当該繰延勘定を設けた事業年度の翌事業年度以降二〇事業年度以内に毎事業年度均等額以上を償却しなければならないものであること(施行令第二六条第三項)

3 退職給与金を繰延勘定として整理することができる場合は、職制もしくは定数の改廃又は予算の減少その他経営上やむを得ない事由による退職職員が多く、これに伴い退職給与金の支給額が多額であつて当該事業年度において負担することができないと認められる場合であること。

4 災害による臨時巨額の損失及び退職給与金を繰延勘定として整理することについて、各事業法の定めるところにより監督官庁の許可を受けなければならない事業にあつては、あらかじめ監督官庁の許可を受けなければならないものであるから注意されたいこと。

5 控除対象外消費税額を繰延勘定として整理することができる場合は、原則として病院事業等経常的に控除対象外消費税額が生ずる事業で、当該額を繰り延べなければ損益に大きな影響を与えると認められる場合であること。

(二) 引当金

1 地方公営企業の毎事業年度の損益計算の平準化をはかるため、修繕費及び退職給与金について、あらかじめ引当金の計上ができるものであるが、これは固定負債として整理するものであること。

2 修繕引当金は、地方公営企業の有形固定資産のうち数年に一度大規模な修繕を行なう資産等につき、いわゆる特別修繕引当金に類するものとして計上することができるほか、企業の毎事業年度の修繕費の額を平準化させる目的をもつて、修繕費の執行額があらかじめ定めた予定基準額に満たない場合において、その差額を引当金に整理することができるものであること。この場合の各事業年度の費用として計上すべき基準額は、前者にあつては、当該修繕費を各事業年度に均分した額、後者にあつては、当該事業年度前数事業年度における修繕費実績額の平均額又は当該企業の当該事業年度における資産の帳簿原価の一定割合の額等とすることが適当であること。

3 退職給与引当金は、職制若しくは定数の改廃又は予算の減少その他経営上やむを得ない理由によつて職員が退職する場合に予想される多数の退職給与費の発生にそなえ、あらかじめ各事業年度の費用として計上したものを引き当てておくものであるが、この場合における各事業年度において引き当てるべき額の基準は、当該事業年度末日に在職する全職員が同日付をもつて退職したと仮定した場合における支払うべき退職給与金の金額から前事業年度末日に在職した職員が同日付をもつて退職したと仮定した場合における支払うべき退職給与金の金額を控除した金額を基準とすることが適当であること。

なお、退職給与金については、支出した額を繰延勘定として五事業年度以内に償却することができるものとされているが、企業経営の安全性をはかる意味からは、できるかぎり引当金設定の方法により資金の留保をはかるべきであると考えられること。

4 各事業年度において引当金として整理されるべき金額は、各企業の実状に応じ客観的に妥当であると認められる金額に止めるべきであつて、これを過大に見積つて計上することはできないものであること。また、これら引当金については、これに見合うものとして企業内部に留保された資金を、建設改良費等の財源としてみだりに使用することは避けるべきであり、この意味で、特定預金等の形態として留保をはかることは適当であると思われること。

一〇 決算

(一) 地方公営企業においては、(1)決算の調製者は管理者であること、(2)決算の対象としての記帳は発生主義に基いて複式簿記によるものであること、(3)決算書として予算決算対照表の外に損益計算書、貸借対照表等が中心書類であることが特色であること。なお、発生主義会計を採用するため出納整理期間がなくなり、而も毎月試算表を作成するため従来に比し決算が迅速化するに伴い、前事業年度実績を当事業年度の予算執行の面に反映させることができ、業務運営の能率化に資するものとなること。

(二) 決算の調製者は管理者であり、決算の調製時期は毎事業年度終了後二月以内であり、管理者は調製した決算に証書類、当該年度の事業報告書その他の書類をあわせて当該地方公共団体の長に提出しなければならないものであつて、これら決算及び決算附属書類を地方公共団体の長が受けたときは、これを監査委員の審査に付し、その審査に付した決算を、監査委員の意見を付けて遅くとも事業年度終了後三月に経過した後において最初に招集される定例会である議会の認定に付さなければならず、認定に付すにあたつては、事業報告書及び(三)に掲げる附属書類をあわせて提出しなければならないものであること(法第三〇条)

(三) 地方公営企業の業務の執行の成果を反映する決算の重要性にかんがみ、監査委員は、(二)の決算の審査にあたつては、地方公営企業の運営が常に企業の経済性を発揮するとともに、その本来の目的である公共の福祉を増進する趣旨に従つてなされているかどうかについて、特に意を用いなければならないものであること(法第三〇条第三項)。また、(二)の監査委員の意見の決定は、監査委員の定数が二人以上である場合においては、その合議によるものであること(法第三〇条第五項)

(四) 決算の対象は、現金の収支のみならず、各種の資産、資本及び負債の増減にまで及ぶものであるから、決算には企業会計における財務諸表と殆ど同一の決算諸表を必要とするものであつて、即ち(1)当該年度の予算の区分に従つて作成した決算報告書、(2)損益計算書、(3)剰余金計算書又は欠損金計算書、(4)剰余金処分計算書又は欠損金処理計算書、(5)貸借対照表(法第三〇条第七項)を主要な内容とし、その外、前に述べた事業報告書、収益費用明細書、固定資産明細書及び企業債明細書(施行令第二三条)を附属書類としているものであること。当該年度の予算の区分に従つて作成した決算報告書とは、発生主義会計方式を採用している以上、一見無意味に思われるものであるが、地方公営企業であるからには予算に対し決算が如何様になされているかということを明示する必要性から作成されるものであるに対し、(2)から(5)までは純粋に経済的必要性から作成され、収益費用明細書は、(1)及び(2)の内訳説明書であり、固定資産明細書及び企業債明細書は、(5)の内訳説明書であること。これらの様式については、施行規則別表第一〇号から第一八号までに定めており、これらは各種事業会計規則と同様の様式を採用しているものであること

(五) 決算に当つていわゆる関連する収益又は費用については、

1 二以上の地方公営企業を通じて一の特別会計をもつて経理する場合の各地方公営企業に関係する収益又は費用については、当該事業年度における各地方公営企業に専属する収益若しくは費用の総額、人件費の総額若しくは職員数の割合等、当該経費の性質に従つた基準によつてこれをあん分して整理しなければならないものであるが、一の特別会計をもつて経理する二以上の地方公営企業のうち一がその規模において他のものに比し著しく大きい場合その他特別の事由がある場合においては、一の地方公営企業が各地方公営企業に関連する収益及び費用の全額をそれぞれ当該地方公営企業の収益及び費用に整理することを妨げないものであること(施行令第二〇条)

2 地方公営企業の営業費及び建設改良費に関連する費用は、当該事業年度における営業費及び建設改良費の総額、損益勘定又は資本勘定に属する職員数の割合等当該経費の性質に従つた基準によつてこれをあん分して整理するものとするものであるが、建設改良費の総額が営業費の総額に比して著しく少い場合その他特別の事由がある場合においては、地方公営企業の営業費及び建設改良費に関連する費用の全額を営業費に整理することを妨げないものであること(施行令第二一条)

(六) 管理者は、継続費に係る継続年度(継続費に係る支出予算の金額のうち法第二六条第一項又は第二項の規定により繰り越したものがある場合には、その繰り越された年度)が終了した場合においては、施行規則別表第八号の六の様式の継続費精算報告書を作成し、決算書とあわせて地方公共団体の長に提出しなければならないものであること。この場合においては、地方公共団体の長は、決算の提出とあわせて、これを議会に報告しなければならないものであること(施行令第一八条の二第二項及び第三項)

(七) 管理者は、地方公営企業の業務に係る特定の目的のために定額の資金を運用するための基金が設けられた場合においては、毎事業年度、その運用の状況を示す書類を作成し、決算等の書類とあわせて地方公共団体の長に提出しなければならないものであること(施行令第二六条の二)

一一 剰余金

(一) 地方公営企業の財政的基礎を確立し、健全な運営を行なうため、公営企業会計において毎事業年度利益を生じた場合においては、前事業年度から繰り越した欠損金があるときは、その利益をもつて欠損金をうめた後の残額(前事業年度から繰り越した欠損金がないときは、その利益の額。以下「欠損金ほてん残額」という。)の二〇分の一を下らない金額を次に掲げる区分に従つて減債積立金又は利益積立金として積み立てるものであること(法第三二条第一項)

1 事業年度末日において企業債を有する地方公営企業は、欠損金ほてん残額の二〇分の一を下らない金額を企業債の額に達するまで、減債積立金として積み立てなければならないものであること(施行令第二四条第一項)

2 事業年度末日において企業債を有しない地方公営企業及び企業債の額に達するまで減債積立金を積み立てた地方公営企業は、欠損金ほてん残額の二〇分の一を下らない金額を利益積立金として積み立てなければならないものであること(施行令第二四条第二項)

3 当該事業年度において欠損金ほてん残額の二〇分の一を下らない額を減債積立金として積み立てた場合において減債積立金の積立額が企業債の額をこえることとなる企業にあつては、欠損金ほてん残額の二〇分の一を下らない額の一部を企業債の額に達するまで減債積立金として企業債の額をこえることとなる部分に相当する額を利益積立金として積み立てなければならないものであること(施行令第二四条第一項及び第二項)

4 減債積立金を積み立て、なお利益に残額がある地方公営企業は、その残額の全部又は一部を利益積立金として積み立てることができるものであること(施行令第二四条第三項)

5 減債積立金は、企業債の償還に充てる場合のほか、使用することができないものであること(法第三二条第三項)

6 利益積立金は、欠損金をうめる場合のほか、使用することができないものであること(法第三二条第四項)

(二) 特定目的のための積立金

1 減債積立金又は利益積立金を積み立て、なお利益に残額があるときは、議会の議決を経て処分するものとし(法第三二条第二項)、この利益の処分として企業内部に特定目的のため利益を積み立てる場合においては、その使途を示す名称を附した科目に積み立てなければならないものであること(施行令第二四条第四項)

2 特定目的のため積み立てた積立金をその目的以外の使途に使用しようとする場合においては、議会の議決を経なければならないものであること(施行令第二四条第五項)

