東京都尖閣諸島現地調査 調査報告書(抜粋版)
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植物では、分類的な種の多様性の喪失に伴う遺伝的多様性の喪失が心配されている。ただ不思議なのは、野生ヤギの食性として、「ヤギは他の家畜化された反芻獣に比べて、気候条件に対する適応幅が広く、乾燥に強い代謝機能を持っている。また質の悪い植物を採食し消化する生理的な能力と、潅木や枝の多い木にも登り、棘のある植物も採食できる優れた採食行動を持ち合わせている(Silanikove 1997,2000)」と常田・滝口(2011)は紹介している。しかし、オーストラリアなどのヒツジは、地中営巣性の海鳥類の卵や雛をも採食してしまうと指摘されている。野生化したヤギの食性研究が日本では欠如している。小型であれば昆虫、鳥類の卵や雛、軟体動物、貧毛類等も捕食しているのではと想像してしまう。ぜひ調査して欲しいものである。 魚釣島では、全域において海岸に漂着しているゴミが見受けられた。長い期間、除去されていないため相当な量が蓄積している(写真31)。特に北側の海岸に多く、台湾および中国方面から流れてきたものと考えられる。また、風と波により高い場所まで打ち上げられているものもあった。 最も多い漂着ごみは、発泡スチロール製のもので、漁具、漁網などの漁業関係廃棄物の数も多かった。中にはクーラーボックスなど遊漁船に関係するゴミも見受けられた。その他、飲料のペットボトルや液体を運ぶポリ容器なども多かった。 また、周辺海域に浮かぶ漂流ごみは、速い潮流により一点には留まらないようだ。強風の時などに打ち上げられたものが、島に残留している。 北小島、南小島では、島の平地部分に漂着ごみが集積しているが、量的には魚釣島より少ない。 漂着ごみ、漂流ごみを餌と間違え食べてしまうウミガメや海鳥も多く、自然環境保全のためには、ゴミが堆積、滞留しない環境を作ることが必要である。 記録では、魚釣島の水場は、旧古賀村の、現在灯台が建っている東側に一か所だけあることが報告されていた。しかし、今回の調査により魚釣島には複数の川が存在していることが判明した。中には、滝が流れ落ちている場所もあった。この川は、水量が豊富であるとは言えないが、常時、水流があると考えられる(写真30)。 川は、島の北側で最低三か所目視できた。また、島の南側の岩盤からは、水がしみ出ている場所が数か所あった。以前から報告されていた灯台付近の水場からは、豊富な水量が岩場を伝い海まで流れ落ちていた。 南小島では、水場は目視できなかった。 北小島では、島の南西側の岩盤から水が流れ出ている場所が見受けられた。ただし、水量は極めて少なかった。 漂着ごみ 水場 -30-

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