東京近代水道125年史
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性能発注方式による包括委託を検討すると表明した。 性能発注方式は、業務の実施方法は指定せずに要求する水準を提示し、水準の達成度を局と外部専門家などで構成する評価委員会がモニタリングするという方式である。これにより、業務の質を担保しつつ、受託者側の創意工夫を働かせることで、効率化やサービスの向上が期待できる。 また、包括委託は、業種ごとに契約を分けるのではなく複数の業務をまとめて発注するものであり、受託者側は複数の業務の間で柔軟な人員配置を行うことができ、業務の効率化が期待できる。2 東京水道グループでの人材育成(1)人材確保・育成をめぐる取組 統合により、東京水道(株)は社員数2,611名、水道事業における営業系・技術系業務を一手に担う組織となった。 しかし、以前からの課題である固有社員の育成・強化が統合により解消されたわけではなく、今後包括的に水道事業を担う上で、依然として解決を要する課題であり続けた。 人材の育成・強化は、団体だけでなく局においても重要なテーマであり、いわゆる団塊世代職員の大量退職と、団体への現場業務移転が進んだことによる若い局職員への現場経験や技術・ノウハウの継承が当面の課題であった。こうした状況を反映して、「東京水道経80第3項 グループ経営と人材育成1 東京水道(株)設立後の業務委託拡大(1)業務委託の基本的な方向性 長期戦略構想及び令和3(2021)年に公表された「東京水道経営プラン2021」(以下「経営プラン2021」という。)では、今後の業務運営体制に関して、現場業務の政策連携団体への移転を積極的に推進するとした上で、営業系業務は10年、技術系業務は20年を目途として業務移転を行うという目標を示した。 また、現場業務の団体への移転に伴い、政策連携団体を含めた効率的な業務運営体制を構築するため、長期戦略構想では、営業、浄水所・給水所管理、給水装置・配水管維持管理の3つの分野について、現行の組織を再編し、新たに現場業務を統括する「センター」を設置し、一元的に業務管理を行う体制を整えるとした。(2)設立後の業務委託の経過 グループ経営基本方針策定後、品川営業所(平成29(2017)年)、江戸川営業所(令和元(2019)年)の運営委託を進めてきたが、東京水道(株)設立以降も、当局は準コア業務の同社への委託を積極的に進めてきた(表3-2)。 営業事務関係では、令和2(2020)年4月に世田谷営業所、令和3(2021)年4月に文京営業所、令和4(2022)年4月には葛飾営業所の運営を東京水道(株)に委託した。 また、施設の維持管理関連では、令和3(2021)年4月より和田堀給水管理所の維持保全業務等を、令和4(2022)年4月には練馬給水管理所の維持保全業務と小作浄水場の水質管理業務を委託した。(3)性能発注方式の導入 政策連携団体への委託はこれまで、業種ごとに契約を分けて仕様発注をしていた。これは、業務の実施方法をマニュアル等により局が指定し、それに従った業務履行を求めるという方式である。 しかし、この方式では団体側の創意工夫が働きにくく、業務執行の効率化やサービス向上の観点から課題があった。 グループ経営の下、政策連携団体への業務移転と効率的な運営体制の構築を進めるため、経営プラン2021では、今後の政策連携団体への業務移転手法として、表3-2 グループ経営下での業務委託の経過

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