64第3項 奥多摩町営水道の統合 1 一元化基本計画と奥多摩町 昭和46(1971)年12月の一元化基本計画では、計画の対象地域から、当面水道需要が地域内でほぼ充足できる状況にあり、立地の関係等から区部及び他市町との水道施設の一体化が困難な市町を除くとしていた。 この結果、五日市町、奥多摩町、日の出村及び檜ひのはら原村の4町村が一元化基本計画の対象外と整理されたが、このうち五日市町と日の出村に関しては、給水人口や水道需要等が増加傾向にあること等を踏まえて、昭和49(1974)年10月に一元化基本計画を変更し、対象地域として追加した。 一元化基本計画対象外とされていた奥多摩町は、広範囲に及ぶ山間地に集落が点在していることから水道事業の効率も悪く、厳しい財政状態と施設更新の難しさに悩まされていた。 こうした状況から、一元化基本計画策定後の昭和46(1971)年以来、都町村会、都町村議会議長会及び三多摩上下水及び道路建設促進協議会等の場を通じて、町は都営一元化の要望活動を継続していた。2 環境の変化と統合への転機 こうした中、平成10(1998)年には奥多摩町として初めて、総務局長、衛生局長、水道局長及び多摩水道対策本部長(現在は多摩水道改革推進本部長という。)に対して直接、一元化基本計画の対象外である奥多摩町等の町村について、一元化基本計画の早期策定を求める要望を直接行った。 これを受け、奥多摩町の水道施設や維持管理体制、財政状況についての現状を把握するため、平成11(1999)年度に町の事業に係る基礎調査を実施した。その結果、将来の需給計画には問題はないものの、施設の老朽化が相当程度進行しており、都に引継ぎが可能な最低限度のレベルまで整備するにも多額の費用を要する等の課題が明らかとなった。 一方、奥多摩町でも平成16(2004)年に水道料金を都に合わせる形で改定するなど経営面の努力をしてきたが、大雨時等の濁水発生や登山客・野生動物等による水質汚濁など、町営水道の水源の安全性確保も難しくなっていった。また、国による広域化の要請、水道法改正による統合要件の緩和など、町営水道を囲む環境もこの間に徐々に変化していった。 平成19(2007)年、小河内ダムのしゅん工から50周年の節目にあたるこの年に、当局は奥多摩町営水道の統合に関して、第3回都議会定例会において「奥多摩町の施設の整備水準を都に引継ぎ可能な水準に向上させるためには多くの課題があることを踏まえ、関係局との調整を含め検討を進めていくこと」を明らかにした。3 町営水道の統合 こうした環境の変化や都議会での答弁を受け、平成20(2008)年1月には知事本局、総務局、財務局及び水道局からなる庁内での検討会を設置した。検討会では財政及び技術的な課題について庁内横断的に検討し、当局、総務局及び財務局の協議により施設整備に要する費用を一般会計が負担することが決まる等、統合に向けた一定の条件整備の目途が立ったことから、平成21(2009)年2月の第1回都議会定例会において、平成22(2010)年4月の統合を目指して取り組むことを表明した。 同年5月、石原都知事と河村町長との間で「東京都の水道事業に奥多摩町の水道事業を統合することに関する基本協定」(以下「基本協定」という。)を締結、続けて7月には水道局長と町長との間で同基本協定の細目協定を締結し、統合に向けた具体的事項を整理し、準備を進めた結果、平成22(2010)年4月に奥多摩町営水道の統合が成立した。 奥多摩町営水道の統合の特徴は、他の市町と異なり事務委託を経ずに直ちに東京都の直営となった点にある。地域の特色や施設管理の知識を引き継ぎ、統合後も円滑に事業を運営するため、地方自治法に基づき、平成22(2010)年4月1日から2年間、奥多摩町から職員2名の派遣を受けた。また、町域の給水安定化に向けて、同年5月には「奥多摩町水道施設整備基本方針」を策定し、これに基づき老朽施設の更新等に取り組むことになった。第4項 今後の課題1 事務委託解消の意義 多摩地区都営水道は、経営改善基本計画に基づき、事務委託の解消を推進してきた結果、市町等関係者の協力も得て、平成24(2012)年度には、委託していた
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