(三) 資本剰余金

1 毎事業年度生じた資本剰余金は、その源泉別に当該内容を示す名称を附した科目に積み立てなければならないものであること(法第三二条第五項)

2 資本剰余金は一二の(一)により欠損金をうめる場合及び3により損失をうめる場合を除くほか、使用することができないものであること(法第三二条第六項並びに施行令第二四条の二及び第二四条の三第二項ただし書)

3 地方公営企業の固定資産で、資本剰余金に整理すべき資金(資本的支出に充てるために交付された補助金、負担金その他これらに類する金銭又は物件(物件にあつては、その適正な見積価格をいう。)をいう。)をもつて取得したもので、減価償却を行なわなかつた部分に相当するものが滅失し、又はこれを譲渡し、撤去し、若しくは廃棄した場合に、損失を生じたときは、当該資本剰余金を取り崩して、減価償却を行なわなかつたことにより生じた損失をうめることができるものであること(施行令第二四条の二並びに施行規則第八条第四項、第九条第三項及び第一一条の二)

一二 欠損の処理

(一) 毎事業年度欠損を生じた場合においては、第一に前事業年度から繰り越した利益があるときは、その利益をもつて、第二には利益積立金をもつてうめ、なお欠損金に残額があるときは翌年度へ繰り越すものであること(法第三二条の二並びに施行令第二四条の三第一項及び第二項)

この場合において、利益の処分として特定目的のため積み立てた積立金又は資本剰余金があるときは欠損金の残額を繰り越すことなく、議会の議決を経て特定目的のための積立金をもつて欠損金をうめ、なお残額があるときは繰り越すか又は議会の議決を経て資本剰余金(一一の(三)の3により取り崩すことができる部分を除く。)をもつてうめ、なお残額があるときは、これを翌事業年度へ繰り越すことができるものであること(施行令第二四条の三第一項ただし書)

(二) 欠損金をうめるため、資本剰余金をとりくずす場合の順位は次によることが適当であること。

1 再評価積立金以外の資本剰余金

2 再評価積立金

一三 自己資本金への組み入れ

(一) 減債積立金を使用して借入資本金である企業債を償還した場合においては、その使用した減債積立金の額に相当する金額を自己資本金に組み入れなければならないものであること(施行令第二五条第一項)

(二) 建設又は改良を行なうため積み立てた積立金を使用して地方公営企業の建設又は改良を行なつた場合においては、その使用した積立金の額に相当する金額を自己資本金に組み入れなければならないものであること(施行令第二五条第二項)

(三) 利益剰余金の処分として積み立てた積立金を使用して借入資本金である一般会計等からの長期借入金に相当する金額を償還した場合には、その使用した積立金の額に相当する金額を自己資本金に組み入れなければならないものであること(施行令第二五条第三項)

(四) 地方公営企業の資産について再評価を行なつた場合における再評価額から再評価以前の帳簿価額を控除した額(再評価差額)のうち、再評価日現在における繰越欠損金の補てんにあてた残額は再評価積立金として資本剰余金に整理するものであるが、この再評価積立金については、再評価を行なつた翌々事業年度の末日後において自己資本金に組み入れることができるものであること(再評価規則第一〇条及び第一一条)

一四 資産の再評価

地方公営企業の資産は、企業会計制度の導入によつて資産の調査及び整理を行い得る資産台帳を備えることとなるが、一般私企業においては再評価はその任意とされているのと異なり、適正な減価償却の基礎を確立するための再評価を行わなければならないものとされているものであること(法附則第三項)。その細目については施行令附則第五項から第一一項までに規定するとともに、別に再評価規則に定めているものであること。

(一) 再評価し得る資産の範囲

1 地方公営企業の用に供する資産は、資産の適正な減価償却の基礎を確立するために現金、預金、貯金、貸付金、未収金、その他の債権、国債、地方債、社債、その他の有価証券、原材料、製品、半製品、貯蔵品及びその他のたな卸資産を除いて再評価しなければならない。この場合、有形減価償却資産、土地及びその他の事業用資産(立木を除く。)については、強制再評価であり、無形減価償却資産、土地の上に存する権利及び立木については、任意再評価であるが、無形減価償却資産以下の任意再評価の分についても民間企業における企業資本充実のための資産再評価等の特別措置法(昭和二九年法律第一四二号)の趣旨に鑑み努めて再評価をなすべきものであること。

2 地方公営企業法上における再評価とは、資産の帳簿価額を増額することを意味するのであるから、再評価の基準額又は陳腐化資産等について時価を基準として計算した再評価の基準額が再評価日直前の帳簿価額より低くなる場合において、その再評価額の基準額まで帳簿価額を減額することは、法による再評価とはなり得ないものがあること。

3 基準日において不動産又は船舶について、その所有権、地上権、永小作権、又は地役権の設定、保存、移転等の登記が未了である場合においても、その資産について再評価を行うことができるものであること。

4 基準日において有する資産を再評価日以前に処分した場合においては、その資産について再評価を行うことはできないが、再評価日において処分した場合においては、この資産について再評価を行う(又は行うことができる)ものであること。

5 請負契約により建設中である資産で注文者がまだ引渡しを受けていないものについて、所有権の移転が完了していない場合においては、注文者がその建設に要する金額の全部又は一部を支出し、その金額を建設仮勘定又は前渡金等として経理している場合においても注文者はその資産について再評価を行うことができないものであること。

6 一般会計又は国等と共有している資産については、原則としてその自己の持分についてのみ再評価を行う(又は行うことができる)ものであること。

7 割賦買入による固定資産で割賦金を完済するに至つてないものであつても(特に契約書をもつて完済時に所有権移転の旨を明らかにしているものを除く。)これを基準日現在において事業の用に供しており、且つ、資産として計上しているときは、再評価を行う(又は行うことができる)ものであること。

8 基準日現在においては、固定資産等再評価を行うことができる資産であつたものが再評価日現在においてたな卸資産等再評価を行うことができない資産となつたときにおいても、その資産については再評価を行つても差し支えないものであること。

9 家屋等の賃借等に伴つて支払われる権利金等については、再評価を行うことを認めないものであること。

10 創業費、公債発行差金、開発費等の繰延資産は、再評価を行うことを認めないものであること。

11 基準日において帳簿価額のないものについては再評価を行うことができないが当該資産を再評価日の直前において、取得価額に相当する金額をその帳簿価額として貸借対照表(貸借対照表の作成の基礎となる帳簿を含む。)に記載した資産については、再評価を行う(又は行うことができる)ものである。

(二) 合併の場合の再評価

法適用の地方公営企業を有する地方公共団体と同一種類の法未適用の公営企業を有する地方公共団体とが合併した場合においては、法未適用団体の企業資産については、合併の日又は合併の日以後一年以内に開始される事業年度開始の日の何れかの日現在において再評価を行うものであること。

(三) 用語の意義

1 基準日とは、その日現在に所有していた資産について再評価をしなければならない(又は再評価をすることができる)日を云うのであつて、昭和二七年三月三一日であること。

2 再評価日とは、その日現在において再評価を行うべき日をいうのであつて現実に帳簿の付替を行つた日をいうものでないこと。帳簿の付替は、再評価日を含む事業年度終了後一ケ月までに行わなければならないものであること。

3 有形減価償却資産には、遊休設備は含まれるが、建設中の資産は、含まれないものであること。但し、建設中の資産であつてもその一部が基準日までに完成し事業の用に供しているものは有形減価償却資産として、完成していないもの(請負工事によるものを除く。)はその他の事業用資産として、取り扱うものであること。

4 現金には、現金に準ずるもの即ち当座小切手、送金小切手、送金為替手形、預金手形、郵便為替証書、公社債の利札、振替貯金払出証書等を含むものであること。

5 その他の債権とは、前払金、仮払金、立替金及び保険払込金等をいうものであること。

6 その他の有価証券とは、受取手形、貨物引換証、船荷証券及び商品券等をいうものであること。

7 貯蔵品とは、セメント、鉄(鋼)管、石炭、電線、軌条及び枕木等工事材料並びに耐用年数一年未満又は一定金額以下の工具器具備品で減価償却資産として取扱わなかつたもの等をいうものであること。

8 その他のたな❜❜卸資産とは、副産物、仕掛品及び作業屑等をいうものであること。

9 土地の上に存する権利とは、永小作権、地役権及び地上権並びに借地権たる賃借権をいうものであること。なお、養魚場、プール及び貯水ポケット等は構築物として処理するものであること。

10 その他の事業用資産とは、基準日において製作中の資産又は改良中の資産の改良に係る部分及び電話加入権をいうものであること。

11 取得(製作及び改良を含み、立木にあつては、植林、管理等の行為を含む。但し、これ等のために要した金額が費用とされた場合を除く。)するために要した金額とは、その資産の価額として帳簿書類に計上した金額をいうのではなく、その資産を取得するために現実に支出した金額又は支出すべき金額をいうものであること。なお、左の各号に掲げる資産については、当該各号に掲げる価額をそれぞれの取得価額とするものであること。

(1) 資産の取得にあたり、その価額の外に要した仲介手数料、改良費、運賃等をその資産の取得価額に加えて計上した場合においてはこれ等の金額を含めた価額をその資産の取得価額とするものであること。

(2) 交換に因り取得した資産については、その受入価額をその取得価額とするものであること。

(3) 資産を取得した時において、その価額が確定していないものについては、再評価を行う時までにその価額が確定した時はその金額を、その時までに確定していない場合においては、その資産にかかる概算請求書、見積書等によりその取得価格を見積るものであること。

(4) 自己の製作又は製造に係る資産を自己の使用に供した場合においては、その資産を自己の使用に供する資産として帳簿の付替を行つた最初の帳簿価額をその資産の取得価額とするものであること。

(5) 工具、器具、備品等を取替えた場合は、その新に取得したものの価額を資産としないで取替費として損金に計上するものであるが、最初に取得したものの価額をその資産の取得価額として再評価を行うことができるものであること。

(6) 基準日において製作中の資産又は改良中の改良に係る部分については、基準日までに完成した部分に相当する資産の製作又は改良のために要した金額をその取得価額とするものであること。

