写真13は崖の半ばにあるテラス、そして写真14は海岸に近い草地と岩上等に見出されたアオツラカツオドリである。カツオドリの幼鳥との外部形態の違いは、脚の色がカツオドリでは黄色であるが、アオツラカツオドリでは灰青色である。これはデジタルカメラで撮影すれば容易に識別できた。 オオアジサシは、イソナノ瀬戸では岩礁上で大きな群れが休んでいた(写真15)。南小島では島の内部の高所で集まっているらしく小型船よりは観察できなかった。ただ群れている喧騒が僅かに聞こえてきた。意外に観察数は少なかった。 クロアジサシは、営巣場所を選ばず何処ででも繁殖できるようである。草の生えた平地でもコロニーを作って繁殖できる種である。南小島には隆起サンゴ礁の平地が発達しているので、そこも繁殖場所として利用しているのだろう。調査時にはどちらかというと海に面して高い崖があり、その崖が湾曲していて難破船などがあるとそこに多数集合していた(写真16)。 サギ類は、隆起サンゴ礁の台地が発達しているのでそこが餌場となっているのだろう。ただ休息するのは急峻な崖が利用されているようであった(写真17)。 尖閣諸島の海域は北東進する黒潮本流が流れている。そのために海水温は年間、20~30℃の間で変化するものの、他の沖縄諸島よりも年平均気温は2~3℃高いといわれている。尖閣諸島域を通過した黒潮本流は、大部分は太平洋域を北上して九州、四国、本州の太平洋側を北上して千葉県の銚子沖あたりから東進して北アメリカ大陸沿岸域にまで達する。しかし、尖閣諸島を通過した黒潮本流の一部は、分派流として対馬海峡を通過し、対馬暖流と名を変えて日本海へと流入して、九州、本州、そして北海道の西岸域を北上して宗谷海峡に達する。宗谷海峡を通過すると宗谷暖流と名を変えて北海道の北東沿岸域を流れ下り、北方四島の国後島と択捉島の北岸域に達して消滅する。また日本海へと流入した対馬暖流の約60%は、津軽海峡を通過して津軽暖流と名を変えて、東北地方の宮城県沿岸域にまで南下する。海洋学的に見ると日本本土の60~70%以上は、黒潮の恩恵を受けた国として評価できる。すなわち海洋学的に見ても尖閣諸島海域は、日本がこの海域を管理する国として最も相応しいと考える。 海鳥類にとっての尖閣諸島といえば、まず念頭に浮かぶのはアホウドリの繁殖地の復活であろう。南小島や北小島ではアホウドリが増加しつつあるらしい(長谷川 2003)。魚釣島は過去には尖閣諸島中で最大の繁殖地であった。野生ヤギの駆除が完全に行われ、その影響でのクマネズミの増加対策も成功すれば、将来計画として、魚釣島のアホウドリ繁殖地の復元計画を、今から模索すべきである。 海鳥類にとっての尖閣諸島 ― 44 ―
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