32第一章 東京水道100年の概観から適用された。 昭和53(1978)年に策定した財政健全化計画はほぼ計画どおりに推移することができたものの、資材費や人件費等の増加が見込まれ、経営環境は依然として厳しい状況にあった。そこで昭和56(1981)年には、事業見直しを行ってもなお発生する収支不足補填を目的とした改定率46.83%の料金改定を含む新たな財政健全化計画を策定し、都議会において承認された。 この時、都議会から合理的な料金体系について検討するようにという付帯決議が付されたこと、また経済の低迷や省資源意識の浸透等から水の需要構造が大きな影響を受けていた事等を踏まえ、昭和58(1983)年6月、都は東京都上下水道財政調査会を設置し、料金体系及び費用負担区分のあり方について調査・研究を委嘱した。 同調査会は同年10月、個別原価主義に適合する口径別料金体系を引き続き採用すること、基本料金の軽減度合への一定基準の設定、従量料金の逓増度緩和等の内容を含む「東京都水道及び下水道料金の体系等に関する調査報告」を知事に提出した。 昭和59(1984)年度には、昭和61(1986)年度までを計画期間とする中期計画を策定し、その中に平均改定率10.5%の料金改定を盛り込んだ。この料金改定では、先の調査会報告を尊重し、基本料金の軽減率引き下げや従量料金の逓増度緩和を行うこととし、同年5月1日より改定が実施された。2 水道料金と消費税転嫁 昭和59(1984)年度の財政計画期間が終了する昭和62(1987)年度以降については、引き続き企業努力を精力的に進め、大幅な経済変動等がない限り、料金改定を行わない方針であった。しかし、昭和63(1988)年12月に消費税法が成立し、平成元(1989)年4月から適用されることが決まったため、水道事業も納税の義務を負うこととなり、消費税の水道料金への転嫁等について検討した。 消費税導入に当たって向こう3か年の財政収支を推計した結果、既定水道施設整備計画等の着実な推進を図るための財源の確保、用地の所管換等内部努力の一層の推進、一般会計との経費負担のあり方等によって307億円の資金剰余が見込まれた。そこで、消費税導入の影響を最小限にとどめることとし、現行料金を4%引き下げるとともに、これに3%の消費税相当分を転嫁した額を新料金(議決日は平成元(1989)年3月30日)とした。料金改定案は平成元(1989)年3月に付帯議決をつけ原案どおり可決され、新料金は同年6月分から適用された。3 平成6年の料金改定 水道事業財政は、昭和59(1984)年の料金改定以降の10年間、諸物価が上昇したにもかかわらず、毎年の企業努力などで、料金水準の維持に努めてきた。しかし、平成5(1993)年度末には約148億円(決算では182億円)の累積収支不足額が見込まれた上、今後も物価上昇や水源開発経費等の増加、生活用水の使用水量増加による販売単価の逓減などにより、極めて厳しい財政状況が予測された。 このため、平成6(1994)年度から平成9(1997)年度を計画期間とする「水道事業中期(6~9年度)計画」を策定した。この計画では、職員定数の削減、資産の有効活用、一般会計との経費負担区分の見直し等の企業努力を行ったとしても、なお平成9(1997)年度末で1,771億円の累積収支不足額が見込まれたことから、平均改定率16.1%の料金改定を実施することとした。 この料金改定案を平成6(1994)年3月の第1回都議会定例会に提案したが、3月30日、都民生活に与える影響を緩和するための減免措置などの付帯決議が付された上で原案どおり可決され、6月1日から適用された。 この料金改定では、適用件数がわずか2件に減少していた共用扱いを廃止したことを除けば、基本料金及び従量料金の区分も前回の料金体系と変更はなかったが、逓増度は4.7倍から4.5倍に多少緩和した。また、検針期間については昭和58(1983)年4月から実施されていた4か月検針を隔月検針とし、平成7(1995)年4月から実施した。 この平成6(1994)年の料金改定以降、本稿執筆時点(令和4(2022)年度末)までの間、消費税増税に伴う料金改定を除き、利用者の料金負担増を含むような改定はなされていない。
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