12 資産の取得後再評価日前にその一部が滅失した資産について、改良管理等に因り二以上の取得価額がある場合は、その滅失した部分に対応する金額を控除した後の金額を取得価額とするものであること。この場合の取得価額は、その滅失した部分に対応する金額が明らかである場合を除いて左の算式によつて計算した金額とするものであること。但し、その滅失した部分に対応する金額をもつとも古い取得価額よりなるものとして順次控除することを妨げないものであること。

取得価額A+取得価額B+取得価額C=総取得価額

滅失した部分の帳簿価額/滅失時の資産の帳簿価額=滅失率

取得価額A×(1-滅失率)=取得価額A

取得価額B×(1-滅失率)=取得価額B

取得価額C×(1-滅失率)=取得価額C

13 取得の時期とは、再評価を行う資産の所有権を取得した日の属する時期をいうものであること。なお、左の各号に掲げる資産については、当該各号に掲げる時期をそれぞれ取得の時期とするものであること。

(1) 取得した資産を仮勘定等で経理し事業年度末においてそれぞれの資産勘定に振替えた場合においてもその取得の時期は、その資産の所有権を取得した日の属する時期をいうものであること。但し、その時期が明らかでない資産については、その振替えた日の属する時期をその取得の時期としても差支えないものであること。

(2) 不動産又は船舶について、所有権を取得した日とその登記した日とが異なるものについては、その資産の取得の時期は、その所有権を取得した日とするものであること。但し、所有権を取得した日が明らかでない場合においては登記の日の属する時期を取得の時期としても差支えないものであること。

(3) 資産の引渡しを受けた時においてその対価が確定していない資産の取得の時期は、その対価の確定した日の属する時期ではなく引渡しを受けた日の属する時期とするものであること。

(4) 自己の製作又は製造に係る資産を自己の用に供した場合は、その資産を自己の用に供した日の属する時期をその取得の時期とするものであること。

(四) 再評価の基準額

1 再評価規則第三条及び第四条に規定された再評価の基準額、第四条の二及び第四条の三に規定された再評価の範囲額(以下再評価の基準額という。)は、個々の資産について規定されたものであるから、原則として個々の資産について生じた基準額又は基準額と再評価額との差額を通算することは出来ないものであること。但し、綜合償却資産に含まれる個々の資産の使用可能年数が異なつたため、綜合償却資産に応ずる再評価規則別表第一の注の倍数により計算した再評価の基準額が基準日におけるそれぞれの資産の価額に比較して著しく不均衡である場合には、その価額の均衡を保つように再評価の基準額の範囲内において個々の資産について再評価の基準額を調整することができるものであること。而して再評価規則第九条の陳腐化した資産等に関する規定は、調整後の基準額について適用するものであること。

2 地方公営企業以外の企業が新たに法の規定の全部又は財務規定等を適用する場合又は新たに地方公営企業になつた場合においても資産の再評価を行なうものであるが、この場合の再評価を行なう日は、法の規定の全部又は財務規定等の適用の日又は適用の日以後一年以内に開始する事業年度開始の日のいずれかの日であり、当該再評価の基準額は、再評価規則第三条、第四条、第四条の二又は第四条の三の規定により算出した基準額から、昭和二七年四月一日以後当該再評価日までの間に減価償却をした場合におけるその期間に応ずる減価償却額(施行規則第八条又は第九条の規定により算出した各事業年度の減価償却額の累計額)を控除した金額とするものであること(施行令附則第一一項及び再評価規則第四条の四第一項)

3 再評価規則第三条、第四条、第四条の二及び第四条の三の規定により個々の資産について算出した再評価の基準額に一〇〇円未満の端数が生じた場合には、その端数は切り捨てても差支えないものであること。再評価を行う資産の取得価額に一〇円未満の端数がある場合においては、その端数を切捨てても差支えないものであること。

4 工具、器具、備品、運搬具(鉄道又は軌道用車りよう(いわゆるトロッコその他これに準ずるものを除く。)及び自動車以外の車りよう及び運搬具であつて、その再評価額が二〇万円以下のもの)並びに再取得価額(その資産を新しく取得するために要する金額)二〇万円以下の機械及び装置でその種類、取得の時期、耐用年数が同一であるものについては、個々の資産の取得価額により再評価額を計算しないでこれらの帳簿書類に付せられた科目別に、その取得額の合計額に基き再評価額を計算することも差支えないものであること。

5 耐用年数の全部又は一部を経過した減価償却資産を取得し、規則別表第二号注第二号の規定により別に残存耐用年数を定めた場合においては、その定めた耐用年数により再評価額を算出するものであること。

6 再評価規則第三条第二項のうち「製作又は改良」とは、企業がみずから製作又は改良を行つた場合をいうものとし請負契約により製作又は改良を行つた場合において引渡しを受けないものを含まないものであること。

7 資産の取得後基準日までに改良等が行われた場合には、一つの資産につき二以上の取得価格があることになるが、この場合においても、その資産の再評価の基準額は、これらの取得価額にそれぞれの倍数を乗じて計算した金額の合計額とするものであること。

この場合において、取得価額にその倍数を乗じて計算した金額がその取得価額以下となるものがある場合においても、その資産の基準額は、それぞれの取得価額にそれぞれの倍数を乗じて計算した金額の合計額とするものであること。

(五) 再評価に関する経理

地方公共団体がその日現在において再評価を行つたものとした日(再評価日)後において現実に帳簿価額の付替を行つた場合においては、再評価に関する仕訳(増額した評価額、増加償却額、取得価額に相当する金額等に関する仕訳)は、その日付のみを再評価日とし、現実に帳簿の付替を行つた日において一括して行うことも差支えないものであること。

(六) 再評価積立金

1 再評価を行つた地方団体は、再評価に係る再評価差額(当該資産の再評価額から再評価日の直前における帳簿価額を控除した金額)、または、当該差額から損失の補てんに充てた金額を控除した残額を再評価積立金として再評価日において積立てなければならないものであること。

2 第一次再評価の場合再評価した資産について昭和二九年四月一日現在で帳簿価額を減額するものがあるときは、第二次再評価の場合の再評価差額から上記減額に係る金額を控除した金額を第二次再評価の場合の再評価積立金とするも差支えないものであること。なお、帳簿価額を減価した金額が、第二次再評価の場合の再評価差額を超える場合は、その金額に相当する金額だけ自己資本金の減少となるものであること。

3 再評価積立金は一三の(四)に示したように再評価日の属する事業年度の翌々事業年度の末日後において自己資本に組み入れることができるものであること(再評価規則第一一条)

(七) 再評価資産についての償却額の計算

地方公営企業は、再評価を行なつた減価償却資産について当該再評価日以後その再評価額に基づいて施行規則の定めるところにより計算した減価償却額を損益勘定のうち費用勘定に算入しなければならず、その計算に用いる減価償却資産に係る耐用年数は、施行規則別表第二号及び第三号に定める耐用年数から昭和二七年四月一日の属する年度以後再評価日の属する年度の直前の年度までの年数を差し引いた年数とするものであること。この場合において、有形減価償却資産の減価償却は、当該資産の帳簿価額が再評価額の一〇〇分の五に相当する金額になるまで行ない、無形減価償却資産の減価償却は帳簿価額がなくなるまで行なうものであること。ただし、鉄骨鉄筋コンクリート造の建物等施行規則第八条第三項各号に掲げる資産については、当該資産の帳簿価額が再評価額の一〇〇分の五に相当する金額になつた後においても、さらに一円になるまで減価償却を行なうことができるものであること(再評価規則第一二条及び施行規則第七条から第九条まで)

(八) 再評価の報告書の提出

再評価を行つた場合は、再評価日以後三月以内に別表様式により自治大臣に再評価の報告をしなければならないものであること(施行令附則第一〇号)

一五 資産の評価基準

(一) 地方公営企業の資産の帳簿価額はすべて取得に要した価額又は出資した金額とすること(施行規則第三条第一項本文)。即ち取得原価主義を建前として、評価するものであること。

この場合の取得に要した価額にはこの資産を取得するために要した直接の経費はすべて含まれるもので、例えば、材料購入の際の運搬費の如きものも加算されるものであること。無償で譲り渡しをうけた資産の価額は、そのものの取得年度、損耗度合、時価等を勘案して適正に見積つた価額にすべきものであること(施行規則第三条第一項但書)

これらの資産が滅失し、若しくは償還され、又はこれを譲渡し、撤去し、若しくは廃棄された場合は、それらの割合に応じてその帳簿価額を減額しなければならないものであること(施行規則第三条第二項)。たな卸資産が損耗した場合も同様な整理を行うべきものであること。

帳簿価額を減額すべき場合、その資産が減価償却の対象であり、減価償却累計額がある場合は、その対応する累計額を減額すべき資産価額から控除した残額を費用勘定に除却損として計上しなければならないものであること。

固定資産を撤去した場合、この撤去物件のうち再用品とするものについてはその資産に対応する減価償却累計額がある場合は、帳簿価額からこの累計額を控除した残額以内の価額で流動資産に振り替えるものであること(施行規則第三条第三項)

(二) 地方公営企業のたな卸資産の受払については、継続記録法によつて行うべきものであること。なお、この整理については特別なものは個別法によることも差し支えないのであるが、これ以外の一般たな卸資産については、先入先出法か或いは移動平均法によつて整理し、しかも、毎年度同一方法で継続して行い、特別の事由がなければみだりに変更してはならないものであること(施行規則第五条)

たな卸資産の実地たな卸は毎年一回以上必ず実行し、その帳簿価額の正確を期すべきものであり、その回数方法等については企業管理規程で定めて励行すべきものであること。

一六 減価償却

(一) 地方公営企業の固定資産は、土地、立木及び建設仮勘定を除いては必ず減価償却を行い、その減価償却費は損益勘定中の費用に計上すべきものであること(施行規則第六条本文)

(二) この減価償却をすべき資産のうち企業管理規程で定めるものを取替資産とすることができるものであること(施行規則第六条但書)

