12 単元の最初に授業の流れを提示「冒険の物語を書こう」◆人物のしょうかいお話のはじまり・地図はどこで?・季節は ■1 児童の実態 ● 日常会話に支障はないが、学習言語能力が十分育っていない。 ● 教科学習面では成功体験があまりなく、周囲からは「意欲が ない」といった見方をされがちである。 ■2 日本語指導の目標(「個別の指導計画」日本語指導の目標) ❶ 日常生活で、身近な大人や友達と日本語で円滑にコミュニケーション を取ることができ、学校の行事等の活動、友達との遊びの場等に主体 的に参加することができる。 ❷ 教科内容の理解や文章での表現が難しい場合や間違った場合にも、学 習してきた日本語の力を駆使して伝えようとし、周囲に支援を求めた り自分で調べたりしながら、学習に参加することができる。 ★本単元は②に基づき、「内容と日本語の統合学習」の授業の一環として実施 ❸ 出来事や経験したことに関する気持ちや考えを日本語で友達と話し合 い、その違い(文化的背景の違いを含む)を受け止めながら働きかけ 続けることができる。 ■3 指導形態 小学校の児童は、想像力が豊かで、大人では思いもよらない発想で物語を 考えることができる。物語作りという書くことの楽しさが感じられる活動に取 り組ませることで、今まで書いたことのない長文にも挑戦できる。 日本語指導の対象となっている児童は、書くことの経験が少ないために、手 だてなしでは内容が乏しく、ストーリー性がない盛り上がりに欠ける物語にな りがちである。そこで、対話をしながら想像したことを言葉にし、場面メモに書 いていくなど、対話を通して想像を膨らませる段階を設けることが重要である。 このモデル授業では、段階を踏んで、子どもの「イメージ」をやりとりで表現さ せ、メモとして文に書き、メモを物語の文章として組み立てるようにした。児童 は場面メモから物語文に書き直す活動に、夢中になって参加していた。 ■1 単元名JSL国語科「たからじまのぼうけん〜気もちや ようすを あらわすこと ばを つかって」 ■2 単元目標 【教科(国語科)】 ● 構成を考え、表し方を工夫して、詳しい様子が分かる物語を書くことが できる。 【日本語】 ● 人物像や様子を表す言葉を知り、自分が想像した物語を表現すること ができる。 ● 物語を書くことに必要な情報を場面メモにまとめ、物語の構成を考え、 接続詞を使って、言葉や文をつなぎ、文章を書くことができる。 ■3 展開[ 1 ] 対象児童について[ 2 ] 本単元について[ 3 ] 日本語指導案83具体的な様子語 彙主な学習活動表 現指導・支援の工夫 週2回 合計4時間、自校 複数指導・3学年までの国語の教科書に出てくる「人物を表す言葉 (ゆうかんな・そそっかしい・がまん強いなど)」・3学年までの国語の教科書に出てくる「気持ちを表す言 葉(目を丸くする・はらはらする・おちこむなど)」・3学年までの国語の教科書に出てくる様子を表す 言葉(おそろしい・すばやい・きゅうくつななど)・「すると・そして・しかし・けれど も・ですから・また・それから」 (接続詞)・「そのときです・ようやく・つい に」(物語を盛り上げる表現)1 地図の中のどの道を通って、どんな冒険をしたいか、挿絵の道を□りながら、思いついたことを話す。 T : 島に着いたら、どの道を通って 宝のところへ行きたいですか。 S : 大きなへびと白いクマのいる 道を通りたいです。 T : とても危険そうですね。どんな ことが起こりますか。 S : 大きなへびが追いかけてくるけど、 へびの背中に乗って走り回って…。 T : どきどきするお話になりそうで すね。へびの上に乗ったまま、 白熊のところまで行ったりして …。大冒険ですね。2 人物を表す言葉を学習し、冒険をする主人公の人物像について具体的なメモを作る。 T : 主人公はどんな子どもですか。 S : こわがりだけど、我慢強い子です。3 冒険のきっかけについての設定を簡単なメモにして書く。 T : いつ、どこで、この地図を見付 けましたか。 S : 学校から帰るときに、鳥がくわ えて持ってきました。 T : それはすごい。わくわくする始 まり方ですね。● 使用教科書例 国語「たから島のぼうけん(光村図書3年下)」● 積極的に話せるように児童の話を楽しんで聞きながら、冒険の山場ができるような事件を提案したり、質問したりしながら、話が広がるようにする。● 対話を通して、話の全体の見通しをもつことで、組み立てや順序をイメージできるようにする。● 教科書の巻末にある「人物を表す言葉」の中から気になる言葉の意味を確認させ、物語の主人公として使ってみたい言葉を選ばせる。● 人物像や冒険のきっかけを具体化することによって、物語の中での気持ちの変化や成長について詳しく書くことができるようにする。小学生【前半】タイプ C 1/2タイプ別に見る日本語指導モデル ❾
元のページ ../index.html#84