東京近代水道125年史
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【資料編】法令・答申125 years' history of Tokyo Modern Waterworks168〔法令・答申〕将来の首都東京にふさわしい水道施設の再構築を考える会報告書(抜粋)1-1 背景 東京の水道は、昭和30年代~40年代にかけての高度経済成長期を中心に急増した水道需要を賄うため、需要量に対応した水源の確保に努めるとともに、早期通水を第一に、浄水場などの施設を短期的かつ集中的に整備してきた。これらの施設はまもなく一斉に更新時期を迎え、東京水道はこれから再構築の時代に入る。 水道施設の再構築に当たっては、これまで行ってきた需要への対応という考え方から脱却し、将来想定されるリスクに十分対応できる「安全度」を備えたものとしていく必要がある。1-2 首都東京における水道施設の重要性 都は1,300万人余りの常住人口に加え、日々他県から約300万人の流入があり、昼間は約1,600万人もの人々が活動を行う大都市である。また、国会、裁判所、各省庁等、立法・司法・行政機関が集中し、国政機能の集積地となっているばかりでなく、多くの本社機能が立地し、ビジネスの中心地ともなっている。 このような大都市の機能を根底から支えているのは、電気、ガス、水道、下水道等の基幹的なライフラインである。中でも、水道水の安定的な供給は、首都機能を支える上で欠くことのできないものとなっており、東京で断水が発生した場合には、甚大な被害が予想される。2-1 水源 現在、都が保有している水源量は日量630万㎥であるが、この中には、神奈川県内の水事情に取水の安定性が影響を受ける相模川(分水)などの「課題を抱える水源」が日量82万㎥含まれている。2-2 施設 都の水道施設の多くは、供用を開始してから40年~50年程度が経過し、まもなく一斉に更新時期を迎えることになるが、浄水施設能力の低下、更新や耐震化が困難な施設の存在、水道事業によるエネルギー使用、膨大な施設の更新・耐震化や維持管理といった課題が浮き彫りになってきている。2-3 水道需要 これまで都は、水道需要予測による計画一日最大配水量に見合う水道施設の整備を目標としてきた。現行の水道需要予測では、水道需要や社会経済動向等についての10~15年間程度の実績期間のデータ等を用いて、モデル式から、10年程度先の水道需要を予測している。一方、水道施設の整備・供用期間は数十年~100年以上にわたり、水道需要予測の予測期間をはるかに超える状況となっている。 また、都の水源の8割を依存する利根川・荒川水系の水資源開発は5年に1回発生する規模の渇水に対応することを目標としており、10年に1回としている全国の主要水系や、既往最大の渇水を目標としている諸外国の主要都市と比べて、渇水に対する安全度が低い計画となっている。 水道施設の再構築は、浄水施設能力の低下や、更新・耐震化が困難な施設の存在など、現在抱えている課題を解消し、将来起こりうるリスクにも対応できるよう進めていく必要がある。特に、平成23年3月に発生した東日本大震災を踏まえると、少なくとも、過去に起きたリスクは今後も発生しうると想定しなければならない。 また、将来の東京水道は、「気候変動」、「環境負荷及第1章 東京における水道施設の再構築第2章 東京水道の現状と課題第3章 将来起こりうる水道施設のリスクと課題将来の首都東京にふさわしい水道施設の再構築を考える会報告書(抜粋)(平成23(2011)年11月 将来の首都東京にふさわしい水道施設の再構築を考える会)

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