(三) 有形固定資産の減価償却は定額法又は定率法の方法を以つて行い、無形固定資産の減価償却は定額法によつて行うものであること。なお、同一事業の中で、資産の種類により、減価償却の方法を異にして償却を行なうときは、建物、機械装置等の別表第二号に定める種類の区分ごとに行ない、定額法又は定率法の何れの方法によるべきかは、資産の性質を充分考慮して定めるべきものであること(施行規則第七条第一項)

(四) 取替資産の減価償却は、これらの方法によらず、取替法によつて行うことができるものであること(施行規則第七条第三項)

(五) 法定事業及び病院事業以外の事業について、有形固定資産の減価償却を定額法又は定率法によつて行ない難い特別の理由があるときは、管理者は、自治大臣又は都道府県知事の承認を得て、別に減価償却の方法を定めることができるものであること。この場合の減価償却の方法としては、有料道路事業のごとく、その性質上、定額法又は定率法以外の方法による減価償却を行なうことが適当と考えられる場合がある事業について、客観的に妥当と認められる範囲において特例的に認められる利用高比例法等が予想されるものであること(施行規則第七条第三項)

(六) いずれの方法によつても、その方法を毎年継続して行うものであつて、特別の事由がなければ、みだりに変更してはならないものであること。

(七) 有形固定資産の減価償却は、資産の帳簿原価の一〇〇分の五に相当する金額に達するまで行ない、無形固定資産の減価償却は、帳簿価額がなくなるまで行うものであること(施行規則第八条第一項、第九条第一項)。ただし、左に掲げる有形固定資産については、帳簿原価の一〇〇分の五に相当する金額に達するまで減価償却を行なつた後においてなお事業の用に供されている場合には、その帳簿原価の一〇〇分の五に相当する金額に達した翌事業年度から、その有形固定資産が使用不能となるものと認められる事業年度までの各事業年度において、帳簿価額が一円に達するまで減価償却を行なうことができるものであること(施行規則第八条第三項)

1 鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造、れんが造、石造及びブロック造の建物

2 鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリート造、コンクリート造、れんが造、石造及び土造の構築物及び装置

(八) 償却資産の各事業年度の減価償却額は、別表第二号又は別表第三号に定める耐用年数に応じ、定額法によつて行なう場合には、その資産の帳簿原価の一〇〇分の九〇に相当する額(無形固定資産にあつては当該帳簿原価)に、定率法によつて行なう場合には当該事業年度開始の時における帳簿価額に別表第四号に掲げる償却率を乗じて算出した金額とするものであること。ただし、別表第二号又は別表第三号に定める耐用年数により難い特別の事由があるときは、自治大臣又は都道府県知事の承認を得て、別の耐用年数によることができるものであるが、より難い特別の事由とは、その償却資産の材質又は製作方法が同種の償却資産の通常の材質又は製作方法と著しく異なるものである場合等で、通常の耐用年数によつて減価償却を行なうことが明らかに不合理であると認められることをいうものであること(施行規則第八条第五項及び第九条第四項)

(九) 地方公営企業の経営の健全性を確保するために必要がある場合には、直接営業の用に供する償却資産について、各事業年度の通常の減価償却額に一〇〇分の五〇をこえない率を乗じた額を加えた金額を各事業年度の減価償却額とすることができるものであること(施行規則第八条第二項及び第九条第二項)

(一〇) 地方公営企業の固定資産で、資本的支出に充てるために交付された補助金、負担金、その他これらに類する金銭又は物件(物件にあつてはその適正な見積価額をいう。以下「補助金等」という。)で取得したものについては、その固定資産の取得に要した価額から取得のために充てた補助金等の金額を控除した金額を帳簿原価又は帳簿価額とみなして、(七)の本文により各事業年度の減価償却額を算出することができるものであること(施行規則第八条第四項及び第九条第三項)

(一一) 有形固定資産の減価償却費は帳簿価額から直接控除することなく、減価償却累計額として毎年度累積して行くものであり、無形固定資産の減価償却費は帳簿価額から直接減額するものであること。

(一二) 地方公営企業の固定資産の減価償却は原則として資産を取得した翌年度から行なうものであるが、取得した当月又は翌月から月割によつて減価償却を行なうことも差し支えないものであること(施行規則第八条第六項及び第九条第五項)

(一三) 減価償却累計額は、その資産の価額を減額する場合の外減額してはならないものであること(施行規則第八条第七項)。この場合において一体として減価償却を行なつている有形固定資産を撤去するときは、その撤去の日の属する事業年度の直前の事業年度末の減価償却累計額に、その撤去資産の価額の同事業年度末の減価償却の対象となる有形固定資産の総額に対する割合を乗じて算出した額を、その撤去資産に対応する減価償却累計額として減額するものであること(施行規則第八条第八項)

(一四) 地方公営企業の償却資産で施行規則別表第二号又は別表第三号に掲げられていない固定資産の耐用年数は、財政局長の定めるところによるものであること。これらに耐用年数の定めのないものについてはこれらに掲げる資産の耐用年数に準ずるか又は減価償却資産の耐用年数に関する省令(昭和四〇年大蔵省令第一五号)別表第一、別表第二又は表第三に規定する耐用年数を用いること。

一七 計理状況の報告

管理者は、毎月末日をもつて試算表その他当該企業の計理状況を明らかにするために必要な書類即ち資金予算表(施行規則第一一条及び別表第二〇号)を作成し、翌月二〇日までに当該地方公共団体の長に提出しなければならないものであること(法第三一条)。この試算表及び資金予算表をもつて監査委員の例月検査を受けるよういたされたいこと。

資金予算表中収入科目には、営業収益、営業外収益、特別利益、固定資産売却代金、企業債、出資金、一般会計等からの長期借入金、一般会計等への長期貸付金償還金、補助金、工事負担金、前年度以前の未収収益、同未収金、一時借入金、前受収益及び前受金等が予想され、支出科目には、営業費用、営業外費用、特別損失、建設改良費、企業債償還金、一般会計等からの長期借入金償還金、一般会計等への長期貸付金、前年度以前の未払費用、未払金、前払金、前払費用及び仮払金等が予想されるものであること。

一八 資産の取得、管理及び処分

(一) 地方公営企業の用に供する資産の取得、管理及び処分は、管理者が行なうものであること(法第三三条第一項)。なお、その資産には、地方自治法第二三八条第二項の行政財産のみならず同項の普通財産も含まれるものであること。

(二) 次表に掲げる地方公営企業の用に供する資産の取得又は処分でその予定価格(適正な対価を得てする売払い以外の方法による譲渡にあつては、その適正な見積価額)の金額が同表に掲げる金額を下らない範囲で条例で定める重要なものについては、予算で定めなければならないものであること(法第三三条第二項並びに施行令第一七条第一項第一二号、第二六条の三及び別表(第二六条の三関係))

不動産若しくは動産の買入れ若しくは譲渡(不動産の信託の場合を除き、土地については、その面積が都道府県にあつては一件二万平方メートル以上、指定都市にあつては一件一万平方メートル以上、市町村にあつては一件五千平方メートル以上のものに係るものに限る。)又は不動産の信託の受益権の買入れ若しくは譲渡

都道府県 七〇、〇〇〇千円

指定都市 四〇、〇〇〇千円

(指定都市を除く。) 二〇、〇〇〇千円

町村 七、〇〇〇千円

なお、このことに伴い地方公営企業の用に供する資産の取得、管理及び処分については、一件ごとについての地方公共団体の議決は経る必要がないものであること(法第四〇条第一項)

(三) 地方公営企業の用に供する行政財産を地方自治法第二三八条の四第三項の規定によりその用途又は目的を妨げない限度において使用させる場合に徴収する使用料に関する事項については、管理者が定めるものであること(法第三三条第三項)

一九 契約

地方公営企業の業務に関する契約については、入札保証金及び契約保証金の率又は額を管理規程で定めること(施行令第二一条の一四)を除き、地方自治法及び地方自治法施行令の規定が適用になるものであること(地方自治法第二三四条から第二三四条の三まで及び地方自治法施行令第一六七条から第一六七条の一六まで参照)

二〇 公金の徴収又は収納の委託

(一) 管理者は、地方公営企業の業務に係る公金の徴収又は収納の事務について、収入の確保及び住民の便益の増進に寄与すると認める場合に限り、私人に委託することができるものであること(法第三三条の二)。この場合において、管理者は、次の基準に該当する場合に限り、当該事務を委託するものとし、安易に委託することは厳にいましめるべきものであること。

1 その私人に公金の徴収又は収納の事務を委託することにより当該地方公営企業の経済性がよりよく発揮され、かつ、住民の便益の増進が確実に期せられること。

2 委託された事務を充分遂行する意思と能力を有する私人であること。

3 委託された場合において、徴収又は収納された公金の保管が安全であると認められること。

(二) 公金の徴収又は収納の事務の私人への委託は、住民の便益及び地方公営企業の収入の確保に関する事項であることにかんがみ、当該委託については、次の手続が必要であるものであること。

1 管理者は、公金の徴収又は収納の事務を私人に委託したときは、その旨を告示し、かつ、当該公金の納入義務者の見やすい方法により公表しなければならないものであること(施行令第二六条の四第一項)

2 公金の徴収又は収納の事務の委託を受けた者は、管理規程の定めるところにより、その徴収し又は収納した公金を、その内容を示す計算書をそえて、管理者又は出納取扱金融機関若しくは収納取扱金融機関に払い込まなければならないものであること(施行令第二六条の四第二項)

3 管理者は、その命じた職員に公金の徴収又は収納の事務の委託を受けた者の当該公金の徴収又は収納に関する帳簿、書類その他の物件を検査させることができるものであること(施行令第二六条の四第三項及び第二一条の一一第三項)

二一 職員の賠償責任

地方自治法第二四三条の二の規定は、地方公営企業の業務に従事する職員の賠償責任について次のように準用するものであること(法第三四条)

