第一章 東京水道100年の概観31の均てん化、迅速な事故対応等に不可欠な給水所の新設及び拡充並びに送配水管の新設工事を実施するとともに、管路の経年劣化に伴う取替えなどを積極的に行い、配水施設の耐震性強化及び漏水防止対策の推進を図ることとした。(4)多摩配水施設整備事業 多摩地区では、基幹施設を除いた送配水施設は、都営一元化により引き継いだ施設が主で、創設された年代も施設の規模も様々であり、広域的かつ有機的に運用することは困難であった。また、山間部や周辺丘陵部における施設の整備なども不十分な状況にあった。 そこで、多摩水道施設拡充事業及び送配水施設総合整備事業の多摩地区部分などの事業を継承しながら多摩配水施設整備事業を計画し、配水の均てん化を図るための施設の再編成、漏水防止の強化、施設の耐震性の強化などを重点施策として進めた。 多摩地区の総合的な配水施設整備を図る主要事業は、配水池容量24万㎥分の給水所の整備、780㎞の送配水管新設、540㎞の配水管り替えなどであった。 昭和63(1988)年には普及率100%を達成したが、市町域を越えた一体的な送配水施設の整備はいまだ十分とは言えない状況にあり、今後、更に都市化が進展し水道需要の増加が見込まれたので、第三次東京都長期計画の策定時(平成2(1990)年)に、多摩配水施設整備事業を見直し、新たな10か年計画の事業として、配水池容量22万㎥分の給水所の整備、770㎞の送配水管新設、400㎞の配水管取替えなどを盛り込んだ。3 「東京水道新世紀構想―STEP21―」の策定 平成7(1995)年1月の阪神・淡路大震災による水道施設の大きな被害や、複雑化する水質問題は、水道事業に大きな問題を投げかけ、水道システム全体に対する危機管理にどう対処するか、来る21世紀を見据えた水道施設整備のあり方を改めて展望することが、緊急の課題となっていた。 このため、平成8(1996)年5月、水道使用者である都民や学識経験者等で構成する「生活都市東京の水道システムを考える会」(以下「考える会」という。)を設置し、来るべき21世紀の東京水道の基本的な方向を明らかにするため、「水道使用者の視点から見た水道システムのあり方」に関して、検討を依頼した。 考える会は、7回にわたる審議を経て検討結果をまとめ、「安心を未来へつなぐ東京水道」と題する報告書を平成8(1996)年11月に提出した。 そして平成9(1997)年5月、同会の報告に基づいて、今後四半世紀にわたる東京水道の指針として「東京水道新世紀構想―STEP21―」(以下「STEP21」という。)を策定した。 STEP21では、渇水や地震に「つよい水道」、常に環境に配慮した、また公平かつ効率的に使用者に届けられる「やさしい水道」を構築することにより、安全でおいしい水を供給するとともに、水道使用者に親しまれる「安心できる水道」を実現することを基本理念とした。 その上で、基本理念を実現するための基本施策として、①安定した水源の確保、②ゆとりある施設の容量の確保、③公平で効率的な送配水システムの構築、④安全でおいしい水の供給、⑤生活に密着した水道サービスの5点を取り上げ、これらを柱とした施策を展開していくこととした。 昭和60(1985)年12月に施設調査会が「東京都における水道システムの今後のあり方について―21世紀を目指して―」をまとめて以来、将来を見据えた施設整備の長期計画策定は大きな課題であった。 STEP21は、長らくの課題であった21世紀の東京水道のあり方を示した初の文書として、平成18(2006)年に「東京水道長期構想―STEPⅡ―」が策定されるまでの約10年間、当局事業の羅針盤となった。第4項 財政基盤の確立1 昭和50年料金改定以後の財政計画 昭和50(1975)年の料金改定と共に策定された財政健全化計画では、計画期間中の財政収支では約117億円の資金剰余となり、おおむね初期の目標を達成することが出来た。 しかし、物価の高騰や昭和30~40年代の投資への償還なども重なり、料金改定を行わない場合、昭和55(1980)年には1,120億円の累積赤字が見込まれた。 そこで、昭和53(1978)年9月の第3回都議会定例会では、昭和53(1978)年12月1日から平均37.14%の料金改定等を含む水道事業財政健全化計画を策定した。この料金改定案は同年10月に可決され、12月1日
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