東京近代水道125年史
36/206

34 本章は、主に平成11(1999)年から平成25(2013)年の間に行われた当局の事業及び施策について記載している。 この時代は、昭和年代の施設能力拡張を中心とした事業運営から、高度浄水処理の導入に代表される質の追求へ、施策の重点が大きく転換した時期であった。 また、阪神・淡路大震災の発生を受けた震災対策、地球温暖化に代表される環境問題等、これまでとは異なる新しい課題への取組を求められ始めた時代でもある。 本章では、この時代の歴史を大きく4つの節に分けて記載している。第1節では高度浄水処理に代表される安全とおいしさの追求に係る施策、第2節では環境問題や危機管理といった安定給水を支える取組という、この間の施策の主要な柱となった事項について記載している。 続く第3節では、こうした取組の基盤となる公営企業としての経営改善の取組について記載している。そして、最後の第4節では、経営改善の一環として、昭和40年代以来大きな課題となってきた多摩地区水道事業の都営一元化・事務委託解消について記載している。第1項 原水水質の悪化と高度浄水処理の導入1 江戸川におけるかび臭問題 既述のとおり、昭和47(1972)年頃から、江戸川を水源とする金町浄水場では藍藻類が作り出す物質に起因するかび臭の発生が続き、水質管理上重大な問題となっていた。 水質の改善には水源河川の水質保全が重要な対策であったが、原水水質に大きな影響を及ぼしている江戸川支川の坂川の浄化対策や江戸川左岸流域下水道整備の促進といった最も基本的な施策は、完成まで長期間を要するものと考えられ、それまでの間、水質改善には多くを望めない状況にあった。 当局としては、局独自あるいは利根川水系水道事業者連絡協議会を通して、これら基本的な施策の促進を求めるとともに、当面のかび臭除去を目的として、昭和59(1984)年度から金町浄水場において、粉末活性炭処理を本格的に導入した。 しかし、河川の流況や水温変動に伴う原因物質の急激かつ複雑な濃度変動に対して十分な対応が困難なこと、粉末活性炭を多量に注入した場合、活性炭の粒子が砂ろ過池まで流入し、正常なろ過処理が困難となることなど、粉末活性炭処理の限界が顕在化してきた。2 高度浄水処理の導入決定(1)実験的運用と導入の正式決定 こうしたことから、当局は、かび臭原因物質の安定的かつ効果的な除去を目的に、高度浄水処理方式に関する実験調査を開始することとした。 高度浄水処理には、オゾン処理、活性炭処理、生物処理等があり、それぞれ処理性は異なっているが、このうち、かび臭除去に有効なオゾン処理と生物活性炭を組み合わせる処理フローを検討した。 新たな浄水処理方法を実施設に導入するという大きな目標に向け、昭和58(1983)年度に予備的室内実験を行い、昭和59(1984)年度から昭和63(1988)年度までプラント実験を実施した(写真2-1)。【写真2-1 金町高度浄水処理実験プラント】第1節 安全とおいしい水を目指して第二章 世界に誇る安心水道を目指して【Chapter 2】Aiming for World-Class Reliable Water Supply

元のページ  ../index.html#36

このブックを見る