1 管理者若しくは出納その他の会計事務及び決算の調製事務について管理者の権限を行なう者若しくは管理者若しくは管理者の権限を行なう者の出納その他の会計事務及び決算の調製事務を補助する職員又は地方公営企業の業務に関し、資金前渡を受けた企業職員その他の地方公共団体の職員、占有動産を保管している地方公営企業の職員又は物品を使用している地方公営企業の職員が故意又は重大な過失(現金については、故意又は過失)により、その保管に係る現金、有価証券、物品若しくは占有動産又はその使用に係る物品を亡失し、又は損傷したときは、これによつて生じた損害を賠償しなければならないものであること。

2 地方公営企業の業務に係る支出負担行為、支出若しくは支払又は地方自治法第二三四条の二第一項の監督若しくは検査を行なう権限を有する地方公営企業の職員又はその権限に属する事務を直接補助する地方公営企業の職員で地方公共団体の規則又は企業管理規程で指定したものが故意又は重大な過失により法令の規定に違反して当該行為をしたこと又は怠つたことにより地方公共団体に損害を与えたときは、当該損害を賠償しなければならないものであること。

3 1及び2の場合において、その損害が二人以上の職員の行為によつて生じたものであるときは、当該職員は、それぞれの職分に応じ、かつ、当該行為が当該損害の発生の原因となつた程度に応じて賠償の責めに任ずるものであること。

(二) 賠償の命令

1 管理者(管理者が置かれていない地方公営企業にあつては、地方公共団体の長)は、(一)の職員が(一)の行為によつて当該地方公共団体に損害を与えたと認めるときは、監査委員に対し、その事実があるかどうかを監査し、賠償責任の有無及び賠償額を決定することを求め、その決定に基づき、期限を定めて賠償を命じなければならないものであること。

なお、当該監査委員の意見の決定は、監査委員の定数が二人以上である場合においては、その合議によるものであること。

2 (一)の1の場合にあつてはその事実を知った日から、(一)の2の場合にあつてはその事実の発生した日から三年を経過したときは、1にかかわらず、賠償を命ずることはできないものであること。

(三) 賠償責任の全部又は一部の免除

1 (二)の1により監査委員が賠償責任があると決定した場合において、管理者(管理者が置かれていない地方公営企業にあつては、地方公共団体の長)は、当該職員からなされた当該損害が避けることのできない事故その他やむを得ない事情によるものであることの証明を相当と認めるときは、賠償責任の全部又は一部を免除することができるものであること。ただし、条例で定める場合には、議会の同意を得なければならないものであること。なお、管理者限りで賠償責任を免除することができる途を開いたのは、地方公営企業の特質にかんがみ必然的に日常定型的に発生するものについては管理者の権限と責任において弾力的に処理し企業の能率的運営を確保しようとする趣旨であるので、条例には例えば一定金額以上というように特に賠償責任の重大なものに限つて規定することが適当であること。また、当該同意を求めるにあたつて、当該地方公営企業に管理者が置かれているときは、管理者は当該同意を求める議案の作成に関する資料を作成して地方公共団体の長に送付し、地方公共団体の長は、この資料に基づいて当該同意を求める議案を作成し、議会に提出しなければならないものであること。

2 1の免除を行なう場合において管理者(管理者が置かれていない地方公営企業にあつては、地方公共団体の長)は、あらかじめ監査委員の意見をきかなければならないものであること。なお、地方公共団体の長は、1の免除について同意を求める議案を議会に提案するときは、この監査委員の意見もあわせて議会に付議しなければならないものであること。

また、監査委員の意見の決定は、監査委員の定数が二人以上である場合においては、その合議によるものであること。

(四) 不服申立て

(二)の処分に不服がある者は、次のように当該処分について不服申立てができるものであること。

1 (二)の処分に不服がある者は、当該地方公共団体の長に当該処分について審査請求((二)の処分を行なつた者(以下「処分者」という。)が地方公共団体の長であるときは、異議申立て。以下1において同じ。)をすることができるものであること。この審査請求があつたときは、当該地方公共団体の長は議会に諮問して当該審査請求について議決(異議申立てについては、決定)しなければならず、当該議会はこの諮問があつた日から二〇日以内に意見を述べなければならないものであること。

2 (二)の処分に不服がある者で1の地方公共団体の長の審査請求についての裁決(処分者が地方公共団体の長であるときは、異議申立てについての決定)に不服があるものは、処分者が都道府県(都道府県の加入する一部事務組合を含む。)が経営する地方公営企業の管理者又はその地方公共団体の長である場合には自治大臣に、処分者が都道府県以外の地方公共団体の経営する地方公営企業の管理者又は当該地方公共団体の長である場合には都道府県知事に再審査請求(処分者が地方公共団体の長である場合には、審査請求)をすることができるものであること。

(五) (一)によつて損害を賠償しなければならない場合においては、(一)の職員の賠償責任については、賠償責任に関する民法の規定は、適用しないものであること。なお、(一)によつて損害を賠償しなければならない場合以外の損害賠償については、(一)は賠償責任に関する民法の規定の適用を排除するものではないものであること。

第四 企業職員の身分取扱いに関する事項

企業職員の身分取扱いについては、法は地方公務員法に対する特例を定めたものであり、法に特別の定めがあるもの及び地方公営企業労働関係法に定めのあるものを除くほか、地方公務員法の定めるところによるものであること(法第六条及び第三六条から第三九条まで)

一 労働関係

企業職員の労働関係については、地方公営企業労働関係法の定めるところによるものであること(法第三六条)

二 職階制

企業職員については、地方公務員法第二三条の規定は適用されず(法第三九条第一項)、職階制の実施は任意であり、かつ、その実施は管理者が行なうものであること(法第三七条第一項)。なお、この職階制を実施する場合においては、企業職員の職を職務の種類及び複雑と責任の度に応じて分類整理しなければならないものであること(法第三七条第二項)

三 給与

企業職員の給与については、企業の特殊性にかんがみ、地方公務員法第二四条から第二六条までの規定は適用されず、給与の性格、決定等について次のように定められているものであること(法第三八条)。なお、企業職員の給与に関する事項は、団体交渉の対象となりうるものであり、これについては地方公営企業労働関係法中に所要の規定が設けられているものであること(地方公営企業労働関係法第七条から第一〇条まで)

1 企業職員の給与は、その職務に必要とされる技能、職務遂行の困難度等職務の内容と責任に応ずるものであり、かつ、職員の発揮した能率が充分に考慮されるものでなければならないものであること(法第三八条第二項)。すなわち、企業職員の給与の性格は、いわゆる職務給であることに加え、職務遂行にあたつて職員の発揮した能率が給与の面に充分考慮されるいわゆる能率給でなければならないことが法文上明確にされているものであること。したがつて、職務の内容と責任、職員の勤務成績と無関係に年功序列のみによつて決定されるような給与は、法律の趣旨に反するものであること。

2 企業職員の給与は、生計費、同一又は類似の職種の国及び地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与、当該地方公営企業の経営の状況その他の事情を考慮して定めなければならないものであること(法第三八条第二項)。企業職員の給与を決定するにあたつて考慮すべき公務員等の給与は、同一又は類似の職種のそれであることに留意する必要があること。したがつて、企業職員についてその職種に関係なく一律に国又は地方公共団体の行政事務に従事する職員の給与と同一の給与を定めたり、当該企業の経営の状況と全く無関係に給与を定めたりするようなことは、法律の趣旨に反するものであること。

3 企業職員の給与の種類は、給料及び手当とされているものであり(法第三八条第一項)、各企業における企業職員の給与の具体的な種類及び基準は、条例で定めるものであること(法第三八条第四項)。なお、給与の額は、支給方法等の細目的事項は、管理規程で定めるものであること(法第九条第二号)

四 地方公務員法の適用除外

企業職員については、地方公務員法第五条、第八条(第一項第五号、第三項及び第四項を除く。)、第二三条から第二六条まで、第三七条、第三九条第三項、第四〇条第二項、第四五条第二項から第四項まで、第四六条から第四九条まで、第五二条から第五六条まで及び第五八条並びに行政不服審査法(昭和三七年法律第一六〇号)の規定は適用されず(法第三九条第一項)、企業職員のうち指定職員(政令で定める基準に従い地方公共団体の長が定める職員をいう。)以外の職員については、地方公務員法第三六条の規定は適用されないものであること(法第三九条第二項及び地方公営企業法第三九条第二項の規定に基づき地方公共団体の長が定める職の基準に関する政令)。したがつて、人事委員会(公平委員会)では、企業職員の身分取扱いについては、任用に関する部分を除き原則として干与しないものであること。また、企業職員の任用、分限及び懲戒、服務(争議行為等の禁止に関する規定及び指定職員以外の職員については政治的行為の制限に関する規定を除く。)、研修及び勤務成績の評定(人事委員会の権限に関する規定を除く。)、福祉等については、他の一般職に属する地方公務員と同様の取扱いを受けるものであること。おつて、地方公務員法第三七条の規定が企業職員に適用されないのは、争議行為等を企業職員に認める趣旨ではなく、これについては企業職員の労働関係として地方公営企業労働関係法中に相当規定が設けられているものであること(地方公営企業労働関係法第一一条及び第一二条参照)及び企業職員については、労働基準法の全面的適用があることに注意すること。

第五 一部事務組合に関する特例に関する事項

一 組織に関する特例

(一) 地方公営企業の経営に関する事務を共同処理する一部事務組合の名称は、その経営する事業内容を明確に反映させるため、企業団としていること(法第三九条の二第一項)

(二) 企業団の管理者の名称は、企業長とし、企業団には、組織の一元化をはかるため地方公営企業の管理者を置かず、当該管理者の権限は、企業長が行なうものであること(法第三九条の二第二項)

(三) 企業長は、企業団の規約で別段の定めをしない限り、地方公営企業の経営に関し識見を有する者のうちから、企業団を組織する地方公共団体の長が共同して任命するものであること(法第三九条の二第三項)。企業団の円滑な運営を確保するためには、企業団を組織するすべての地方公共団体の長の信頼の下に企業長が業務を執行することが必要であるので、企業長の選任方式は原則的には共同任命としているものであるが、企業団設立の事情等によりこの方式により難い場合もあるので、規約で別段の定めをすることができるものであること。なお、企業長は、常勤の特別職とし、企業長の欠格事由、任期、罷免、懲戒、失職、兼業禁止等については、地方公営企業の管理者及び委員会の委員等に関する規定が準用されるとともに、企業長には秘密を守る義務に関する地方公務員法第三四条の規定が準用されるものであること(法第三九条の二第四項、第七条の二第二項及び第四項から第一〇項まで、地方自治法第一八〇条の五第六項から第八項まで並びに地方公務員法第三条第三項第一号の三及び第三四条)

