東京近代水道125年史
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71団体への委託の拡大など、経営面でも大きな変化の過渡期にある。 さらに、基幹施設の一斉更新時期が迫るとともに、将来的な東京の人口減少が見込まれており、計画的な施設更新による安定給水の確保、水道需要減少に伴う料金収入の減少への対応、新たな施策の展開を並行して進めていかなければならない。 こうした環境の変化を踏まえ、施設整備面と経営面双方での長期的な方向性を明確にするため、当局はSTEPⅡに代わる新たな長期構想の策定に着手した。(2)2040年代を見据えた将来構想の策定 これまで、当局の経営全般に係る事項については「東京都水道事業経営問題研究会」(平成14(2002)年2月設置)が、監理団体を含めた一体的な事業運営については「東京都水道局運営体制専門家会議」(平成23(2011)年12月設置)が諮問に基づく助言機関として機能してきた。 平成29(2017)年にこの2つの会議を統合し、経営面のみならず事業運営全般について議論する場として、新たに「東京都水道局運営戦略検討会議」(以下「運営戦略検討会議」という。)を設置した。 運営戦略検討会議は、今後の水道事業運営のあり方について幅広く外部の意見・助言を求めることを目的とした常設の専門家会議であり、学識経験者や弁護士、民間企業など多様なバックグランドを持つ委員により構成されている。 第1回、第2回では東京水道の現状と課題について議論をした上で、平成30(2018)年6月の第3回会議以降、次期長期構想やこれに伴う施設整備のあり方、経営プランの内容について検討を行ってきた。 この検討の結果生まれたのが、新しい長期構想である【写真3-2 東京水道長期戦略構想2020】【写真3-3 東京水道施設整備マスタープラン】「持続可能な東京水道の実現に向けて 東京水道長期戦略構想2020」(写真3-2)と、これに伴い改訂された「東京水道施設整備マスタープラン」(写真3-3)である。 なお、工業用水道事業については、需要の減少が続く中経営改善に向けた取組を続けてきたが、施設の老朽化が進み、需要の増加も見込めない状況にあった。 そこで、平成26(2014)年12月、工業用水道事業のあり方に関する有識者委員会(以下「有識者委員会」という。)を設置し、今後の経営のあり方を検討してきた。 平成30(2018)年6月、有識者委員会より、都の工業用水道事業の廃止とそれに当たっての十分な利用者支援の実施を求める報告書が提出された。 これを受け、同年9月「東京都工業用水道条例を廃止する等の条例」を都議会に上程した。審議の結果、同条例が可決されたことで、令和5(2023)年3月31日をもって都の工業用水道事業が廃止されることとなった。2 「持続可能な東京水道の実現に向けて 東京水道長期戦略構想2020」の策定(1)現状認識と事業運営の考え方 「持続可能な東京水道の実現に向けて 東京水道長期戦略構想2020」(以下「長期戦略構想」という。)は、おおむね2040年代を見据えた将来構想として、今後の事業運営全般についての基本的方針となるべく、令和2(2020)年7月に策定・公表された。 長期戦略構想ではまず、当局の現状認識として、平

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