東京近代水道125年史
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3 利根川水系全浄水場への導入拡大(1)利根川水系全浄水場への高度浄水処理導入 このように、当初高度浄水処理の導入は江戸川の水質問題に起因して、同河川を水源とする浄水場において進められてきた。 こうした中、利根川・荒川の水を秋ヶ瀬取水堰ぜきから取水している朝霞浄水場においても、原水水質に起因するかび臭やトリハロメタン、陰イオン界面活性剤等に対応するため、粉末活性炭処理を開始することとなった。 利根川水系の流域においても下水道整備等は進められているものの、その完成までには相当の期間を要することや、今後流域の下水道普及率が100%に達したとしても、下水処理場からの排出負荷もあり、大幅な水質改善効果を期待することは困難な状況であることから、粉末活性炭使用量の増加とともに、年間を通じた処理が必要な状況にあった。 また、既述のように平成4(1992)年12月の水質基準改正により、より高い水準での水質管理が求められるようにもなってきた。 こうした状況を踏まえ、平成9(1997)年5月に策定した「東京水道新世紀構想―STEP21―」(以下「STEP21」という。)において、基本施策の一つとして「安全でおいしい水の供給」を掲げた上で、利根川水系の全浄水場について、全量を対象に高度浄水処理を導入することとした。 ただし、当面は効率性及び公平性の観点から、施設能力の半量程度の高度浄水施設を整備することとした。 これを機に、東京都内全域に供給される水道水に対し、安全とおいしさを追求する当局の試みが本格化し35 プラント実験では、高度浄水処理における除去対象をかび臭物質等の微量有機物質などとし、2-メチルイソボルネオール(2-MIB)、アンモニア態窒素、トリハロメタン生成能、紫外部吸光度等を指標に比較検討した。 これら6年に及ぶ実験により、オゾン処理と生物活性炭吸着処理を組み合わせた高度浄水処理システムが有効との結論を受け、昭和63(1988)年6月、金町浄水場への高度浄水処理導入を決定した。(2)金町浄水場 金町浄水場での整備工事は国内初の大規模高度浄水処理の導入となることから、高度浄水処理の導入効果の早期発現、既存施設の稼働と並行した工事着手という点も鑑み、平均的な日配水量の半数程度(日量52万㎥程度)とし、さらに工事を二期に分割することとした。 そして、平成元(1989)年4月に浄水方法変更に伴う事業変更認可を受けて、同年10月から工事に着手、第一期工事(施設能力26万㎥/日)は平成4(1992)年6月、第二期工事(施設能力26万㎥/日)は平成8(1996)年4月に完了した。(3)三郷浄水場 また、金町浄水場と同じく江戸川を水源としている三郷浄水場でも、かび臭や有機物、アンモニア態窒素の発生等、水質管理上の問題が生じていた。 平成2(1990)年夏季から粉末活性炭処理を実施していたが、平成6(1994)年7月に施設能力の半量(55万㎥/日)を対象とした高度浄水処理導入を正式決定した。同年12月からは施設整備工事に着手し、平成11(1999)年3月に完成・通水した。(4)高度浄水処理フローの選定 金町浄水場で実施されたプラント実験の中で、既設浄水処理工程のどの部分に高度浄水処理工程を導入することが効果的であるか、調査を行った。 調査は複数の処理フローの処理性を比較する形で実施し、最終的に表2-1記載のフローに決定した。  なお、三郷浄水場も、原水が金町浄水場と同じ水系であることから、高度浄水処理フローも金町浄水場と同じものを採用した。表2-1 金町及び三郷浄水場に導入された高度浄水処理フロー

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