50 しかし、道路交通渋滞や徒歩での帰宅を試みる人で道路があふれていたことから、車両又は徒歩いずれによっても被害状況調査を進めることが難しく、調査が大幅に遅れることとなった。 また、携帯電話等の通信規制等により連絡がスムーズに取れず、報告や次の指示を仰ぐことができないといった問題も発生した。 こうした問題はあったものの、管路復旧作業に関しては、地震発生から7日後までに、軽微なものを含め、地震の影響と考えられる被害の復旧作業はほぼ完了した。施設についても、水配を継続しつつ、関係機関と調整の上、順次補修等の作業を進めていった。2 東日本大震災に伴う二次的被害(1)計画停電 東日本大震災では、地震による直接的な被害だけでなく、福島第一原子力発電所の被災による二次的な被害ももたらされた。 東京電力管内では、福島第一原子力発電所の被災により電力供給に支障が生じたことから、3月14日から4月8日までの間に計画停電が実施された。計画停電により、区部では足立区の北鹿浜増圧ポンプ所で全面的に停電したほか、数か所の施設が計画停電の対象となった。しかし、他浄水場における送配水圧力の増強や自家用発電設備等により、停電に伴う断濁水は発生しなかった。 一方多摩地区では、計画停電は3月15日から25日までのうち7日間実施されたが、延べ約800施設が計画停電により停止したほか、多くの井戸水源も停止した。非常用自家発電設備の運転で対応を行った施設も多数あったが、小規模施設にはこうした設備は無く、また地区全体でのバックアップ機能が不十分だったことも相まって、約9千件の断水、約25万6千件の濁水が発生した。(2)金町浄水場における放射性物質の検出 また福島第一原子力発電所の被災により、大気中等に放射性物質が流出するという事態も発生した。 この報道を受け、当局では、発災翌日の3月15日、当局の主要水源水系を代表する金町浄水場(利根川系江戸川)、朝霞浄水場(利根川系荒川)及び小作浄水場(多摩川系)の3か所で、原水及び浄水の全α放射能及び全β放射能測定を開始し、同月17日には、いずれの箇所でも問題がないと確認した。 また翌18日からは、東京都健康安全研究センターが、同センターの蛇口水の放射性ヨウ素と放射性セシウムの測定を開始し、結果を公表するという体制が整った。 こうした中、3月21日には発災後初の降雨となり、大気中の放射性物質が降雨とともに流入するといった影響が懸念されたことから、地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターに委託し、翌22日に、先の3浄水場で放射性ヨウ素及び放射性セシウムの測定を行った。 その結果は23日に出たが、測定を行った浄水場のうち、金町浄水場の浄水から、乳児の飲用に関する暫定的な指針値を上回る放射性ヨウ素が検出された。 23日昼頃に判明した測定結果を受け、同日14時に当局は記者会見を実施、乳児による水道水の摂取を控えること等を呼び掛けた。また、同日21時には総務局、産業労働局及び福祉保健局と共同で記者会見を開き、1歳未満の乳児に対する緊急対策として、ペットボトル24万本を摂取制限の給水区域内の自治体に提供することを発表した。 しかし、一連の会見の後、当局への問合せ件数は爆発的に増加し、例えば局ホームページへのアクセス数は通常時の50倍に当たる一日21万件を記録した。 幸い、翌24日には金町浄水場の浄水に含まれる放射性ヨウ素の値は指針値以下となったことから、前日に発した摂取制限を解除した。 その後も放射性物質の測定と結果の公表を継続して行い、4月5日以降は検出限界値未満が続いた。5月14日以降は検出限界値以上の値が検出された場合のみプレス発表を行うこととし、それ以外はホームページ上でのみ公表することとした。 この他にも、公表直後にスーパー等ではペットボトル水が品薄で購入困難となる、浄水場発生土についても放射性物質への懸念から販売が一時停止になる等、局内外に大きな影響が発生したが、こうした一連の取組により混乱は漸次収束していった。3 新たな「安全度」を備えた水道施設への再構築 (1)東日本大震災の影響を踏まえた災害対策の再検討 都全体では、東日本大震災による被害の状況と半年
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