(四) 企業団には、その経営する企業の適切な運営を期するため、監査委員を置き、その定数は企業団の規約で定めるところにより二人又は一人とし、監査委員は、企業長が企業団の議会の同意を得て、人格が高潔で、事業の経営管理に関し優れた識見を有する者のうちから選任するものであること(法第三九条の二第五項及び第六項)。なお、監査の対象が、もつぱら企業の経営に関する事務のみを共同処理する企業団であるから、必ずしも常勤の監査委員を置くこととする必要はなく、また、当該企業団を組織する地方公共団体の監査委員をして兼務せしめることも差し支えないものであること。

(五) 企業団の議会の議員の定数は、地方公営企業の能率的運営確保の見地から必要最少限にとどめるものとし、一五人をこえることができないものであること(法第三九条の二第七項)

(六) 監査委員及び議会の補助組織の職員については、原則として企業職員のほかに専任の職員を置くことなく、企業職員をして監査委員等の補助組織の職員を兼ねさせることが適当であること。

二 財務に関する特例

(一) 企業団における地方公営企業以外のすべての財務、たとえば企業団の議会及び監査委員等に関する財務についても、企業団における財務を一元化するため、法の財務に関する規定(法第一七条から第三五条まで並びに附則第二項及び附則第三項)の適用があるものであること(法第三九条の三第一項)。したがつて、企業団の財務はすべて法で定める発生主義に基づく企業会計方式によつて行なうものであるとともに、出納その他の会計事務は企業長が行なうものであり、出納長又は収入役は置かないものであること。また、この場合においては、地方公営企業に係る経費以外の経費も、地方公営企業の経費とあわせて当該地方公営企業の会計に計上して経理するものであるが、企業団において二以上の地方公営企業を経営し、それぞれ特別会計を設けて経理している場合にあつては、当該地方公営企業に係る経費以外の経費を、これらの地方公営企業に専属する収益又は費用の総額等によつてあん分し、それぞれの会計において経理することが適当であること。ただし、これら二以上の地方公営企業のうち一がその規模において著しく大きい場合には、企業団における地方公営企業に係る経費以外の経費を、当該規模の大きい地方公営企業の会計において経理することとしても差し支えないものであること。

(二) 企業団とこれを組織する地方公共団体との間の経費の負担区分を明確化するため、法第一七条の二から第一八条の二まで並びに施行令第八条の五及び附則第一四項の規定は、企業団を組織する地方公共団体の当該企業団に対する経費の負担、補助、出資及び長期の貸付けについて準用されるものであること(法第三九条の三第二項及び施行令第二六条の五)

(三) 法第二条第二項又は第三項の規定により法の財務規定等のみが適用される企業の経営に関する事務を共同処理する一部事務組合についても、前記(一)及び(二)に示した財務に関する特例が準用されるものであること(法第三九条の三第三項及び施行令第二六条の五)

第六 雑則に関する事項

一 地方自治法の適用除外

(一) 地方公営企業の業務に関する契約の締結並びに財産の取得、管理及び処分については、地方自治法第九六条第一項第五号から第八号まで及び第二三七条第二項及び第三項の規定にかかわらず、条例又は議会の議決によることを要しない(法第四〇条第一項)

(二) 地方公営企業の業務に関する負担附きの寄附又は贈与の受領、地方公共団体がその当事者である審査請求その他の不服申立て、訴えの提起、和解、あつせん、調停及び仲裁並びに法律上地方公共団体の義務に属する損害賠償の額の決定については、条例で定めるものを除き、地方自治法第九六条第一項第九号、第一二号及び第一三号の規定は、適用しないものであること(法第四〇条第二項)。なお、当該条例には、係争金額の多額なもの、事案の複雑なもの等重要な事案に限定して規定すべきものであること。

二 業務状況の報告

住民の福祉の増進を目的としている地方公営企業の経営について住民に判断の資料を与えるため管理者は、条例で定めるところにより、毎事業年度少くとも二回以上当該地方公営企業の業務の状況を説明する書類を当該地方公共団体の長に提出し、長は遅滞なくこれを公表するものであること(法第四〇条の二第一項)。地方公営企業についてはこの長の行なう公表をもつて地方自治法第二四三条の三第一項の規定により毎年二回以上地方公共団体の長の行なう財政状況の公表とみなすものであること(法第四〇条の二第二項)

三 助言等

(一) 自治大臣は、地方公営企業が経営の基本原則に合致して経営されるように、地方公営企業を経営する地方公共団体に対し、助言し、又は勧告することができるものであること(法第四〇条の三第一項)

(二) 自治大臣は、助言又は勧告を行なう必要がある場合においては、地方公共団体に対し、地方公営企業の経営に関する事項について報告を求めることができるものであること(法第四〇条の三第二項)

(三) 報告は、都道府県又は六大市(都道府県又は六大市の加入する一部事務組合を含む。以下同じ。)にあつては自治大臣に、その他の地方公共団体にあつては都道府県知事を経由して自治大臣に提出するものであること(施行令第二八条第一項)

(四) 地方公営企業を経営する地方公共団体又は地方公営企業以外の企業を経営する地方公共団体が法の規定の全部、財務規定等又は財務規定等を除く法の規定の適用を受け、又は受けないこととなつた場合においては、遅滞なく、それぞれその旨を地方公営企業法適用状況異動報告書により前記(三)の方法によつて、自治大臣に報告しなければならないものであること(施行令第二八条第二項及び第三項)

(五) 右の報告書を作成するに際しては、次の事項に留意すること(施行規則別表第二一号)

1 所在地欄には当該地方公営企業の主たる事務所の所在地を記載すること。

2 適用方法欄には、法第二条第一項の規定により法の規定の全部が当然に適用されたものにあつては「法第二条第一項全部適用」と、法第二条第二項の規定により財務規定等が当然に適用されたものにあつては「法第二条第二項財務適用」と、法第二条第三項及び施行令第一条第一項の規定により条例で財務規定等を除く法の規定を適用したものにあつては「令第一条第一項全部適用」と、法第二条第三項及び施行令第一条第二項の規定により条例で法の規定の全部又は財務規定等を適用したものにあつては「令第一条第二項全部適用」又は「令第一条第二項財務適用」と、適用しなくなつた場合は「適用廃止」とそれぞれ記載するものであること。

3 損益勘定所属部門の職員数欄には、当該企業の営業活動に従事する職員数を、資本勘定所属部門の職員数欄には、建設又は改良工事に従事する職員数を記載し同一人が資本勘定部門と損益勘定部門の両部門に属する場合は、その者の両部門における稼働日数等によつてあん分し、記載するものであること。

4 その他参考事項欄には、(一)従前の適用方法、(二)管理者の設置又は不設置、(三)財務規定等を適用した場合における会計及び決算の事務に係る権限のうち出納長又は収入役が行なう権限、(四)管理者を置いた場合管理者の職名等を記載するものであること。

5 組織図は、地方公営企業の業務を分掌させるため、設置された局部課の組織図表を記載するものであること。

記載例を示せば次のとおりであること。(記載例略)

四 国と地方公営企業を経営する地方公共団体との関係

地方公営企業の経営に関し、地方公共団体相互間で協議がととのわない場合において、関係地方公共団体の申出に基づき、都道府県又は六大市が当事者である場合には自治大臣、その他の場合は都道府県知事が、必要なあつ旋若しくは調停をし、又は必要な勧告をすることができるものであること(法第四一条及び施行令第二七条)。これらのあつ旋、調停、勧告は各事業法規に定める裁定、命令等の発動の前に活用されることが期待されるものであること。

五 地方公共企業体

地方公営企業を能率的、合理的に経営するため地方公営企業に間接経営方式を導入することとし、その一形態として地方公共団体は地方公共企業体を設けることができるものとし、その具体的な規定は別に法律をもつて定めるものとしていること(法第四二条)

第七 財政再建に関する事項

財政状況の極度に悪化した地方公営企業を経営する地方公共団体で自らの努力のみによつて企業の再建を図ることが困難なものについて、国の援助、協力のもとに計画的にその再建を行なわせるため、地方公営企業の財政再建に必要な措置を定めているものであること。

一 対象事業に関する事項

財政再建措置の対象となる事業は、本法を適用している水道事業、工業用水道事業(その布設に要する経費について国から補助金の交付を受けたものを除く。)、軌道事業、自動車運送事業、地方鉄道事業、電気事業、ガス事業又は病院事業(以下「水道事業等」という。)のうち実質上収支が均衡していないもので、昭和四一年三月三一日(同年四月一日に新たに本法を適用した事業にあつては、同日)において不良債務を有するもの又は昭和四一年四月一日において本法を適用していなかつた事業にあつては昭和四〇年度において実質赤字を有するもの(以下「昭和四〇年度の赤字企業」と総称する。)であること(法第四三条第一項)

実質上収支が均衡していないとは、累積欠損金を有する場合のほか、最近本法を適用した事業で貸借対照表上累積欠損金としては表示されないが、法適用前における収入不足等のため実質上不健全な財政状態にある場合を含む趣旨であること。

不良債務とは、流動負債の額が流動資産の額をこえる額をいい次の算式によつて計算されるものであること(法第四三条第一項及び施行令第三〇条)

不良債務=(施行令第15条第3項の流動負債の額-起債前借りである一時借入金の額)(施行令第14条の流動資産の額-当該事業年度に執行すべき事業に係る支出予算の額のうち翌事業年度に繰り越したものの財源に充当することができる特定の収入で当該事業年度に収入された部分に相当する額(自治大臣が特に必要と認めたものに限る。))

実質赤字とは、繰上充用額及び支払繰延額又は当該年度に執行すべき事業に係る歳出予算の額のうち翌年度に繰り越した額から未収入特定財源を控除した金額をいうものであること(法第四三条第三項)

