東京近代水道125年史
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5.「水ビジネスの国際展開に向けた課題と具体的方策」, 水ビジネス国際展開研究会, 2010.486第3項 国内外の事業体との連携1 国内事業体との連携・支援 当局がこれまで培ってきた技術力や、多摩地区水道事業の都営一元化を通じて得た広域化の経験を活かし、国内の他水道事業体の課題解決を支援するため、平成29(2017)年11月に立ち上げられた公益社団法人日本水道協会(以下「日本水道協会」という。)関東地方支部の首都圏水道事業体支援事業の中で、首都圏の水道事業体からの要請に応じて、研修、実地訓練等といった形で支援を行ってきた。 例えば、平成30(2018)年には、日本水道協会関東支部所属の水道事業者に対して、水質研修や小規模水道施設を使用した訓練などを実施した。 また、島しょ部町村の水道事業体に対しても、町村側からの要請に基づき、水道施設の改良・改善事業に対する技術支援を実施しており、町村職員向けの研修や事業説明等を行ってきた。  例えば、令和3(2021)年度には、島しょ部の2つの水道事業体に対して当局職員を派遣し、現地調査や助言、技術協力などを実施した。また、令和4(2022)年度には大島町からの要請を受け、職員を派遣し、漏水調査技術に関する助言を実施した。2 東京水道の国際貢献 当局は、国内にとどまらず、海外の水道事業体に対しても、職員の研修や派遣等を通じた課題の解決という形で国際貢献を行ってきた。 職員派遣は、昭和48(1973)年から国際協力事業団(JICA)を通じて行われているほか、海外の水道事業体からの研修生受入れも実施してきた。また、平成11(1999)年の台湾大地震の際には、当局職員を現地に派遣して状況調査を行うとともに、給水車等の提供を通じた支援も行った。 こうした中、平成22(2010)年4月に経済産業省が公開した報告書で書かれたように、新興国及びアジア各国における人口増加や経済発展・工業化の進展により、水処理に対する需要と、それを受けた水ビジネスが急激に拡大していくことが想定された5。 世界的な水問題への関心の高まりとともに、国内最大の水道事業者として、これまで以上に積極的な国際貢献が求められたことから、当局は平成22(2010)年1月の「東京水道経営プラン2010」において、監理団体であるTSS(株)(現在は東京水道(株)という。)を活用した新たな国際貢献スキームを公表した。 また同年8月には、国際貢献に当たっての相手国のニーズや実態把握を目的として、マレーシア、ベトナム、インドネシア、インド、モルディブに東京水道国際展開ミッション団を派遣した。 ミッション団は副知事又は局幹部を団長とし、政府高官を初めとする水道事業関係者との会談、現地水道施設の視察などを通じて、現地の水道事業の実態を把握するとともに、国際的な人的ネットワークの形成にも努めてきた。 こうした活動に加え、水道事業に関する国際会議への参加及び会議開催を通じた、東京水道の技術力のPRや人的ネットワークの形成にも力を入れてきた。またIWA世界会議・展示会への出席などを通じて実績を重ね、平成23(2011)年10月には、日本で初となるIWAアジア太平洋地域会議(IWA-ASPIRE)を東京で開催した。 そして、一連の国際貢献・国際展開に係る活動の中で大きな存在となっているのが、日本初となるIWA世界会議・展示会の東京開催である。3 IWA世界会議・展示会の東京開催(1)招致までの経緯について 日本ではこれまで、平成16(2004)年(横浜)、平成18(2006)年(札幌)、平成24(2012)年(東京)の3回にわたって招致都市として立候補してきたが、いずれも落選しており、世界会議・展示会の誘致は東京を含む日本の水道界の悲願であった。 平成24(2012)年9月の釜山でのIWA理事会において、2018年世界会議は東アジア地域で開催することが決定されたことを受け、日本水道協会が調整した結果、同時期に2020年オリンピック・パラリンピック大会の招致も行っていた東京を開催都市として立候補、翌年9月のイスタンブールでの理事会において東京開催が決定された。

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