東京近代水道125年史
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58水道の管理に関する技術上の業務の全部又は一部を、民間を含む他の水道事業者等へ委託することを可能とする第三者委託制度が創設されている。 さらに東京都では、平成18(2006)年に公表した「行財政改革実行プログラム」の中で、公営企業においても「公共性の発揮に一層努めていくとともに、民間水準を視野に入れ、コスト構造を徹底的に見直すなど、更なる効率化を追求し、長期的な経営見通しに立った抜本的な経営改革を推進」するとした。 その上で水道事業については、事業運営の根幹に関わる業務は直営、事業運営上重要な業務は監理団体が行い、定型的な業務等可能なものは民間事業者への委託を積極的に拡大することが明記された。(2)事業運営体制に係る当局の課題 当局は、事業拡張期に大量に採用された職員が一気に退職する時代を迎えようとしており、少子化に伴う労働力市場の縮小、年齢構成の偏りや財政支出の増加等を避けるためにも、大量採用によらないで体制を構築する必要があった。 また、豊富な経験とノウハウを有するベテラン職員がいなくなることから、技術と経験の次世代への継承という課題にも直面していた。 さらに、多摩地区では事務委託の解消に伴い、最終的には約1,100人もの市町職員が実施していた業務を引き継ぐことになるため、その業務の受皿をいかにするかという問題もあった。(3)一体的事業運営体制の構築 以上述べてきた国及び都での行政改革の動向、当局職員の構成に係る課題等を踏まえ、平成18(2006)年10月、監理団体を活用した経営効率化の方針として「東京都水道局における一体的事業運営体制の構築について」を策定し公表した。 この方針では、都の水道事業を担う主体を当局、監理団体及び民間企業の三者に分類し、それぞれ事業運営の根幹にかかわる業務(コア業務)、事業運営上重要な業務(準コア業務)及び定型業務を担うこととした(図2-8)。図2-8 一体的事業運営体制イメージ その上で、特に監理団体に関しては、出資比率の引上げや当局管理職による取締役兼務を通じた経営関与、中期事業計画の策定や経営評価の実施、当局職員の派遣や研修等を通じて一体的な事業運営を目指すこととされた。 また、一体的事業運営体制の構築を目指す上で、公共性を発揮しながら一層の経営効率化を図るため、外部の意見を経営に反映させることとし、調査研究及び助言を行う組織として「東京都水道局運営体制諮問委員会」(以下「運営体制諮問委員会」という。)を同月に設置した。 運営体制諮問委員会は企業経営層、公認会計士及び弁護士で構成されており、平成21(2009)年3月には当局と監理団体における具体的な取組とその成果に関する報告書として「一体的事業運営体制の構築に向けた取組とその成果について」を公表し、当初計画どおりの成果を挙げたと評価した。

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