72成30(2018)年12月の改正水道法により広域連携や官民連携の推進が明記された一方、東京水道では人口減少に伴う給水収益の減少、施設更新時期の集中、労働力人口や中小工事業者の減少、今後の施設更新経費確保のための企業債残高の増加といった課題に直面していること等を示した。 こうした現状認識を踏まえ、独立採算制の下で将来にわたり必要不可欠なサービスを提供するために、長期的な視点に立った事業運営を検討するとして、①人口や水道需要が減少する中にあっても、安定供給のために必要な施設整備の着実な推進、②社会経済情勢に即したお客さまサービスの向上、③労働力人口の減少に対応しつつ、事業レベルを維持するための政策連携団体を含む効率的な運営体制の構築、④料金水準をできる限り維持し、長期的に持続可能な財政運営を実施、という4点を事業運営の基本的な考え方として掲げた。(2)東京水道が目指すべき姿 そしてこの基本的な考え方に基づき、2040年代までに東京水道が目指すべき姿として①長期的な財政状況を見据えた計画的な施設整備、②新技術の活用と経営の効率化、③東京水道グループの総合力強化の3点を掲げ、それぞれについて現状及び課題の分析を行い、今後の取組の方向性を示した。 長期的な財政状況を見据えた計画的な施設整備では、将来の水道需要が減少する見込みであることを前提とし、施設更新に伴うダウンサイジングや多摩地区水道の再構築、災害・水質・水源・環境各面における対策事業を計上した。 新技術の活用と経営の効率化では、スマートメータをはじめとするICTの活用を通じた水道システムの高度化・効率化・最適化、お客さまサービスの向上に係る施策を計上した。 そして東京水道グループの総合力強化では、局と政策連携団体によるグループ経営(詳細は後述)の推進や団体のガバナンス・コンプライアンス強化、グループ及び工事事業者の人材確保・育成、国内外事業体への貢献といった事項を計上した。3 東京水道施設整備マスタープラン(1)2016年版プランの全面改訂 長期戦略構想策定に伴い、平成28(2016)年に策定した2016年版プランも全面的に改訂し、改訂後の「東京水道施設整備マスタープラン」(以下「2021年版プラン」という。)を令和3(2021)年3月に策定・公表した。 2021年版プランは、これまでのプランと同様、施設整備の基本計画として、中長期的な方向性を明らかにするとともに、各施策の具体的な取組内容を示すものであり、対象期間を令和12(2030)年度までの10年間とした。また、2021年版プランは「東京都水道局震災対策事業計画」を兼ねることとされた。 2016年版プランと比較して、2021年版プランでは、長期戦略構想の内容などを踏まえて施策の方向性や具体的取組の内容を一部変更した。(2)これまでのプランとの変更点 まず主要施策の方向性について、これまでの内容を含む①安全で高品質な水の安定供給、②様々な脅威への備えの2つに加えて、新たに③新技術を活用した水道システムの構築を掲げた。 また、多摩地区の水道については、山間部から市街地までを含む多摩地区の地理的な多様性を取り上げ、多摩地区を大きく4つの地域に区分し、それぞれの特性に応じた施策を講じることで、多摩地区水道の強きょうじん靭化を図ることとした。 さらに、「『未来の東京』戦略ビジョン」で示された将来の東京都の人口推計を取り上げ、人口減少社会への突入を明確に記載した上で、20年後である令和22(2040)年度の水道需要の見通しが515万㎥になるとの試算結果を示し、老朽化した施設の更新に合わせたダウンサイジングについても言及した。 2021年版プランの具体的な内容については、次項で記載する。第3項 人口減少時代の施設整備1 安全で高品質な水の安定供給 まず、「安全で高品質な水の安定供給」では、利根川・荒川水系における水源の適切な確保をはじめとして、浄水場等施設の更新、管路の二重化・ネットワーク化によるバックアップ機能の強化、豪雨時の濁度上昇やかび臭原因物質への対応といった水質対策など、計9つの取組を掲げた。以下、施設の性質別に区分し、取組の概略を記載する。
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