東京近代水道125年史
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52るが、当局はこれ以外にも渇水や新型感染症等様々な災害の脅威に直面してきた。(1)渇水 渇水については、平成11(1999)年以降、都の主要な水源である利根川水系において4回(平成13(2001)年、平成24(2012)年、平成25(2013)年及び平成28(2016)年)、荒川水系において1回(平成29(2017)年)発生している。 いずれも国や水資源機構、流域各県と協議及び調整を行いながら対応を進め、利根川水系では10%、荒川水系では20%の取水制限が課せられることとなった。このため、お客さまへの給水に大きな影響が生じないように小河内貯水池からの放水量増量や原水連絡管による東村山浄水場への導水量減量といった対策を講じた。(2)新型感染症 新型感染症については、平成21(2009)年の新型インフルエンザ流行に伴う対応経験を踏まえ、翌平成22(2010)年に「東京都水道局のBCP(東京都水道局事業継続計画)<新型インフルエンザ編>」(以下「新型インフルBCP」という。)を策定した。 新型インフルBCPでは、「東京都新型インフルエンザ等対策行動計画」に基づき、発生段階を4つ(海外発生期・国内発生早期・都内発生早期・都内感染期)に分け、それぞれの段階に応じて業務の優先順位や要員及び物資の確保といった対策を定めた。 令和2(2020)年には新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が本格化したが、同年1月に設置した東京都水道局新型コロナウイルス対策本部において、今後は新型インフルBCPに準じた対応を取ることとした。 当局では、感染予防対策としてテレワーク又はオフピーク通勤(窓口業務への対応職員を除く本庁職員全員)、パーテーションの設置、窓口対応職員のマスク着用、アルコール消毒液の入口配備等を行った。 またお客さまへの対応として、一時的に水道料金等のお支払が困難な事情があるお客さまに対し水道料金及び下水道料金の支払猶予を実施したほか、ホームページやTwitter、移動広報車などを活用した感染症対策の周知を行った。 前2節では、この時代に当局が取り組んできた各種施策を記載してきたが、公営企業である当局にとって、あらゆる施策の基盤にあるのは財政及び経営の問題である。 これまでの水道需要が増加する時代から、質を追求する時代へと転換する中、当局は必要な施設整備を進めるとともに経営の効率化を図るため、様々な試みを行ってきた。 本節では、事業経営手法の多様化や財政及び料金に関する動きとともに、100周年以降の25年間を通して重要な事項となる東京都監理団体(以下「監理団体」という。なお、現在は政策連携団体という。)についても記載している。第1項 新しい事業経営システムの導入1 平成初期の水道事業経営 前章で記載したように、当局は平成6(1994)年に、平均改定率16.1%の料金改定を実施した。その後平成9(1997)年の消費税増税を受けた料金改定を行ったものの、当局の企業努力により、平成9(1997)年度末には計画通り累積収支不足を解消できる見通しがついた。 しかし、長引く景気低迷や節水意識の浸透などの影響を受けて、今後は水道料金収入の大幅な増収が期待できない一方、STEP21に基づく施設整備を進めるには多額の経費を必要とするなど、当局の財政状況は引き続き極めて厳しい状況にあった。 こうした中でも、必要な施設整備を着実に進めるとともに、健全な事業経営を継続するためには、従来のような定数削減による経営努力だけでなく、民間企業の手法なども含めた新たなコスト削減策に取り組む必要があった。 そこで、「水道事業経営プラン2000」において、既述の環境会計導入に加えて、事業目標の数値化やPFI(Private Finance Initiative、以下「PFI」という。)の導入による経営手法の多様化といった「新しい事業経営システム」の導入を提唱した。第3節 経営基盤の強化

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