東京近代水道125年史
72/206

703 今後の施設整備の方向性 (1)基本的な考え方 こうした現状と将来の動向に対する認識を踏まえ、2014年版プランでは、今後の施設整備を考える上での基本的事項として、確保すべき施設能力、施設更新のあり方、水道需要の見通しの3点について記載した。 まず施設能力について、2014年版プラン策定当時の公称施設能力は日量686万㎥であり、施設老朽化や将来の災害・事故リスクを勘案すると、水道需要に対して余裕のない状況であった。そこで、2014年版プランでは、将来確保する施設能力を、計画一日最大配水量(600万㎥)に補修等による能力低下量(80万㎥)を加えた日量680万㎥と設定し、浄水場が仮に停止した場合でも一日平均配水量レベルの供給可能な能力を維持し、都民生活や都市活動への影響を可能な限り回避するよう努めることとした。 また、施設更新への対応については、大規模浄水場の更新完了までをおおむね60年間と想定し、当初10年間で更新施設の代替浄水施設を整備した上で、系列ごとに浄水場の更新工事に着手することで、安定供給を確保しつつ長期間の更新工事を計画的に推進することとした。 そして水道需要の見通しについては、当面の間の一日最大配水量をおおむね600万㎥と見通す一方、今後の社会経済情勢、政策展開、人口動向などを踏まえ、必要に応じて水道需要を見通していくこととした。(2)具体的な取組 こうした基本的な考え方を踏まえて、今後の施設整備の方向性を安定給水の確保、震災対策等の推進、安全でおいしい水の供給の3点と定め、具体的な取組として18の施策を掲げた。 安定給水の確保では、既に記載した大規模浄水場の更新以外にも、導水管や送水管の二重化・ネットワーク化、給水所の新設・拡充を通じた災害時のバックアップ機能の強化を挙げた。 また、多摩地区では、市町域を超えた配水管網やその骨格となる配水本管の整備が不足しているほか、小規模浄水所や給水所の老朽化も進行していることから、市町域を超えた配水区域の再編に向けて必要な配水管網の整備を進めるとともに、老朽化が進行している施設の更新を進めることとした。 震災対策等の推進では、各施設・管路の耐震化とともに、災害等に伴う停電時も電力を安定的に確保するための自家用発電設備の増強、浸水被害が生じるおそれのある施設への止水堰せき設置や施設のかさ上げといった浸水対策等を挙げた。 そして安全でおいしい水の供給としては、多摩川上流域の水道原水におけるかび臭原因物質への対応、貯水槽水道の適正管理や直結給水化の推進といった項目を挙げた。(3)平成28(2016)年2月の改訂 2014年版プランは10か年計画であり、対象期間を平成35(2023)年度までとしていた。 平成27(2015)年2月には「東京都長期ビジョン」策定に伴い、これとの整合を図るために一部改訂を行ったが、この間富士山噴火による降灰等による首都圏への影響が明らかになったほか、テロ行為等の人為災害による影響の懸念も増してきた。 そこで、東京水道が直面する現状認識や施策の基本的方向性に、火山噴火やテロ行為等による被害の予防を加える形で、新たに「東京水道施設整備マスタープラン(改訂版)」(以下「2016年版プラン」という)を平成28(2016)年2月に策定・公表した。 2016年版プランでは、主要施策の方向性や具体的な取組は2014年版プランのものを踏襲しつつ、計画期間を平成37(2025)年度まで延伸する形で修正を加えた。第2項 東京水道長期戦略構想2020と新しいマスタープランの策定1 新たな長期戦略構想の検討(1)過去の長期構想と当局事業をとりまく環境の変化 当局の施設整備の長期的な展望に関しては、これまで平成9(1997)年の「東京水道新世紀構想-STEP21-」と平成18(2006)年の「東京水道長期構想-STEPⅡ-」(以下「STEPⅡ」という。)という2つの長期構想を策定し、対外的に示してきた。 STEPⅡの策定から既に10年以上が経過しており、この間高度浄水施設整備の完了、東日本大震災の発生、多摩地区での事務委託完全解消等、当局事業は大きな変化を経験した。 また監理団体との一体的事業運営体制の構築や監理

元のページ  ../index.html#72

このブックを見る