財政再建措置の対象となる事業は、本法を適用しているものに限られるものであること。したがつて、現に本法を適用していないものについて財政再建をしようとするときは、条例(昭和四二年一月一日以降は、一部事務組合にあつては、規約)で本法を適用しなければならないものであること。

二 財政再建計画の策定及び承認に関する事項

(一) 昭和四〇年度の赤字企業について財政再建を行なおうとする地方公共団体は、議会の議決を経て、その旨を昭和四一年一二月三一日までに自治大臣に申し出て、自治大臣の指定する日(以下「指定日」という。)現在により財政再建計画を定め、自治大臣の承認を得なければならないものであること(法第四三条及び第四四条、施行規則第一三条並びに地方財政再建促進特別措置法施行規則(以下「再建規則」という。)第一条及び第二条第一項)

(二) 財政再建計画は、指定日の属する年度及びこれに続くおおむね七年度以内に不良債務を解消し、財政の健全性を回復するように、財政再建に関する基本的事項を定めるものであること(法第四三条第二項)。再建期間は、一応七年を標準としているが、経済変動の激しい現状にかんがみ、できるだけ短縮してすみやかな再建の完了を目途とすべきものであること。

(三) 財政再建計画は、当該地方公共団体の計画であるから、地方公共団体の長が管理者の作成する資料に基づいて作成し、議会の議決を経なければならないものであること(法第四四条第一項)

(四) 財政再建計画の変更は、その作成と同様の手続によつて行なうものであること(法第四四条第二項、施行規則第一三条及び再建規則第二条第二項)。なお、災害その他緊急やむを得ない理由により財政再建計画を変更する必要が生じた場合において、あらかじめその変更について自治大臣の承認を得るいとまがないときは、事後において遅滞なく承認を得なければならないものであること(法第四四条第三項、施行規則第一三条及び再建規則第二条第二項)

(五) 財政再建計画の承認にあたつては、その実行の適否について技術的な検討を要するものであるので、当該地方公共団体は、財政再建計画の策定及び変更に際しあらかじめ自治省と密接な連絡を保持することが必要であること。

三 国の援助措置に関する事項

(一) 財政再建計画について自治大臣の承認を得た地方公共団体(以下「財政再建団体」という。)は、昭和四一年三月三一日(同年四月一日に新たに本法を適用した事業にあつては、同日)における不良債務又は昭和四〇年度の実質赤字の範囲内における一時借入金の償還及び未払金の支払に充てるため並びに財政再建計画の承認のあつた日から財政再建計画による財政の再建が完了する年度の前年度の末日までの間に財政再建計画に基づく職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により退職した管理者及び企業職員に支給すべき退職手当の財源に充てるため、財政再建債を起こすことができるものであること(法第四五条)。なお、財政再建債を起こすには別途自治大臣の許可を受けなければならないものであること(法第五〇条、地方財政再建促進特別措置法(以下「再建法」という。)第一四条、施行規則第一三条及び再建規則第四条)

(二) 財政再建債は、指定日の属する年度の翌年度以降おおむね七年度以内(退職手当の財源に充てるためのものについては、その起こした日の属する年度の翌年度以降三年度以内)に、財政再建計画に基づき償還しなければならないものであること(法第四六条)

(三) 財政再建債に対する利子補給は、不良債務又は実質赤字を昭和四〇年度の営業収益の額(受託工事収益の額を除く。)の十分の一の額で除して得た数値が二未満の財政再建団体にあつては利息の定率を年六分五厘として計算して得た額をこえる部分に相当する金額(年一分五厘(都道府県又は市にあつては、年一分)の定率を乗じて得た額を限度とする。)、二以上の財政再建団体にあつては逓増方式により計算し、八以上の財政再建団体において利息の定率を年三分五厘として計算して得た額をこえる部分に相当する金額(年四分五厘(都道府県又は市にあつては、年四分)の定率を乗じて得た額を限度とする。)について行なうものであること(法第四七条、施行令第三二条、施行規則第一三条及び再建規則第五条)

(四) 財政再建団体(財政再建債を起こさないものを除く。)が退職手当債を起こしている場合には、財政再建計画の承認を受けた日(同日以後に起こされた退職手当債については、その起こされた日)以後は、これを財政再建債とみなし、これらの日以後の分について利子補給を行なうものであること(法附則第五項)

(五) 国は、必要があると認めるときは、企業債の償還の繰延べその他財政再建を促進するための措置について配慮するものであること(法第四八条)

(六) 昭和四〇年度の赤字企業を経営する地方公共団体は、財政再建計画を策定し、又はこれを実施するため必要があるときは、自治大臣その他関係行政機関の長に対し、助言その他必要な援助を求めることができるものであること(法第五〇条及び再建法第一八条)

四 財政再建の確保に関する事項

(一) 財政再建団体の長は、財政再建計画に従つて予算を調製しなければならず、管理者は、財政再建計画に従つて業務を執行しなければならないものであること(法第四四条第四項及び第五項)

(二) 自治大臣は、必要に応じ、財政再建団体について財政再建計画の実施状況を監査するものであること(法第五〇条及び再建法第二〇条)

(三) 自治大臣は、財政再建団体の財政の運営が財政再建計画に適合しないと認める場合においては、財政の運営を財政再建計画に適合させるため、予算のうち過大である部分の執行停止その他の必要な措置を講ずることを求めることができるとともに制度の改正等特別の理由により必要があると認める場合においては、財政再建計画の変更を求めることができるものであること(法第五〇条並びに再建法第二一条第一項及び第二項)。財政再建団体がこれらの求めに応じなかつた場合には、財政再建債の利子補給を停止することができるものであること(法第五〇条及び再建法第二一条第三項)

五 地方財政再建促進特別措置法等の準用に関する事項

財政再建計画の公表(再建法第四条)、財政再建計画承認の通知(同法第五条第二項)、国等の協力義務(同法第六条)、国の直轄事業の実施に関する自治大臣への通知(同法第七条)、財政再建についての長の議会との関係(同法第一一条)、財政再建計画の実施状況の報告及び公表(同法第一九条)並びに退職手当債の起債(同法第二四条第一項)については再建法の規定が、実施について自治大臣への通知を要する国の直轄事業(地方財政再建促進特別措置法施行令(以下「再建令」という。)第四条)、財政再建が完了した団体の報告等(同令第一四条の四)、市町村の提出する書類(同令第一五条)及び自治省令への委任(同令第一六条)については再建令の規定が、財政再建計画の実施状況の報告(再建規則第八条)及び財政再建が完了した団体の報告(同規則第一四条)については再建規則の規定がそれぞれ準用されているものであること(法第五〇条、施行令第三三条及び施行規則第一三条)

六 赤字の企業の財政再建に関する事項

本法を適用している水道事業等で昭和四一年度以降の年度において不良債務又は実質赤字を有するものは、財政再建債の発行及び利子補給等の規定を除き、財政再建計画の策定、承認等昭和四〇年度の赤字企業の財政再建と同様の手続きによつて財政再建を行なうことができるものであること(法第四九条)

七 自治大臣の権限の委任に関する事項

(一) 財政再建団体(赤字の企業を経営する地方公共団体を含む。)に対する財政再建計画の実施状況を監査し、財政運営改善のための措置を求め、及び財政再建計画の変更を求める権限のうち、市町村(六大市を除く。)に係るものは、都道府県知事に委任するものとし、都道府県知事が、この委任に基づいて、監査を行なつた場合にはその結果を遅滞なく自治大臣に報告し、財政運営改善のための措置を求め、又は財政再建計画の変更を求めようとする場合には、あらかじめ自治大臣に届け出るとともに、その結果について報告しなければならないものであること(施行令第三五条)

(二) 財政再建計画の変更を承認する権限のうち市町村に係るものは、都道府県知事に委任するものとし、都道府県知事がこの委任に基づき財政再建計画の変更の承認を行なつた場合には、その結果について自治大臣に報告しなければならないものであること。ただし、財政の再建が著しく困難であるものとして自治大臣が指定した企業については、自治大臣において財政再建計画の変更の承認を行なうものであること(施行令第三五条第一項及び第三項)

(三) 都道府県知事が財政再建計画の変更を承認しようとする場合において、当該変更が、(1)財政再建期間を延長しようとするものであるとき、(2)当該年度に解消すべき不良債務又は実質赤字の額を当該年度の翌年度以降の年度において解消しようとするものであるとき、(3)その他自治大臣が指定する変更に該当するときは、事前に自治大臣に協議し、その同意を得て変更の承認をしなければならないものであること(施行令第三五条第二項)

第八 法の施行期日及び法施行の際の経過措置に関する事項

一 施行期日

(一) 法は、昭和二七年一〇月一日から施行されるが、都及び五大市以外の地方公共団体については、法第三章並びに附則第二項及び第三項の規定は、昭和二八年一月一日から適用されるものであること(法附則第一項、地方公営企業法の施行期日を定める政令)

(二) これに応じ、施行令は、原則として昭和二七年一〇月一日から施行されるが、同令第九条から第二六条まで及び第二八条並びに附則第五項から第一一項までの規定は、都及び五大市以外の地方公共団体については、昭和二八年一月一日から適用され、施行規則は、昭和二七年一〇月一日から施行され、都及び五大市以外の地方公共団体にあつては昭和二八年一月一日から適用されることと定められていること(施行令附則第一項、施行規則附則第一項)。なお、地方公営企業資産再評価規則の施行期日は、昭和二七年一〇月一日であること(再評価規則附則)

(三) 地方公営企業労働関係法の施行期日は、法の施行規則と同日(昭和二七年一〇月一日)に定められる予定であること(地方公営企業労働関係法附則第一項)

(四) 従つて、法及びこれに基く命令は、都及び五大市にあつては昭和二七年一〇月一日から全面的に適用されることとなるが、その他の地方公共団体にあつては、財務に関する規定のみ昭和二八年一月一日から適用され、その他の規定は昭和二七年一〇月一日から適用されることとなるものであること。

