○登山活動における事故防止について
平成15年3月31日
14教指企第691号
都立学校長
日頃より、安全な登山活動の実施について格段の御配慮をいただいているところですが、今後さらに事故防止の徹底を図るために、従来からの登山活動の遭難防止に関する通知等を見直し、下記のとおり取り扱うこととしました。つきましては、関係教員等に周知の上、万全の措置を講じられるよう、よろしくお願いします。
記
Ⅰ 山岳部等の登山活動における事故防止について
1 登山活動の計画について
(1) 計画や実施にあたっては、その教育的意義を達成するため、指導と管理の面から十分な配慮のもとに、「生命の安全」を他の全てに優先させる。
(2) 春山(3月~5月)、夏山(6月~8月)、秋山(9月~11月)登山のそれぞれの気候や登山コースの状況に基づき、生徒の経験・体力等に応じた無理のない登山計画を立案する。
なお、冬山(12月~2月)の登山は、事故防止の観点から行わない。
(3) 春山登山は、積雪や天候の急変などが予想されることから、特に安全な登山の基礎的な知識と技能の習得をねらいとして計画する。
2 山の選定と事前の調査・研究について
(1) 山の選定にあたっては、生徒の体力や技能及び経験等のほか、登山目的、登山期間、活動内容、引率教員等の条件を考慮し、近距離で安全な登山コースであることに配慮する。
(2) 引率教員が未経験の山については、実地踏査を行うことが望ましい。
(3) 春山の登山地は、引率教員がかつて積雪期に登山した山の中から選定する。
(4) 調査・研究については、実施計画作成前に、地元の山岳団体、山小屋、警察署、営林署等と連絡を十分に取り合い、登山地の気象やコースの状態及び積雪量等について最新の情報を集めて綿密に行う。
3 登山期間・コース・日程について
(1) 登山期間は、夏山が7泊以内、春山が5泊以内を厳守し、生徒の心身の発達、体力・技能の程度、経費等を考慮して決定する。
なお、往路の夜行列車利用は、事故防止の観点から避ける。
(2) 生徒の体力や技能の習得状況及び引率教員の経験等を考慮して、余裕のもてるコース・登山形態(縦走・放射状・往復)や日程を工夫する。
なお、事故発生や悪天候の場合を考慮して、緊急時における安全な下山コースや退避コースの確認を必ず行う。
(3) 集合・解散は、学校または学校近くの駅等とし、現地集合・現地解散は行わない。
(4) 幕営地には、少なくとも日没2時間前に到着するように計画する。
(5) 幕営地は、指定された場所の中から小屋付近等の避難しやすい安全な場所を選定する。指定されている場所以外での幕営は行わない。
(6) 春山登山は往復登山のみとし、縦走は原則として行わない。
4 現地での手続きについて
(1) 登山計画書は、行き先の警察署に必ず提出する。
(2) 登山者届(登山カード)は、登山口の所定の場所で記入し提出する。
(3) 下山の報告は、登山計画書を提出した警察署に、参加者や山の状況など簡潔にまとめて行い、事故防止にかかわる登山者としての責任と役割を果たす。
5 装備・山岳保険の加入について
(1) 共同や個人の装備は、その人数や個人の体力や技能に応じて数量等の適正化を図るとともに、非常食糧や救急用品等を、必ず装備する。
(2) 個人が携帯する装備の負荷重量は、体力と技能を配慮し、適切なものとする。
(3) 春山においては、積雪や天候の急変などが予想されることから、共同装備や個人装備、予備の食糧や燃料を十分なものとする。
(4) 山岳保険は、遭難した場合の捜索や救助費用などが多額になる場合が予想されるので、任意ではあるが加入について配慮する。
6 参加する生徒について
(1) 登山に参加する生徒に対しては、実施2ヶ月前以内に健康診断を行い、健康状態を適切に把握する。
