東京近代水道125年史
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51間の都の対応から得た教訓、各種データや科学的知見等に基づき、また、平成24(2012)年4月に公表された「首都直下地震等による東京の被害想定」で示された課題を踏まえ、都は平成24(2012)年に東京都地域防災計画を改定した。 当局も、こうした動きを踏まえて事業計画(平成25(2013)~27(2015)年度)を策定した。また、応急対策計画も随時改定し、発災時の迅速な応急復旧体制の構築に努めた。 こうした計画に基づく具体的な対策として、停電時にも施設の運転を継続するための自家用発電設備の設置、身近な消火栓及び排水栓を利用した応急給水、住民団体等による自主的な応急給水を可能とする給水拠点の区画分け、放射性物質検知のためのゲルマニウム半導体検出器の整備などを実施していった。(2)東京水道施設再構築基本構想の策定 当局では、STEP21に引き続く長期構想として、平成18(2006)年11月にSTEPⅡを策定・公表し、安全でおいしい水の供給、安定給水の確保、環境対策への取組強化といった事項を掲げていた。 一方、都の膨大な水道施設が間もなく一斉に更新時期を迎えることから、水道施設の再構築が必要なほか、水源の脆弱性や水道事業運営による環境負荷、気候変動や大規模な自然災害の発生といったリスクも考慮しなければならなかった。 こうした問題認識の下、将来想定されるリスクや課題を洗い出した上で、水道システム全体の安全度を考慮した施設再構築のあり方を検討するため、平成22(2010)年に「将来の首都東京にふさわしい水道施設の再構築を考える会」(以下「再構築を考える会」という。)を設置した。 同会は、再構築を考える会での検討の中途で東日本大震災が発生したことも踏まえ、数十年から百年先を見据え、「首都東京にふさわしい水道施設の再構築のあり方」について検討した。検討に当たっては、まず首都東京における水道施設の重要性を改めて確認した上で、東京の水道の現状や将来起こりうるリスクと課題について整理し、「水道システム全体の安全度」を検討した。その結果、「安心できる安定給水の実現」、「徹底した質へのこだわり」、「低エネルギー化の追求」の3つを再構築の基本的考え方と位置付けて、将来の再構築のあり方に関する報告書を平成23(2011)年11月に作成し、水道局長に提出した(図2-2)。図2-2 新たな安全度を備えた水道施設への再構築の方向性 報告書の内容を踏まえ、当局は平成24(2012)年3月、「東京水道施設再構築基本構想」(以下「基本構想」という。)を策定及び公表し、この中で、過去に経験のない危機に直面したとしても、水道システム全体で確実に対応できることを「新たな安全度」と定義し、これを備えることの必要性を第一に掲げた。 基本構想では、将来起こりうるリスクと課題を、①気候変動、②環境負荷及び電力使用低減要請の高まり、③大規模かつ長期的又は複合的な災害や事故、④安定給水や水質の更なる安全性向上に対する都民の関心の高まり、⑤経済動向、人口動態、ライフスタイル等の変化の5つのカテゴリーに分け、それらが水道事業に与える影響を整理した。 その上で、報告書で提示された再構築の3つの基本的考え方に基づき、「新たな安全度」の確保に向けた目標として、①首都東京を守る水源の確保、②安定給水を支える供給能力の確保、③浄水場の効率的な再配置、④持続可能な浄水システムの構築、⑤将来にわたるバックアップ機能の確保、⑥エネルギーの最小化、⑦防災機能の更なる高度化という7点を提示した。 ただし、基本構想は今後の再構築に関する基本的な方針であり、具体的な各種事業の計画は、後述する「東京水道施設整備マスタープラン」にて示されることになる。4 地震以外の災害への対応 このように、震災は当局が直面する最大の災害であ

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