東京近代水道125年史
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46(2)都の環境施策の変化と当局の対応 この間都庁全体でも、平成14(2002)年1月の「東京都環境基本計画」の策定、平成19(2007)年1月の「カーボンマイナス東京10年プロジェクト」の立ち上げ、同年7月の「東京都気候変動対策方針」の策定など、大気汚染や地球温暖化問題等への様々な対応を進めてきた。 しかしこうした環境問題に対する施策は、近年大きな変化を迎えている。令和元(2019)年5月の「U20メイヤーズサミット」において、都は令和32(2050)年までにCO₂排出実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」を実現すると宣言した。また令和3(2021)年1月には「ダボス・アジェンダ2022」において、令和12(2030)年までに温室効果ガスを平成12(2000)年比で50%削減する「カーボンハーフ」を表明した。 こうした変化の結果、都市生活やあらゆる事業活動が地球規模における環境に大きな影響を与えているとの認識の下、各主体が、あらゆる行動の基本ルールとして環境配慮を組み込み、環境に配慮した行動を自主的かつ自律的に実行していくことが求められるようになってきた。 また、多量のエネルギーや資源を消費する都庁自身が自らの事務事業に伴う温室効果ガス削減などの取組を一層強化していくことが不可欠であるとの認識の下、令和3(2021)年3月には公営企業局も対象とした「ゼロエミッション都庁行動計画」が策定された。 当局もこうした施策の変化を踏まえつつ、令和2(2020)年3月に策定した「東京都水道局環境計画2020-2024」に基づき各種環境施策を推進するとともに、令和4(2022)年のロシア-ウクライナ情勢の影響によるエネルギー不足に対しても、消費電力の抑制等により対処している。第3項 災害対策と危機管理1 当局の震災対策と阪神淡路大震災の教訓(1)当局の震災対策のあり方 当局はこれまでも、震災対策を水道事業の重要な施策の一つと位置づけ、ハード・ソフト両面にわたる施策を積極的に実施してきた。 昭和48(1973)年には、「東京都水道局震災予防計画」(以下「予防計画」という。)を策定した。昭和57(1982)年には応急対策面に関する「東京都水道局震災対策実施計画」を策定、平成2(1990)年に「東京都水道局震災応急対策計画」(以下「応急対策計画」という。)へと改称し、以降予防と応急対策の2つの計画に基づき震災対策を進めてきた。(2)阪神・淡路大震災から得た教訓 平成7(1995)年1月に発生した阪神・淡路大震災は、貯水池の堰えんてい堤一部崩壊や浄水施設の破損、導水管及び送配水管の破損や抜け出し、広範囲にわたる漏水等、現地の水道施設にかつてない大きな被害をもたらした。これらの復旧には3か月以上を要し、この間数十万人の市民が収容施設で不自由な生活を強いられたことから、水道事業者は改めて震災対策の重要性を認識させられることとなった。 一方、管路被害の状況を見ると、材質強度の高いダクタイル鋳鉄管は普通・高級鋳鉄管に比べて被害率が低く、ある程度の耐震性が確認された。ダクタイル鋳鉄管でも継手の抜け出しは多数見られたが、離脱防止機能を備えた管路では被害が無かったことから、管路の抜け出し防止の有効性も明らかになった。 また、発災後の応急対策についても、職員の参集や初期対応に課題があったほか、情報連絡手段を一般加入電話に頼っていたため、回線輻ふくそう輳による情報通信への支障が懸念された。 加えて、他都市からの応援受入れに伴う資機材、車両等の置き場や宿泊施設確保、応急対策諸活動に必要な資機材確保等にも課題があった。 こうした教訓を踏まえ、当局は平成8(1996)年1月に「東京都水道局震災応急対策計画及び東京都水道局震災予防計画の策定方針」を決定した。また、平成9(1997)年8月には「東京における直下地震の被害想定に関する調査報告書」が公表され、当局は平成12(2000)年に応急対策計画を改訂するとともに、平成14(2002)年に予防計画を「東京都水道局震災対策事業計画」(以下「事業計画」という。)へ改称及び改訂した。 以下、改訂後の震災対策について、予防と応急対策の2つに分けて記載する。2 予防面の対応 予防面の対策は、大きく水道施設の耐震性強化と災害時の飲料水の確保という2つの側面に分けられる。

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