東京都尖閣諸島現地調査 調査報告書
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の卵をくわえて飛び立ち近隣まで運んで置き、再度抱卵を再開した。」と記されていた。ぜひ、どなたか若い研究者に今後検証して欲しいものである。クロアジサシは群れで飛翔したり集団で休息している場合もあれば、単独で飛翔している場合も見られた。急峻な崖の側面を好む性質もあるらしく、海に直接面した海崖で多く見られた。イソナノ瀬戸に面した島の南部の礫質砂岩の緩斜面には集団で休む場面も見られたが、大きな集団ではなかった。小型船に興味を持って近づいて来る個体も時たま見られた。 表2 北小島周航で観察された海鳥種と個体数 和 名 学 名 個 体 数 カツオドリ Sula leucogaster 129 アオツラカツオドリ Sula dactylatra 46 オオアジサシ Sterna bergii 214 クロアジサシ Anous stolidus 99 合 計 488 アオツラカツオドリは不思議なことに殆ど飛翔個体が観察されなかった。飛翔個体は10羽以下であった。特に島の南部の緩斜面では1個体が集団を作らず分散した状態で地上部でじっとしていた。集団の場合はいずれも高所で、間隔をおいて4~5羽が地上部でじっとしていたり、中には大きな岩の日陰の部分で1羽でじっとしていた。それらはすべて双眼鏡でやっと種が識別できるほど遠方であった。じっとしている個体は写真で見ると、口を半開きにして翼を広げ、暑さに耐えている様子であった。不思議なことにカツオドリとは混群を作らないようであった。小型船から見えない島の上部でもアオツラカツオドリが結構多く休んでいることであろう。 オオアジサシは真昼の炎天下であっても飛翔している個体が見られた(写真7)。しかし、多くは隆起サンゴ礁の上部や岩礁上で集団を形成して休んでいる個体が多かった(写真8、写真9)。幼鳥も混じっているところからまだ親に給餌を受けている個体もいるのではないかと考えられた。親鳥と考えられる個体が嘴に魚を咥えて運んでいる場面が3例観察できた。礫質砂岩や隆起サンゴ礁上で集団を形成して休んでいるオオアジサシの群れの外縁には少数のクロアジサシのいる場合が見られた。一方、クロアジサシの休んでいる集団の場合には、その中にオオアジサシの混じっている場合も見られた。この場合にはオオアジサシはクロアジサシの集団の任意の場所に位置していた。両者の種間関係では、オオアジサシの方が優位になっているのであろう。オオアジサシの場合は単独個体で休んでいる例は見出せなかった。 ― 42 ―

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