55第2項 料金体系の見直し1 水道料金をめぐる環境の変化 この時期の都の水道需要は、企業の節水努力浸透等により企業や工場といった大口需要が減退する一方、少子高齢化や都心部の住宅供給増加等により生活用水等の小口需要者中心へと変化していった。 特に、小口需要者の増加については、基本水量(当時1か月当たり10㎥)内の件数が全体の44%を占めるなど、著しい増加傾向を示していた。 基本水量内であれば使用水量にかかわらず同一の料金であることから、お客さまからは、節水努力が報われない、使用水量が異なっても料金が同一であり不公平である、といった声が多くなってきた。 一方、当局の料金収入の使途(=事業内容)も、これまで記載したように、施設整備・拡充という大口需要者対策から高度浄水処理の導入や耐震化等、広い都民層を対象とするものへと変化していた。 このように、当局事業を取り巻く環境の変化の結果、料金制度を含めた水道事業経営のあり方全般について検討をする必要が生じた。2 東京都水道事業経営問題研究会の設置と料金体系のあり方検討(1)東京都水道事業経営問題研究会の設置 水道事業を取り巻く環境が大きく変化する中、今後の経営のあり方について幅広く外部の意見を聞きながら検討していくため、当局は平成14(2002)年2月、学識経験者等で構成される「東京都水道事業経営問題研究会」(以下「経営問題研究会」という。)を設置した。 経営問題研究会の所掌は水道事業経営のあり方に関する事項について調査及び研究を行い、その結果を水道局長に報告することとされており、その最初の諮問事項が「今後の水道料金制度のあり方」となった。 経営問題研究会では、途中段階での取りまとめ、公表及び都民意見の公募を行いつつ、諮問から1年半の間に8回にわたる討議を行い、平成15(2003)年7月に「今後の水道料金制度のあり方について」(以下「報告書」という。)と題する最終報告書を取りまとめ、水道局長に提出した。(2)報告書の示す今後の料金のあり方 報告書は①基本水量の付与のあり方、②生活用水に対する軽減措置、③最高単価の見直し、④水量区画の見直し、⑤都民負担のあり方の5点を主な内容としている。 このうち、特に大きな事項は①基本水量の付与のあり方についてである。報告書では、今後は受益者負担の原則に立ち返り、水道の使用量に応じて適正な対価を求めるべきであるとして、将来的には、基本水量制を廃止し、小口径の使用者も1㎥から従量料金を負担する仕組みに改めていくべきとした。 ただし、基本水量を全廃すると料金負担が急激に増加する使用者層が生じる場合が想定されることから、当分の間、基本水量を5㎥までに設定し、これまでの料金における料金負担額とのバランスに配慮して、適切な措置を講ずるべきとした。 基本水量制の見直しは、これまでの水道料金体系の根幹の一つであり、その全廃にまで言及した本報告書の内容は、極めて影響の大きいものであった。 この他にも、これまで小口需要者に行っていた維持管理費やメータ減価償却費の軽減措置の見直し、水量区画間のバランスや節水インセンティブに配慮した料金体系や水量区画の見直し等、幅広い内容について提言がなされた。3 新しい料金体系の構築(1)東京水道経営プラン2004 経営問題研究会の報告書を踏まえ、当局は平成16(2004)年に「東京水道経営プラン2004」を策定し公表した。 この中で、経営努力を通じて315億円を確保した上で、このうち平成18(2006)年度末に見込まれる累積収支不足額156億円を除いた159億円を原資として料金体系の見直しを行うことで、平成18(2006)年度末時点の累積収支の均衡を図ることとした。(2)料金改定 「東京水道経営プラン2004」で今後の財政計画を定めるとともに、平成16(2004)年第3回都議会定例会において、料金体系の変更を含む東京都給水条例の改正案を上程した。 この料金改定案では、基本水量を従来の10㎥から5㎥に引き下げるとともに、水量区画の見直しや最高単価の引下げを行った。 また口座振替の利用者に対して、水道料金を一部減
元のページ ../index.html#57