(2) 登山の目的を踏まえて、登山に必要な体力や技能を備えているとともに、事前の健康状態等から適当と認める生徒を参加させる。
(3) 参加生徒の保護者に対しては、登山の概要等を説明し、参加の承諾を得る。
7 引率教員について
(1) 登山活動の引率・指導に当たっては、顧問教員とこれに準ずる教員(実習助手を含む)の2名以上で行う。
(2) 女子生徒が参加する場合は、引率教員に女性教員を加えて、個に応じた安全指導等に十分配慮する。
8 卒業生の参加について
(1) 卒業生が登山活動に参加する場合は、校長が承認した者を参加させる。
(2) 卒業生は、登山活動や事故防止の協力者としての役割を果たし、引率教員の指示に従う。
9 事故防止に関する指導上の留意点について
(1) 日常の校内での活動等においても、計画的に登山に必要な体力づくりや幕営技術の向上を図る。
(2) 事前指導においては、登山計画に基づき、コース・日程・装備・係分担や行動計画等について、危機管理の観点から具体的な対応の仕方について十分指導する。
(3) 登山中の指導においては、生徒の健康状態、天候やコースの状態を的確に把握し、生徒の安全確保と事故防止を第一として、状況に応じ適切な対応に留意する。
(4) 渓谷における行動は、河川の急激な増水が考えられるので十分注意する。
(5) ザイル等を使用する岩登りは禁止する。
(6) 残雪上の歩行は避ける。
ただし、夏山の残雪のあるコースでは、安全が確保できる場合にキックステップを行うか、アイゼン・ワカン等を使用して歩行する。グリセードは避ける。
(7) 雪上での幕営は行わない。
(8) 事後指導においては、登山活動や内容を評価し、次回の登山活動に向けての課題を明確にし、事故防止に向けて万全を期す。
Ⅱ 一般生徒の集団登山の事故防止について
一般生徒の登山については、「Ⅰ 山岳部等の登山活動における事故防止について」の内容を踏まえるとともに、以下の内容を留意して実施する。
1 指導組織の確立について
(1) 登山活動に参加する生徒について班を編成し、班ごとの引率教員を決める。また、引率責任者は、安全な集団登山が行われるよう全体を統率する。
(2) 引率教員の人数は、参加する生徒の人数や体力などに応じて適切に決定する。
(3) 現地案内人を依頼する場合は、引率教員との連携・協力を十分に図り、事故防止に万全を期す。
2 登山期間・コース・日程について
(1) 多人数での行動は、予想以上に時間がかかるので、日程には十分な時間的余裕をもつように計画する。
(2) 生徒の体力差を考慮し、体力の低い生徒に十分配慮して計画を立てる。
(3) 実施期間は3泊4日以内とする。
3 出発前の準備について
(1) 引率教員は、現地の状況・コース・日程・安全対策等について事前の打ち合わせを十分行うとともに、参加生徒にもその内容を周知する。
特に、防寒具、雨具、着替え、予備食糧等の装備、身体にあったザックや登山靴の準備などを適切に指導する。
(2) 天候の変化、傷病の発生等不測の事態を想定し、事前に退避コース、班の編制替え、引率教員の役割分担の変更等について共通理解を図るとともに、具体的な計画立案を行う。
特に次の点について対策を立てる。
・登山実施中に学校との連絡が円滑に取れるよう工夫する。
・現地の医療施設について調査し、緊急の場合の連絡方法や搬送方法について確認しておく。
Ⅲ その他
1 この通知は、「宿泊を伴う学校行事の届出」を省略するものではない。平成14年3月28日付13教指管第748号により、通知した届出については、従来どおりとする。
2 本通知の施行に伴い、昭和41年2月26日付41教体体発第56号「春山登山の遭難防止について」、昭和41年6月7日付41教体体発第196号「登山(山岳)部の夏山合宿訓練に伴う遭難防止と一般生徒の夏山集団登山の事故防止について」は廃止する。