東京近代水道125年史
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30第一章 東京水道100年の概観川区大杉三丁目まで)等の新設を実施することとした。江東給水所と江戸川区大杉三丁目以南の東南幹線の整備は後期事業とされたが、昭和58(1983)年に策定された送配水施設総合整備計画に組み込まれ、実施された。第3項 量的拡張から質的充実への転換1 送配水総合整備計画 東京の水道は、相次ぐ拡張事業によって整備されてきたが、送配水施設についても、需要増に対処するための幹線整備がなされ、多摩川と利根川の相互融通を図る基幹施設を中心に機能を強化し、大規模水道としての骨格がほぼ形成された。 しかし、市域拡張に伴う隣接水道の併合、多摩地区水道一元化による給水区域の拡大といった経過があり、各地区の需要が大きく異なっている中で引き継いだ市町村水道などの送配水施設が有機的機能に欠けていたのは否定できない。 給水の安全性は、浄水場から家庭まで一貫して確保して初めて目的を達成できるものであり、そのためには基幹施設の有機的機能に合わせて各地区の送配水施設を整備し、施設総体として安全性の高い、効率性のよいものにすることが必要であった。 このため、昭和57(1982)年5月、局内に検討委員会を設置して送配水システム機能の質的向上を図る検討を行い、翌年5月、従来から実施してきた配水施設整備事業を包含した新たな送配水施設総合整備計画を策定し、同時に昭和56(1981)年度から昭和65(1990)年度までの事業計画を定めた。2 施設整備事業の推進(1)水道施設整備事業計画の策定 昭和60(1985)年5月、当局は局内に「水道システム調査委員会」を設置し、水道事業の将来を展望し、給水の一層の安定化を図るための調査・検討を開始した。この委員会では、施設、水運用及び水質関係の3つの分科会において調査・検討を行い、その結果を踏まえて、「安定給水確保のあり方」及び「水道水の安全確保のあり方」について学識経験者に審議を依頼することとした。 同年10月に「東京都水道局水道施設調査会」(以下「施設調査会」という。)が設置され、同年12月、調査会は「東京都における水道システムの今後のあり方について―21世紀を目指して―」と題する報告書を取りまとめ、水道局長に報告した。 この報告書を受け、当局では需給計画を改定するとともに、昭和61(1986)年11月に昭和61(1986)年度から昭和70(1995)年度の10か年の整備事業化内容を定めた「水道施設整備事業計画」を策定した。この事業計画では、整備内容の充実及び事業目標年次の変更見直しを行い、これまでの事業を「浄水施設整備事業」、「配水施設整備事業」、「多摩配水施設整備事業」の3事業に整理統合した。(2)浄水施設整備事業 浄水施設整備事業は、将来の水道需要増加への対応と一層の安定給水の確保を目的として必要な水源を確保するとともに、浄水施設及び取水、導水施設について、施設能力の増強並びに老朽化施設の更新、重要施設の信頼性の向上、効率化のための施設整備を行うものである。 本事業の主体は三郷浄水場の増強(日量55万㎥)並びに金町浄水場をはじめ、利根川水系を原水とする、朝霞浄水場、三園浄水場及び三郷浄水場への高度浄水施設の導入である。主要目的であった三郷浄水場の増強は、平成3(1991)年度に一部通水(27万5,000㎥/日)して、平成5(1993)年度に完成した。高度浄水施設の導入に関しては、次章で経過を詳述する。(3)配水施設整備事業 区部の送配水基幹施設は、事故時などにおける配水系統間のバックアップ機能の整備が万全でないことをはじめ、配水池容量の不足と地域的な偏在、管や継手の経年劣化による濁水、漏水の発生、更には管路及びポンプの送水・配水機能が分離されていないことにより適正な送・配水圧を確保できないなど、より安定した給水を行っていくには、まだまだ不十分な状況にあった。 こうしたことから、第四次利根川系水道拡張事業の送配水施設や送配水施設総合整備事業の区部における事業を継承した、10か年計画の配水施設整備事業を推進することになった。 給水所が地域的に偏在し、かつ、配水池容量が不足していること及び浄水場、給水所等の施設間の相互融通機能がいまだ十分でないことを踏まえ、整備に当たっては、弾力的な水運用、配水池容量不足の解消、配水

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