東京都尖閣諸島現地調査 調査報告書
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1 尖閣諸島周辺海域における天候について 海人が尖閣諸島に行く場合、日帰り操業では行って帰ってくる程度で終わってしまう。これでは、採算が取れる取れないの話にすらならない。また、連泊の操業を計画しても、天候が悪化した場合、避難する港がないため石垣島に戻るしかない。 このため、尖閣諸島まで漁に出るには、周辺海域の天候が一定期間穏やかであることが第一条件である。また、尖閣諸島周辺海域を流れる黒潮は、夏のあいだ島近くに寄っているが、9月になると島から離れてしまう。 こうした条件を考慮した上で、石垣島から出る漁船の多くは9月から10月頃の天候が穏やかである日を見込んで出漁する。ただし、この時期は季節風である北風が吹き始めるため、天候が急変して風が強くなることもある。この場合、魚釣島の島影に避難して天候の回復を待つか、石垣港へ帰港するかを判断することになる。 2 尖閣諸島周辺海域における潮流について 上述の通り、夏は流れの速い黒潮が尖閣諸島周辺に寄っているため、海人が出漁するのは夏が終わってからになる。黒潮が離れた時期でも、周辺海域には潮の流れの速いところが多い。経験者の話によると、マチ類の底物一本釣りをしていたところ、仕掛けが潮に流されてしまい、サワラがかかることがある。また、漁船を停泊させる場所である飛瀬の間の海域や北小島と南小島の間の海域では5~6ノットの潮流があると感じている。 3 尖閣諸島周辺海域における漁獲量について 周辺海域で漁獲できる魚種は多種多様である。珊瑚礁内では、ブダイ類やベラ類が多く、他にミーバイ、ガーラ、トカキンなどが獲れる。水深150~300mの海域では、電灯潜りで大物を狙う漁船が出漁するとアカマチ、クルキンマチ、シチューマチ、アーラミーバイなどが獲れる。水深100m以浅ではアカマチ各種、マチ類(サイズが小さい)、シルイユ、カンパチなどが獲れる。尖閣諸島周辺の瀬では曳き縄でサワラやジュウガジラーが獲れ、他にタマン、クチナギ、ミミジャーなどが獲れる。沖縄返還以前は、追い込み漁でカジキ突きボウやシジャーが獲れていた。 これらは全て、秋から冬にかけての出漁である。漁獲量については、出漁時期、漁船の大きさ、乗員数、航海日数により変わってくるため一口では言えないが、出漁した海人が「周辺海域は間違いなく魚影が濃い」と口にしている。 現地調査に同行した八重山漁業協同組合の所感 ― 33 ―

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