クロアジサシは、岩の上で集団で休んでいる場合には、双眼鏡でも極めて発見が困難であった。それは岩の色の中にクロアジサシが溶け込んでしまう平衡色となっているからである(写真6)。これらの正確な個体数は写真により個体数を補正した。このクロアジサシは、時々単独個体が船に近づいて来たりする。尖閣諸島での繁殖生態は殆ど不明である。営巣場所は草地、岩場、砂地等場所を選ばないようである。なかには難破船の上で営巣したりすることが知られている。一腹卵数は一個である。海外の興味ある報告(cf. Hogan,J. 1925 Emu 24: 266-275)では、「産卵後に周囲の仲間からあまりに邪魔されるので、抱卵中の卵をくわえて飛び立ち近隣まで運んで置き、再度抱卵を再開した。」と記されていた。ぜひ、どなたか若い研究者に今後検証して欲しいものである。クロアジサシは群れで飛翔したり集団で休息している場合もあれば、単独で飛翔している場合も見られた。急峻な崖の側面を好む性質もあるらしく、海に直接面した海崖で多く見られた。イソナノ瀬戸に面した島の南部の礫質砂岩の緩斜面には集団で休む場面も見られたが、大きな集団ではなかった。小型船に興味を持って近づいて来る個体も時たま見られた。 アオツラカツオドリは不思議なことに殆ど飛翔個体が観察されなかった。飛翔個体は10羽以下であった。特に島の南部の緩斜面では1個体が集団を作らず分散した状態で地上部でじっとしていた。集団の場合はいずれも高所で、間隔をおいて4~5羽が地上部でじっとしていたり、中には大きな岩の日陰の部分で1羽でじっとしていた。それらはすべて双眼鏡でやっと種が識別できるほど遠方であった。じっとしている個体は写真で見ると、口を半開きにして翼を広げ、暑さに耐えている様子であった。不思議なことにカツオドリとは混群を作らないようであった。小型船から見えない島の上部でもアオツラカツオドリが結構多く休んでいることであろう。 -25-
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