【資料編】法令・答申125 years' history of Tokyo Modern Waterworks〔法令・答申〕史跡玉川上水保存管理計画(抜粋)1831 策定の背景 玉川上水は、江戸時代の承応3(1654)年、江戸市中への給水を目的として作られた上水で、多摩川中流の羽村取水口から四谷大木戸までの約43㎞は素掘りの開渠、江戸市中は暗渠であった。 上流部(羽村取水口から小平監視所まで)は現在も水道施設として機能しており、都民生活を支えている。昭和40(1965)年、小平監視所から下流は水道原水導水路としての機能が失われ通水も途絶えたが、昭和61(1986)年から清流復活事業が実施され、身近な水と緑の空間として、広く都民に親しまれている。 平成15(2003)年8月、竣工350年を迎えた玉川上水は、江戸、東京の発展を支えた歴史的価値を有する土木施設・遺構として、国の史跡に指定された。2 目的 玉川上水は、貴重な土木施設・遺構であると同時に、水と緑の空間として都民に親しまれ、学校教材にも取り上げられるなど、郷土史を学ぶ上でも非常に重要なものと位置付けられている。しかし、近年では水路の法面崩壊、法面崩壊の要因となる樹木の巨木化等、維持管理上の課題が生じている。 また、玉川上水が9市3区(羽村市、福生市、昭島市、立川市、小平市、小金井市、西東京市、武蔵野市、三鷹市、杉並区、世田谷区、渋谷区)を通過し、維持管理等に関係する団体も多いことから、保存管理を適切に推進していくためには、保存管理に関して関係機関が共通認識を持ち、取組を推進することが必要である。本計画は、史跡「玉川上水」を適切に保存管理し、後世に継承していくための指針として策定されるものである。さらに、国民の財産である史跡「玉川上水」について、多くの市民が理解し、活用できるよう、保存管理の方針・方法や整備活用の方向性について明らかにすることを目的とする。(1)史跡「玉川上水」 玉川上水は、平成15(2003)年、「文化財保護法」(昭和25年法律第214号)第69条第1項(現第109条第1項)の規定により国の史跡に指定された。〔指定年月日(官報告示):平成15(2003)年8月27日付け 文部科学省告示第137号〕3 対象 本計画は、史跡「玉川上水」を対象とする。ただし、史跡を確実に保存するために必要となる事項に関しては、史跡指定範囲外の周辺環境についても、その方向性等を示した。なお、史跡指定範囲には、大正13(1924)年に国の名勝に指定された「小金井(サクラ)」が含まれているため、名勝「小金井(サクラ)」についても、計画の対象とする。1 沿革と特徴(歴史的価値) 玉川上水は、江戸市中への給水のために承応3(1654)年に竣工した。多摩川を水源とし、羽村から四谷大木戸まで延長約43㎞、幅約5.5mの自然流下による素掘りの開渠である。江戸時代から現代まで、江戸・東京の都市機能を支え続けてきた重要なインフラストラクチャーであり、かつ、素掘りの開渠部分が現存するなど、近世(江戸期)から近代(明治・大正・昭和初期)にかけての土木遺産としても他に例のない貴重なものとなっている。また、幕府により、導水路維持のために管理されてきた水路沿いの堤は、元文2(1737)年以降に現在の小平市・小金井市周辺の区間に植栽されたヤマザクラの並木(以下「小金井サクラ」という)なども含め、現代では緑地帯としての役割も果たしている。2 文化財指定 玉川上水は、史跡「玉川上水」及び一部の区間が名勝「小金井(サクラ)」として文化財に指定されている。(平成19(2007)年3月 東京都水道局)第1章 計画の目的第2章 玉川上水の概要史跡玉川上水保存管理計画(抜粋)
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