二 法施行の際の経過措置

(一) 法施行の際(都及び五大市以外の地方公共団体に対する法第三章並びに法附則第二項及び第三項の規定についてはその適用の際)における地方公営企業の予算及び決算その他地方公営企業の経営に関し必要な経過措置については、法施行の日の翌日以後法の適用を受けていない法第二条第一項の表の上欄に掲げる事業が地方公営企業となつた場合及び法第二条第二項の規定に基き地方公営企業以外の企業に条例で法を適用することとした場合についての経過措置に関する規定が準用されているものであること(施行令附則第二項並びに施行令第四条、第七条及び第八条)。なお、企業職員の給与については特別の経過措置が定められているものであること(施行令附則第三項)

(二) 法施行の際の財務に関する経過措置

1 地方公営企業としての最初の事業年度は、法施行の日(都及び五大市以外の地方公共団体については法第三章並びに法附則第二項及び第三項の規定の適用される日)(以下本項中「法施行の日」という。)、即ち都及び五大市にあつては昭和二七年一〇月一日から、その他の地方公共団体にあつては昭和二八年一月一日から始まるものとし、法施行の日の前日の属する会計年度分は、当該地方公営企業に関する限り同日をもつて終了するものであること(施行令附則第二項及び施行令第四条第一項本文前段)

2 法施行の日の前日をもつて終了した会計年度に属する出納は、その終了した日をもつて閉鎖し、当該会計年度の決算は、従前の例によつて行うものであること(施行令附則第二項及び施行令第四条第一項本文後段)。従つて、この場合においては、出納整理期間は存在せず同日をもつてすべての出納は打ち切られるものであり、決算は地方自治法の規定により出納長又は収入役が行うものであること。なお地方公営企業となるべき事業に関する会計が、一般会計で経理されていた場合又は当該事業に関する特別会計で、地方公営企業以外の企業についても経理していた場合においては、当該会計のうち当該地方公営企業に関する部分についてのみ会計年度が終了し決算が行われるべきものであることはいうまでもないこと。

3 従前の例によつて決算が行われる場合において、法施行の日の前日の属する会計年度の歳入が当該会計年度の歳出に不足するときは、繰上充用を行うことなく、歳入不足額として決算に計上し、この場合においても支出に充てられた一時借入金は、法第二九条第二項但書の規定の例により借り換えることができるものとされたこと(施行令附則第二項並びに施行令第四条第一項但書及び第二項)。なお、この借り換えた一時借入金は、法施行の日の属する事業年度内に償還しなければならないこと及びその償還に当つては借入金をもつて償還するようなことをしてはならないことに注意すること(施行令附則第二項及び施行令第四条第三項)

4 法施行の日の前日の属する会計年度以前の会計年度に発生した債権又は債務に係る未収金又は未払金は、最初の事業年度に属する債権又は債務として整理するものであること(施行令附則第二項及び施行令第四条第四項)

5 都及び五大市以外の地方公共団体については、昭和二七年一〇月一日から同年一二月三一日までの間は、法第三章並びに法附則第二項及び第三項の規定は適用されていないので、この期間中においては、左の事項に注意すること。

(1) 同期間における当該地方公共団体の経営する地方公営企業に置かれた管理者は、当該地方公営企業の財務に関しては、昭和二八年一月一日以降に係るものについて行う法第九条第三号から第五号までに掲げる事務のみを執行するものであること(施行令附則第四項)

(2) 従つて、同期間中における当該企業の用に供する資産の取得、管理及び処分、契約の締結、料金その他の使用料又は手数料の徴収、一時借入金の借入並びに出納その他の会計事務の執行等はすべて地方自治法の規定に従つて当該地方公共団体の長又は出納長若しくは収入役が行い、管理者が行うものとはならないこと。

(3) 同期間末までの間の予算は、地方自治法の規定により行われるものであつて、たとえ同期間中に予算の追加又は更正が行われることがあつても、管理者に特別の権限が与えられているものではないこと。法施行の日の前日の属する会計年度の決算を従前の例により行う場合においても同様であつて、この決算は出納長又は収入役が行い管理者が行うものではないこと。

(4) 従つて管理者が同期間中に当該地方公営企業の財務に関し行い得る事項は、昭和二八年一月一日以降の予算が予め調製される場合において法第九条第三号から第五号までの事務を行うことに限られるものであること。なお、会計規程その他の企業管理規程で財務に関するものを予め制定しておくことは差し支えないものであること。

(三) 法施行の際の職員の身分取扱に関する経過措置

1 法施行の際、当該企業に従事する職員については、辞令を発することにより法第一五条の職員とするように措置すべきものであること。

2 法第七条の管理者及び法第一五条の職員の任免、給与、分限、懲戒、服務その他身分取扱に関する法施行の際の経過措置は次の通りであること。

(1) これらの者の任免、給与、分限、懲戒、服務その他身分取扱に関する事項で地方公務員法の規制をうけるものについては同法に基く当該地方公共団体の条例が制定され、且つ、実施されるまでの間は、なお、従前の例によるものであること(地方公務員法附則第六項)

(2) 企業職員の給与の種類及び基準については昭和二七年一〇月一日から起算して六月をこえない期間内において法第三八条第三項の規定に基く条例が制定され、且つ、実施されるまでの間は、なお、従前の例によるものであること(施行令附則第三項)

(3) これらの者に対する地方公務員法第一六条の規定の適用については、当該職員について従前の規定によりなされた懲戒免職の処分は、同条第三号の懲戒免職の処分とみなされるものであること(地方公務員法附則第九項)

(4) これらの者が従前の規定により休職を命ぜられている場合又は懲戒手続中である場合若しくは懲戒処分を受けている場合におけるその者の休職又は懲戒に関しては地方公務員法第二七条から第二九条までの規定にかかわらず、なお従前の例によるものであること(地方公務員法附則第一〇項)

(四) 事務の引継

法の施行により地方公営企業となつた場合においては、当該地方公営企業の業務に関し、管理者の権限に属すべき事項で従来長の権限に属していたものについて長は管理者に対し、当該地方公営企業の出納その他の会計事務に関し出納長又は収入役は管理者に対し、それぞれ法施行の日から一〇日以内に事務の引継をしなければならないこと(施行令附則第二項及び施行令第七条)。なお、法第七条但書の規定により管理者を置かないことと定めた場合においては当該地方公営企業の出納その他の会計事務に関し、出納長又は収入役は法施行の日から一〇日以内に当該地方公共団体の長に対し事務の引継を行わなければならないものであること。都及び五大市以外の地方公共団体については、法第三章並びに法附則第二項及び第三項の規定は昭和二八年一月一日から適用されることとされたため、財務以外の事務に関する事務の引継は昭和二七年一〇月一日から、財務に関する事務の引継は昭和二八年一月一日からそれぞれ一〇日以内に行う必要があることに注意すること。

(五) その他の経過措置

1 法第一〇条に規定する企業管理規程及び法第一四条に規定する管理者の権限に属する事務を処理させるための必要な組織に関する条例の制定、法第二四条第一項に規定する予算の調製及び議決その他法の施行について必要な手続は法施行前(財務に関する手続については都及び五大市以外の地方公共団体にあつては法第三章並びに法附則第二項及び第三項が適用される前)においてすることができるものであること(施行令附則第二項及び施行令第八条)

2 法施行前又は法第三章並びに法附則第二項及び第三項が適用される前において必ずしておく必要がある手続としては左に掲げるものがあること。

(1) 法第一四条に規定する管理者の権限に属する事務を処理させるための条例の制定

(2) 必要な分課に関する企業管理規程及び会計規程の制定

(3) 法第二四条第一項に規定する予算の調製及び議決

(4) 管理者を置かず、又は二以上の事業を通じて管理者一人を置く場合にあつては、法第七条第一項但書に規定する条例の制定

(5) 二以上の事業を通じて一の特別会計を設ける場合にあつては法第一七条但書に基く議会の議決

3 法施行後(都及び五大市以外の地方公共団体にあつては法第三章が適用された後)最初の事業年度の予算は、必ず予め設定して置く必要があるが、この場合においては、暫定予算に関する地方自治法第二三五条第二項の規定の適用が妨げられるものでないこと。なお、当該予算を議会に提出する場合においては、当該予算の実施計画、当該年度の事業計画及び資金計画その他財政計画の参考となるべき事項に関する書類を併せ提出するものであるが、予算損益計算書及び予定貸借対照表は再評価以前であれば実質的には作成困難なことが予想されるものであること。

4 この場合において、これらの規定に基き管理者が行うべき権限は、当該地方公共団体の長が行うものとすること(施行令附則第二項、施行令第八条後段)。なお、都及び五大市以外の地方公共団体について、昭和二七年一〇月一日から同年一二月三一日までの間において予め財務に関する企業管理規程の制定及び予算の調製を行う場合における当該地方公営企業に置かれた管理者の権限については、(二)5によること。

5 地方公営企業を経営している一部事務組合にあつては、法施行後においては、法第七条の規定に基き条例で企業の管理者を置かないことと定めた場合の外当該一部事務組合の管理者とは別に企業の管理者が置かれることとなり、当該一部事務組合の会計は組合管理者、組合議会等に要する経費についての一般会計と当該地方公営企業の特別会計とに分離されるものであること。従つて、法施行による組合規約の改正は当然には必要とならないものであること。

地方公営企業法及び同法施行に関する命令の実施についての依命通達

昭和27年9月29日 自乙発第245号

(平成3年4月2日施行)

体系情報
(附) 水道事業及び工業用水道事業関係法令/第1 地方公営企業関係法令
沿革情報
昭和27年9月29日 自乙発第245号
昭和28年3月26日 自乙発第209号
昭和28年12月2日 自乙発第885号
昭和29年8月21日 自乙理発第68号
昭和35年6月14日 自乙企発第1号
昭和36年6月29日 自乙企第2号
昭和38年11月28日 自乙企第7号
昭和40年1月16日 自治企第4号
昭和41年7月5日 自治企第105号
昭和42年2月8日 自治企一第19号
昭和44年10月21日 自治企一第80号
昭和45年10月15日 自治企一第80号
昭和51年11月26日 自治企一第169号
昭和58年1月17日 自治企一第2号
昭和61年5月30日 自治企一第62号
平成元年7月12日 自治企一第78号
平成3年4月2日 自治企一第37号