東京都尖閣諸島現地調査 調査報告書
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金銭的な価値については、魚価が市場での評価に左右されるため、大漁であれば大儲けするとも言えない。尖閣諸島へ出漁する天候の穏やかな日は石垣島周辺海域でもそれなりの漁獲量が得られ、実際のところ市場での競りで高値にならないことも少なくない。那覇の市場へ送っても輸送費等のコストがかかり、他の漁船の水揚げ状況にも魚価が左右されるという背景もある。また、全国的に魚価が低迷していることや燃料費が高騰していることは、間違いなく尖閣諸島へ出漁する上での大きなハードルとなっている。 しかし、宮古島市の伊良部漁協が「冬の尖閣スマガツオ」という地域ブランドを確立していることから、今後、尖閣漁場の調査や操業経験を重ねていくことにより、八重山における尖閣ブランドを確立できる可能性は大いにあると考えている。 4 尖閣諸島周辺海域における無線の通信状況について 尖閣諸島周辺海域では通信ができず、気象情報が入手できない。実際、操業に支障をきたしており、安全な操業を行うための通信施設が必要である。 5 尖閣諸島周辺海域までの燃料消費量について 通常の場合、燃料を600~800リットル消費する。 6 尖閣諸島周辺海域における他国漁船の活動状況について 漁船では、台湾の漁船が最も多く目撃されている。台湾漁船は、1972年の沖縄返還以前から尖閣諸島に出漁しており、周辺海域で大時化にあった時、台湾漁船と一緒に島影へ避難した話をベテラン漁師から聞くこともたびたびある。 尖閣諸島に関する領土問題が大きな注目を浴び、海上保安庁の巡視体制が厳重になってからは、台湾漁船の数も少なくなっている。台湾漁船は周辺海域でサメやマチを獲っているようである。また、クルーザータイプの遊漁船が客を乗せてマチ釣りをしているという話もある。八重山の漁師が操業していても、かなり接近してくることがあり危険を感じる。ただし、大きなトラブルが起こ ったという話は聞かない。 台湾漁船とのトラブルは、尖閣諸島周辺でなく、それより南にある東シナ海でのマグロ延縄船の被害や、西表島や与那国島周辺海域での曽根の使用について聞くことが多い。尖閣諸島周辺には、海上保安庁の巡視船が常駐していることが抑止力として働いていると考えられる。今後、台湾漁船が領海内で操業を強行するようになると、お互いの漁業形態が似ているため、これまでになかったトラブルが起きることも考えられる。 中国船については、今のところ北側での底引き漁に留まっており、遠望した― 34 ―

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