81営プラン2016」では、「人」は東京水道を支える最大の基盤であるとして、「人材(財)の確保・育成」を項目の一つとして取り上げていた。 また局・団体は、それぞれ研修やOJTを行うとともに、相互の人材交流や共同研修開催などを通じて、東京水道グループを支える人材の育成強化に努めてきた。 しかし、東京水道グループ全体が大きな転換期に入っていく中、安全でおいしい水の安定供給というグループの使命を果たし続けていくためには、より一層の努力が必要であった。 加えて、当局では平成24(2012)年と26(2014)年に収賄・情報漏えい事故が発覚したほか、令和元(2019)年には当局職員による入札談合等関与行為により公正取引委員会から改善措置要求等を受けた。団体側でも、平成30(2018)年度にTSS(株)が特別監査を受けたほか、令和2(2020)年には東京水道(株)社員による不適正処理事案が発覚する等、グループ全体でのコンプライアンス強化も大きな課題となっていた。(2)東京水道グループ人材育成方針の策定 こうした現状を踏まえ、東京水道グループではまず、長期戦略構想においてグループ全体で求める人材像と、それを受けた局・団体それぞれで求める人物像を明示した。 その上で、この人物像を実現し得る人材育成を進めるに当たっての基本的な考え方、取組の方向性を示すため、令和3(2021)年3月に、令和3(2021)年度から7(2025)年度の5か年を対象期間とする「東京水道グループ人材育成方針」(以下「人材育成方針」という。)を策定した。 人材育成方針では、まずグループの職員・社員が果たすべき役割を「いのちの水をお届けする~全てはお客さまの笑顔のために~」と定めた。 そして求める人材像を実現するための行動指針としては、①お客さまのために、『今、何をすべきか』を考える、②120年培った現場力で、未来を切り拓く、③仕事は愚直に、ひたむきに、真摯に、④チャレンジし続ける。仲間ととともに成長するために、⑤お互いを尊重し、チームワークを大切に、の5つを提示した。 その上で、人材像実現に向けた重点的な取り組みとして、①組織的なOJT推進体制の構築、②継承すべき技術の見える化、③計画的な育成のためのモデル策定、④より効果的な研修、⑤管理監督者のマネジメント力強化の5つを挙げ、これらのそれぞれについて5年間で達成すべき事項やそのスケジュールを示した。 また、この他にも、コンプライアンスの徹底やお客さまファーストの浸透等の取組を挙げた。3 新しいグループ経営基本方針(1)東京水道グループの置かれた環境の変化 本節第1項記載のように、当局は平成28(2016)年に「グループ経営基本方針」を策定し、グループ経営戦略会議等を通じた連携と事業運営体制の一層の強化を図ってきた。 その後、政策連携団体統合による東京水道(株)の設立、新たな長期構想である長期戦略構想の策定など、東京水道グループを囲む環境は大きな変化を経験した。 また既述のように、グループ経営基本方針策定後には、新たなコンプライアンス事故の発生・発覚もあり、グループ全体のガバナンスの機能とコンプライアンスの確保が大きな課題となっていた。(2)東京水道グループのグループ経営に関する基本方針の策定 こうしたことを踏まえ、グループ経営を新しいステージへと進化させるため、当局はグループ基本方針を改訂し、令和3(2021)年5月、新たに「東京水道グループのグループ経営に関する基本方針」(以下「グループ経営に関する基本方針」という。)を策定した。 グループ経営に関する基本方針では、グループ経営推進に係る方針として、①東京水道グループとしての的確な経営判断のためのガバナンス強化、②業務運営の更なる質の向上、③東京水道グループ内の連携強化、④政策連携団体の経営の自主性向上と剰余金の活用、⑤全庁的な取組の着実な実施、という5点を掲げ、その実現に向けた具体的取組を記載した。 改訂前のグループ経営基本方針と比較して、当局と団体が取り交わす「業務運営に関する協定書」の内容見直しや、グループ経営戦略会議における政策連携団体の重要な意思決定に係る議題の付議などにより、ガバナンス強化に係る取組の充実化を図った。 また、業務運営におけるDXの活用や、都庁全体での団体改革の着実な実施といった、この間の情勢を踏ま
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